第一話 志半ばの死
ここまで走り抜けばゴールだ。
そう自分に言い聞かせ、仕事に取り組む。
「この現場なんですが・・・」
俺に拒否権はない。だが、当然ながらミスも許されない。
納期が間に合うはずもなく、客のクレームにも変に慣れていた。
悪循環だ。このままではいけない。
ただ、一つ一つの仕事を着実にこなしてから次にいきたいだけなんだ。
「今はとりあえず、やり抜こう。」
憂い無く休む為に、一段落つくまでは暫く働き続けよう。
それまでは、休みは返上だ!
俺は無心に仕事に臨んだ。
・・・三週間が経ち、たしかに仕事は進んだ。
だが、思っていたほどは進んでいない。
ここがゴールだと思ったところまで走り抜いたその時に、実はゴールがその先にあったと知った時の気持ちはきっとこんな感じなんだろう。
「一服でもするか・・・」
タバコに火をつけ、煙を空に向けて吐き出す。
心が折れそうだ。許されるなら膝から崩れ落ちて、好きなだけ眠りにつきたい。
そんなことが許されないことはわかっているが。
「・・・さてと、やるか」
意を決し、立ち上がる・・・すると違和感が!?
世界が歪む・・・
立ち上がれない、後頭部がふわふわする。
頭痛もしてきた・・・吐き気もする。
脂汗が出てくる。音が遠くなっていく・・・
耳鳴りが始まり、景色がセピア色に・・・日の光が世界を覆った瞬間、記憶が途切れた。