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貧乏国のお姫様は、帰りの旅費も大変です

貧乏姫様の帝都からの帰りの旅費にも困っているのです。

 俗に言う所の剣と魔法の世界。

 その世界では、トーラという帝国がその大陸の覇権を狙って、侵略戦争を繰り返し、世界を騒乱の海に陥れていて。

 しかしそんな騒乱と無縁だが、とても貧乏な国、ターツのお姫様、リュヒ=ターツ。

 彼女は、帝国との休戦協定の更新を終え、国に帰る事になるのでした。



「えーとこのキャラバンだったら、近くまで行くかな?」

 格安で宿を取って居る冒険者ギルドの酒場で地図を見ながらのリュヒの問い掛けにミーが手を横に振る。

「駄目駄目、そのキャラバンは、遠回り過ぎる。畑の刈り入れまでに帰れなくなるぞ」

「それは、不味いです」

 リュヒの言葉にヒツが不思議そうな顔をする。

「ちょっと気になったんだけど、どうしてお姫様が刈り入れと何の関係あるんだい?」

 ミーが面倒そうにリュヒの指差す。

「ここの王族は、一家総出で他人の刈り入れの手伝いをするんだよ」

「はい?」

 その場に居た殆どの者が疑問符を浮かべた。

「だから、こいつ等は、国民の畑仕事を手伝うって事だよ」

 ミーに補足に長い沈黙の後、ヒツが戸惑いながら言う。

「それって王族のする事じゃないだろう?」

「でも、いつもいつも色々とお世話になっている人達へ、少しでも御返ししないといけませんから」

 リュヒの素朴な言葉にその場に居た心黒き人達が、悶え苦しむ。

「因みに、ターツって税金が無いぞ」

 さっきより長い沈黙の後、ヒツが訊ねる。

「何の冗談?」

「本当に無いんだ。王族の連中は、自分達の食事は、自分達で育ててるし、その他、必要な物は、土産物の内職で稼いでる」

 ミーの言葉に全員の視線がリュヒに集まる。

「えーとお姫様なんですよね?」

 ヒツの質問にリュヒが笑顔で答える。

「はい。ターツの王女です」

「ついでに言えば、一体でも帝国と戦えるレジェンドドラゴン、七体に親愛を受けている。間違ってでも傷でもつけようものなら、その相手が帝国だったとしても壊滅がま逃れないだろうな」

 ミーの脅しに完全にひく一堂。

「それでどうして、そこまで低姿勢なのかが本当に解りませんわ」

 その声の主は、酒場の入り口に居た。

「これは、これはお偉い、帝国貴族、トーリ伯爵令嬢様、この様な場末の酒場に何の御用ですか?」

 慇懃無礼なミーの態度に頬を引きつらせながらもトーリ伯爵令嬢が微笑む。

「貴女と話すつもりは、ありません。リュヒ王女、休戦協定も無事締結し、御国に戻られると聞きました。それならば私も同行させて頂きたく参りました」

 礼節をもって対応するトーリ伯爵令嬢にリュヒも礼をしてから続ける。

「トーリ伯爵令嬢様、しかしながら我が国は、貴女様が興味を引かれる様な物は、何もございませんが」

「物が無くても者が居ます。イーヌ将軍より優れた武人が居ると聞いては、それを確認せずには、要られないのです」

 トーリ伯爵令嬢の言葉にミーが納得する。

「なるほどね、手駒の強化を図りたいって訳か。しかし、ターツ王国の奴は、金じゃ動かないぞ」

「それをどうにかするのが私の仕事です」

 トーリ伯爵令嬢が自信満々に答える中、リュヒが困った顔をする。

「トーリ伯爵令嬢様のお考えは、解りました。しかし、まだ帰る算段が決まっていないのです」

「帰る算段とは? 馬車をお使いにならないのですか?」

 不思議そうな顔をするトーリ伯爵令嬢にリュヒが恥かしそうに言う。

「えーと我が国は、本当に貧乏で、その馬車は、観光客用の物しかなく。当然、今回は、使用していません」

 困惑するトーリ伯爵令嬢。

「もしかしてレジェンドドラゴンに乗っていらしたのですか?」

「そんなカーイさん達をそんな馬代わりにしません」

 リュヒの答えに安堵の息を吐くトーリ伯爵令嬢。

「そうでしょう。それでは、なおの事、どうやって帝都までいらっしゃったのですか?」

「途中まで徒歩。その後、帝都に向うキャラバンに雑用係やることで同行させてもらった。帰りも同様な事を考えていたんだが、なかなか条件にあったキャラバンが見付からないんだよ」

