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第七話 それぞれの時間

暗く深い闇の中。

ここは全てのものが共有する世界。普遍的無意識の世界。


全なる一のこの世界で、自我を保つのは難しい。

その世界で、竜は夢を見ていた。


夢の中で、竜は無限に広がるかのような空にいた。自慢の翼で、雲を風を追い抜いていく。

まるで、大空全てが自分のものであるかのように。


・・・・・次の瞬間、竜は大地にひれ伏していた。強力な呪文に縛られ完全に自由を失っていた。

目の前には一人の男が立っていた。男は満面の笑みで何かを語りかけている。

だが呪文による強制力の痛みでまったく聞こえない。



・・・・そこで夢は途切れた。

ゆっくり目を開けながら、竜はつぶやいた。


『お前か。どうりで嫌な夢を見るはずだ。』


目の前には、フード姿の男が立っていた。目深に被ったフードの中には白銀に輝く髪、その奥には紅い瞳が光っていた。


『そう言うな、友よ。・・・まさかとは思ったが、また起動していたとはな。』


『意外だったか?』


『まぁな、この間の起動が最後だと思っていた。今更、無理に起動しても答えが見つかるまでに機能停止するんじゃないのか?』


『フッ、遂に答えまでたどり着けなかったお前よりは可能性があるさ。』


『・・・そうか、まぁ早めに頼む。俺も時間が無いのでな。』



そういい残すと、男は消えた。


『頃合を見て、話さなければならぬな・・・。』


竜は呟き、また目を閉じた。




(たかし)はふと自分を呼ぶ声に気付き、声のする方向を見る。


「諏訪さん。」


「さん付けはやめてよ。タメなんだから。」


天は笑いながら京子を見つめた。

京子は天の雰囲気がいつもと違うのをなんとなく気が付き、大きく瞬きをした。


「どうかしました?」


「いや、なんでもないよ。」


なんとなく心を読まれたようで、照れながら答えた。


「さぁ、行こうか。」


楽しい時間が流れていく。今までこんな気持ちで誰かと食事をしたことなど、きっと無かっただろう。

死を前にして、何故こんなに穏やかでいられるのか自分でも不思議だった。


いろんな事を話した。お互いの子供の頃の思い出や最近あった面白い出来事、・・・何故もっと早くこんなふうに話すことが出来なかったのか。


早足で過ぎていく楽しい時間。食事を終え、駐車場まで二人で歩く。

ここでも談笑しながら楽しい時間が続いていた。

天は歩みを止め、彼女の前に立ち塞がる。京子は訳がわからずきょとんとしている。


すると、天は彼女をいきなり抱きしめた。


「今日は本当に楽しかった。ありがとう。」


天は言葉を続ける。


「やっぱり君が好きだ。京子ちゃんに逢えてよかったよ。」


そう言って彼女を解放する。

京子は状況が飲み込めず、大きく瞬きしたり視線をそむけたりしている。


「ごめん、気をつけて帰ってね。おやすみ!」


そう言うと、彼女が車に乗るように促し駐車場を出るのを手を振って見送った。



見えなくなるまで見送って、自分も車に乗ってアパートへ向かう。

運転しながら考えていた、自分が残された時間で何をすべきか。


アパートに着き、空を見上げると綺麗な月が出ていた。


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