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第十三話 十三番目の適格者

適格者としての力を体現したような半竜半人の姿をした敵を前に、男は全く負ける気がしなかった。


400年の時間で培われた知識と経験、同じ適格者としての資質、竜に選ばれているという点以外は全て自分が上回っている自信がある。


その攻撃を捌きながら、目の前にいる適格者の記憶を覗く。



その記憶は、平和な世界のものだった。

親の都合で各地を転々とした、その土地に馴染んだころに次の土地に移り住む。

自分には故郷も幼馴染もいない。

内向的な性格も加わり、まわりとあまり馴染めない人生を歩む。


空を見上げながら、物思いにふける事が多かった。

気がつけば、何もない人生。


感情を表に出すこともあまり無く、自分の考えを押し通すこともほとんどない。

答えの出ない自問自答を繰り返す毎日。


終わらない仕事に追われ、変わりたいと思いながらもがいているうちに死を迎える。


竜に話しかけられたところで、映像がぶれる。



『ぬるい人生だな。』

男はあざ笑いながら言い放つ。


「あんたに比べればな。」

(たかし)は迷い無く抜き手を繰り出す。

男は抜き手をなんなく捌いて、尚も続ける。


『負けるはずもない。お前と我とでは全てが違いすぎる。』

存在する分身と共に流れるような連撃を繰り出す。


神経を研ぎ澄ましても、受けきれない。このままでは負けると感じた天は防御を解いた。

右腕に気を練る。分身を含め三体同時に左腕でなぎ払う。

二体の分身は消え、本体に浅い一撃を浴びせる。


『それでは駄目だ。何度やってもな。』

男は余裕をみせながら言った。

だが次の瞬間、その顔は苦痛に歪んだ。

天が放った右腕の一撃が、初めて男を捕らえた。すかさず、左腕で体をつかむ。


力を込めて、右手で突く。

『ぐぅっ。』

男がたまらずうなる。さらにもう一撃。


『このっ!』

男の突きが天の眉間を打つ。

天は突きを額で受けながら、双掌破を放つ。


男は吹き飛ぶ。


天は深く踏み込み、さらに追い討ちを狙う。

「アンジェ、一瞬でいい。同調(シンクロ)率をさらに上げるぞ!」

『バカな、それ以上は力に翻弄されるぞ。』

「拳を打ち下ろす瞬間だけだ。」

『・・・どうなっても知らぬぞ。』

「ここでは終われない、くらぇっ!」

天の体から炎のような力場が渦巻く。男のガードごと、打ち下ろした拳は男を床にひれ伏させる。

全身に激痛が走り、精神が引き裂かれるような感覚を味わいながら放った迷いなき一撃、それは勝負を決するにふさわしい一撃だった。



男は状況を飲み込めずにいた。自らの身に何がおきて、今自分が床に伏せているのか。


『ごふっ、同調(シンクロ)率75%だと?』

男は立ち上がろうとするが、予想外のダメージに身動きがとれない。


「あんたは通過点だ。俺には時間が無いんでね。・・・」

それだけ言うと、天は膝から崩れ落ちた。


『どうやら、俺の負けだな。』

男は大の字に寝転びながら、清々しそうに言った。



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