 もう慇懃無礼な態度にも飽きたミーの答えにトーリ伯爵令嬢が呆れた顔をする。

「一国の王女がキャラバンの雑用ですって! 何を考えているんですか!」

「ですから、旅費が無いんです!」

 涙目で訴えるリュヒに沈痛な表情を浮かべるトーリ伯爵令嬢。

 そんな時、ミーが胸が光る。

「なんの連絡だ?」

 胸元からクリスタルを取り出すミー。

『ミーさん、そっちでイーヌに会ったそうですね? イーヌの母親が崖から落ちて重傷を負ったそうです。その事をイーヌに伝え、一刻早く帰って来る様に言ってください』

「イーヌの母親が? ああ、そういう事か。了解、伝えておくよ」

 何処か気楽なミーと違い、リュヒが慌てる。

「ミー、落ち着いてないで、早くイーヌさんに伝えないと」

「伝えたって、出発の準備をするだけでも大変だぞ」

 ミーの指摘にリュヒが告げる。

「緊急事態です。カーシさんの力を借ります」

 ミーが顔を歪ませる。

「おい、そこまでする事か?」

「一刻を争うと言うなら、カーシさんも力を貸して下さいます」

 リュヒの言葉に頬を掻きながらミーが言う。

「リュヒがそういうなら、了解。イーヌを連れてくるから、カーシの方は、頼んだぞ」

「はい」

 そういってリュヒは、外に出ると開けた場所に向かう。

「さっきのクリスタルは、何なのですか?」

 トーリ伯爵令嬢の言葉に、リュヒが答える。

「あれは、ミーウさんが作った遠くの人と話すマジックアイテムです」

「そんなとんでもないマジックアイテムを作れる人間がいるのですか?」

 驚くトーリ伯爵令嬢に対してリュヒが首を横に振る。

「ミーウさんは、水のレジェンドドラゴンです。クリスタルを使った色々なアイテムを作ってくれるのです」

 トーリ伯爵令嬢が顔を引きつらせる。

「えーとターツ王城には、そういったものが幾つもあるのですか?」

「はい。誕生日プレゼントに、そういったマジックアイテムをくれるのです」

 リュヒの言葉に興味本位からついてきた冒険者の一人が呟く。

「レジェンドドラゴンが作ったマジックアイテムなんて捨て値で売ったとしても一生遊んで暮らせるぜ」

「馬鹿、そんなレベルじゃねえ、物によっては、町だって買える」

 そんな呟きに気付かずリュヒが天に訴える。

「風よ風よ、その化身である風のレジャンドドラゴンに我、リュヒ=ターツの声を呼び声を届けたまえ」

 次の瞬間、突風が吹き荒れ、上空を覆う様な大きな翼をもった緑の竜、風のレジャンドドラゴン、カーシが現れた。

『リュヒ王女を我に何の用事があるのだ?』

 頭を下げるリュヒ。

「遠くまで申し訳ございません。ただ、緊急事態なのです。こちらに出稼ぎに来ているイーヌの母親が事故で重傷を負ったらしいのです。ですので、イーヌをターツ王国までお連れ下さい」

『リュヒ王女の願いなら、どんな願いでも叶えよう』

 あっさりと了承したカーシは、ミーに呼び出されたイーヌを連れてターツに帰っていった。

 その様子を見ていたもの達の殆どが腰を抜かしていた。

「本当に、レジェンドドラゴンと親愛を結んで居たのですね」

 トーリ伯爵令嬢が畏敬の念を持ってリュヒを見るのであった。



 翌日、イーヌがリュヒ達を泊まる酒場に来て、土下座していた。

「うちの馬鹿親が本当に申し訳ないことをしました」

「まあ、あたしは、ある程度は、予想出来てたけど」

 ミーは、他人事の様に言う。

「どうして狂言だと解ったんですか?」

 昨日に引き続き、リュヒの帰郷に同行するつもりで話に来たトーリ伯爵令嬢の問いにミーが言う。

「イーヌの母親は、あたしが育てた中でも屈指の遣い手でな。巨人族とタイマンはれるんだ。そんな奴が崖から落ちたからって重傷を負うと思うか?」

 頭を抱えて苦悩するイーヌ。

「俺が馬鹿だった!」

「えーと、イーヌさんのおばさんも悪気があったわけじゃないんだから。かすり傷で良かったじゃない」

「その戯言でレジャンドドラゴンを使ってもですか?」

 トーリ伯爵令嬢の言葉に苦笑するリュヒ。

「それは、あちきが謝って許してもらう事にします」

「本当に申し訳ございませんでした!」

 イーヌが何度も頭を地面につける。

「申し訳ないと思うんだったら、国に一度帰る事ね」

 ミーがそういってから手を叩く。

「そうよ、あんた直ぐにでも国に帰る段取りつけなさい」

「師匠、いきなり何を言うんですか? これでも俺は、色々と忙しいんですが」

 イーヌのクレームにミーが告げる。

「だからって行きは、ともかく帰りまでカーシを使って良いと思っているの」

「そ、それは……」

 言葉に詰るイーヌにミーが告げる。

「だから、あんたも将軍、帰郷には、単独って訳には、いかないでしょ? 当然雑用係が必要。それを同じ国に向う人間を使えば良くない?」

「もしそうなったら、格安でターツに帰れる!」

 目を輝かせるリュヒ。

「しかし、さっきも言ったとおり……」

 必死に逃れようとするイーヌにリュヒが上目遣いで問い掛ける。

「あちき、頑張って仕事しますから、使ってください!」

 イーヌが大きなため息を吐きながら頷くのであった。

「良かったわね。上手く行けばお給料まで貰えちゃうかもよ」

 ミーの言葉に本当に嬉しそうにリュヒが言う。

「そうすれば、冬にシチューの具が一品増えるかも」

「何か根本的な所で間違っている」

 トーリ伯爵令嬢の呟きは、正鵠を射ていたが、この場では、あまり意味を成さないのであった。

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