彼女
はっきり言ってこの小説のジャンルが文学でいいのか、そもそもこれが小説と言えるのか自分でも分かってませんが、最後までよろしくお願いします。
彼女は僕だった。
それは別に比喩でも、妄想でもない。真実だった。
彼女のその女性としての体に魅力を感じても、人として好きになることは――いや、好きとか嫌いではなく、本当にただどうでもよかった。僕にとって彼女は大切な存在ではなかった? でもよく考えると、どうでもいいとは違う感覚なのだと、自分で思ってみて、その答えを表現してみてそれが違うと、そう感じている自分がいた。
僕らは別に、もちろん双子だとか兄妹だとか、ましては親子だとか言う肉親ではない。でも他人でもない。
彼女は僕であって、彼女は僕とは全く関係のない一人の人間なのだ。
何度体を重ね合っても、彼女に愛を感じることはなかった。でも、愛以外の何か大きなつながりのようなものは感じていた。
「彼女は僕なのだ。」そう表現するのが一番しっくりとする感覚。
別に彼女の頭の中が読めている訳でも、――いや、むしろそんなこと考えようともしていないのに、彼女のことがわかるのだ。何を考えているか、何をしようとしているのか。
僕は彼女とあまり口をきいたことが無い。彼女もまた僕と話そうとは思わない。彼女も僕のことがわかっているから、何も話さなくても何を感じているのかわかるということもあるし、それ以外の理由だってある。
互いに互いが気持ち悪いのだ。
すべてがわかるということはすべてがお見通しということでもあって、だからそのように感じているのかもしれない。いくら隠そうとしたってそれは無駄なこと。彼女が僕で僕が彼女ということは、それは別に彼女を読んでいるとか、見透かしているとか、そう言うことではなくて、自分が彼女なのだから自分の思ったことがそのまま相手の思ったことなのである。
彼女は僕だ。それは彼女と会った瞬間、出会った瞬間に、互いに気がついたこと――そんなものではなくて、気がついたとか理解したとかそんな生易しい言葉では表現できない、おぞましいぐらいの納得、結論、揺るがしようの無い現実。そんな感覚がそのときの互いにあったことは、もうどうしようもなかった。
それから僕らは一緒に暮らし始めた。
世の中はそれを同性と言って僕らは恋人同士なのだろうが、実際はそうじゃなかった。そんな浮かれた気持ちなど無く、愛などもなく、互いに気持ち悪くてたまらない存在だったが、一緒に暮らすことはむしろそれが当然で、互いに離れて暮らす方こそ、不自然な気さえした。
互いに軽蔑にも似た目で互いを見ながらも、朝一緒に起きて、一緒に生活をして、同じベッドに横になり、何もかも忘れて体をかわしては虚しさすら感じていた。
彼女は僕なのだ。僕がもし自分が好きなナルシストのような人間だったら、僕は彼女のことが好きになっていたのだろうか? 異常ともいえる彼女と僕との関係が、もっとまっとうな男女の関係になっていたのだろうか?
でも僕は、そして彼女は互いに離れる気なんて無い。自分を真っ二つに引き千切ろうなんて人がいないように。
彼女は、自分を客観的に見れてしまう鏡よりも正確な写し絵。
自分の隠しておきたいような部分が、僕が一番彼女を軽蔑しているところ。でも、彼女のいいところを見つけたとき、僕は自分に対して自信を持つこともできる。
ただ一つ疑問を持つことがある。いったい彼女は何なのだろう。そもそも本当に実在しているのだろうか?
それは自分が何者であるかということでもあると気がついたとき、そんな考えはやめて、僕はこのまま生きていこうと思った。
彼女は僕なのだから。
スランプというものにかかったのか数年前から文章がうまく書けなくなり、それなりに作品と呼べるものを作ったのはこれが2年以上ぶりになります。どうでしたでしょうか?