序章
空には星が輝いている。
ほとんどの人間がこの夜空を前にしたら、きっと夜空に見いることだろう。
しかしそこにはまだ、幼さを残す少年の声が淫靡に響き渡っていた。
「あっ、ダメだって…俺は男なんだって!!」
少年は頑なに否定する。
しかし少年の本心は違おうと体は性的快感に素直に反応する。
その声を愉しそうに聞いている複数の女性もそうだがそれ以上にその少年を弄り続けている男も異質である。
男の手元には見馴れない複数の器具があった。
医学的にいうクスコと呼ばれる検査用の器具。
とても人に入るサイズには見えないディルド。
いくつものボールが連ねられた尻尾のようなもの。
まともに生きていれば目にすることのないようなものがまだまだ置かれている。
男はゴム手袋をはめ周りの女性たちに問いかけた。
「さぁ、皆様今夜はお集まり頂きありがとうございます。」
男の言葉は優しげだがとても薄く感じられる。
「初めはこの少年の紹介から始めさせて頂きましょう。」
男は床で小さくなっている少年に声をかける。
「トミー、早くこっちに来なさい。」
敷かしトミーと呼ばれた少年は男の言葉に反応しない。
男は少年を一瞥つすると女性たちの方に向き直り、再び語りかける。
「お客様、大変申し訳ありません。今すぐに用意致しますのでもうしばらくお待ちください。」
男は少年を殴る。
殴ると周りの女性たちから歓声が上がる。
男は歓声を聞くと嬉しそうに女性たちの方に向きかえり1つの問いを投げ掛けた。
「皆様、普段ならこのようなことは致しませんが、皆様は常連様ですので特別ですよ。」男はどこからかトランプを出し自らシャッフルしている。
5回ほどカードをきると女性たちへカード差し出す。
「皆様の中で一番強いカードを引いた方に今宵の舞台の内容を決めて頂きましょう。」
女性たちの頬は皆同様に恍惚としている。
そして、一人また一人とカードを引いて行く。
引いたカードを嬉しそうに眺める女性もいれば、忌々しそうにカードを握り潰している女性もいる。
しかし、ただ一人困惑した表情の女性がいる。
男は辺りを見回すと宣言した。
「それでは、今回の勝者はあなただ。」
男は一人の人物に視線を向けた。
「え?」
「なんで?」
「いつからいたの?」
あちこちからざわめきが起きた。
しかしそれはなにもおかしくはないだろう。
男はまだ、誰のカードも確認してはいない。
そして、勝者として扱われている人物はいつからいたのか。
女性たちは驚き、戸惑っている。
しかし男はそんなこと気にせずに続ける。
「さぁ、勝者のあなたに舞台の内容を決めて頂きましょう。」
勝者に選ばれた人物は口を開く。
「まずは…」
透き通るようなテノールの声。
それだけでその場を沈めるには十分だった。