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夢ではない証拠です。

 




「異種族……」


「そうだ。 お前と我らでは種が異なる上に、このもの達も上位種であっても、まだ人化出来ぬ幼いもの達だからな。

 他とは違い蛇族のちいさきものは、同族か蛇族われらに連なる竜族などの、更に上位種のものとしか意思の疎通は叶わぬ」


 蛇族どころか獣人族でもない落人のお前と会話が成り立つ訳もないと、男は言った。


「……上位種?」


「ああ、上位種とはその種族の中でこのように、人の形をとれる者――人化出来る者のことを指す。

 その人化した者同士であれば、他種族であろうがお前と今の我のように、発声器官での会話が可能だということよ」


 娘の思わずと言うような呟きに、カヅチが答えると娘は頭痛をこらえるようにこめかみへ右手の指先を当てた。


「ジンカ、オチュウド、ジュウジンゾク……獣人族? 何より“今の”我?でも……」


 考え込むように目線を落とした娘の独り言のような呟きにカヅチが口を開きかけたが、それより先に娘が顔を上げた。


「しつこくお聞きして申し訳ありませんが、この周りに居る子たちは……貴方と会話が出来、なお且つ喋っている、という訳ですのね?

 ドッキリ、ではない、と」


 娘の、その一語一語噛み締めるように繰り返された問いに、会話を直接している訳ではないがと注釈をつけつつも是と答えれば、それを聞いた娘はまぶたを伏せるように目線を落とし、自分の左手首を右の手の平で労るように擦った。


「……痛かったので“この現時点でのこの現状は”夢ではない、と分かっていたのですが」


 娘がすりすりと擦っている手の平の下には、いつの間についたのかまるで細い鞭か棒ででも打ち付けられたような二本の赤い痕があった。

 自分が娘を運んだ時には無かった筈の左手首のそれを見咎めたカヅチが、その痕はどうした、と娘に問えば、


『おててびしーっ』


『ひーさまびしーっ』


『ゆびびびしーっ』


『いたたいっ』


 それまで静かにしていた周りのちいさきもの達が、やはり意味の良く分からない言葉で騒ぎ出した。

 何度目か分からないそれへ、とうとう口を開かず溜息と目線で黙らせたカヅチが再度娘に問えば、ここで目が覚めた時に夢かと思って自分で確かめてみましたの、とこちらからもやはり良く分からない応えが返る。


「これは特に問題ございませんわ。それよりも……」


「なんだ」


「もしかして、もしかしてと思っておりましたが、貴方のその声や話し方が、私を助けて下さった方にとても良く似てらっしゃる気がするのですけれど、」


「我だ」


 最後まで聞かずとも分かった問いに、カヅチが言葉尻へ被せるように答えれば、更に問いかけがある。


「……姿が違う、のは」


「人化しておるからな」


「……私を助けて下さった方は、全長五メートルを越して胴の直径は三十センチ程ある方でした。

 その方の外見上の種として、“本来ならばあり得ない”大きさで、私の住む地域では“神の遣い”と称される外見でしたからーーあの時、確かめる必要もなく夢を見ているのだと思っていたのですけれど」


 そこで娘は息を吸った。

 ひた、と覚悟を決めたようにカヅチを見据え、その小さな口を開いた。


「……では貴方のもうひとつの姿は、




 ――アオダイショウの白蛇ですか?」






 

 


気は長いが、口を開くと簡略すぎる説明しかしない男です。


にしても、アレって涙出そうなほど痛いことがありますよね…

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