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第十一話 同調率50%の世界

男は両手を広げる。すると男のまわりに気流のようなものが流れた。

少年漫画でよくあるオーラや闘気と呼ばれるそれそのもののようだ。

男は真っ直ぐこちらを見据える。

『さぁ、いくぞ後輩。手ほどきしながら、俺の昔話でも聞かせてやろう!』


まずい!そう感じた。・・・男が地を蹴るその瞬間、姿が消えた。

音を取り残して、(たかし)に向かって一足飛びに近づいてくる。

間一髪、感覚増幅(クロックアップ)が間に合い、男が放つ拳を視界に捕らえてかわす。


『へぇ、やるな♪』

男は楽しそうだ。

「名前くらい教えてくれよ。先輩。」

天は虚勢をはりつつ、切り返す。

『名は捨てた。400年前、適格者となったその時にな。』

男は笑いながら答える。だが、どこか不機嫌そうだ。

「・・・もしかして、生きてて嫌な思い出でもあったか?」

天は冗談半分で鎌をかけた。

『だまれ!』

どうやら図星をついたらしく、男は声を荒げる。

「気に障ったか、すまないね。」

天はさらに動揺を誘うため、挑発した。

『見せてやる。最も真理に近づいた適格者の実力を。』

構えを取る男。するとその手の動きは緩やかにも関わらず、像が重なって見える。

「まるっきり漫画かよ。」

天はぼやく。

『力の差を体に教えてやる!』

踏み込んだかと思うと、強烈な肘を水月に打ち込まれた。

「かはっ」

天は思わず息を詰まらせる。しかし攻撃の手はゆるまない。

ほぼ同時のタイミングで右後方から延髄に蹴りが入る。

男はまだ、目の前にいる。だが、今たしかに後ろから蹴られた。気配も感じる。

すると今度は左後方から脇腹に膝が入った。やはり、目の前に男はいるのだ。

三人から流れるようなコンビネーションで突きや蹴りをくらい、手も足も出ない。

「このっ!!!」

天は意識を集中し、一気に同調(シンクロ)率を上げた。

自分の体からも闘気がみなぎるのを感じる。それを一気に開放し、まわりに衝撃波を放つ。

『くぅっ!』

まともに衝撃波をくらい、吹き飛ばされると三人いた男のうち二人の像がぶれて消えた。

「そんなに早くは幕を下ろさせないぜ。」

天は慣れない力に翻弄されつつ、虚勢を張る。顔には出さないが精神の侵食を受けているのをリアルに感じていた。

『調子に乗るなよ。まだ、我がドッペルゲンガーが破られたわけではない。』

平静を取り戻し、再び分身する。

このままでは勝ち目は無い。打開策が必要だ。


「アンジェ、俺にもっと力をくれ。同調率を上げるぞ!」

天は竜に力を求めた。だが、竜は消極的だ。

『今以上の苦痛と侵食を味わうのだぞ、それでもよいのか?』

竜は今一度、その覚悟を確認する。

「ここで負ければ、元も子もない。選択肢はないんだよ。」

天に迷いはない。竜もそれを理解した。

『ならば、一気に短期決戦でいくぞ!50%まで上げる!!!』

竜がそういうと、体中に力が溢れた。体を突き破って、飛び出しそうだ。

「ぐぅっ・・・。」

髪が伸び、銀髪になっている。


『ほぅ、同じ同調率にしたか。』

男はまだ余裕の笑みを浮かべつつ、近づいてくる。


竜は念話で話しかける。

『完全な適格者ででなくなった奴は50%までの同調率にはできても、我の承認無しには竜の力の開放はできぬ。』

「竜の力の開放?」

『そうだ、体現せよ。我が一族の力を。それこそが適格者の証だ。』

すると、荒れ狂っていた力が安定する。

瞳が紅く染まり、白銀の髪がなびく。体は体毛と鱗に覆われ、手や足は鋭い爪が生えている。

まさに竜の力を体現するような姿。


今なら見える。男の分身の正体が。

分身も質量を持っている。原理はともかく、幻覚ではない以上三人全てを相手にするしかない。

しかし、問題ではない。今なら、その動き全てが見える。

一歩で男の目の前に踏み込んだ。

天は男の目を見る。だが、驚くどころか何やら嬉しそうな眼をしている。

それが何を意味するのかわからなかったが、迷わず右手で分身ごと、男をなぎ払う。

たしかな手応え、男は吹き飛ばされる。



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