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不思議なほど、

 





 坂道を登り切った先は、盆地のように平らな場所だった。

 そこには果樹らしい木が何本も生えていた。 香りの元はこの木に生る果実だったらしい。 野生の群生地なのか、乱雑に生え枝をしならせるほどたわわに実らせている。

 綾が近づいてみれば、小さいけれどもそれは確かに林檎だった。


「良い匂い」


 甘い香りを胸いっぱいまで吸い込む。

 そうする内に綾は、ふと喉の乾きを覚えた。 乾燥した空気と歩き通しだったためだろう。

 木を見上げればすぐ真上に食べてくれと言わんばかりに実が生っている。


「一つ、頂きます」


 綾は実をもいで上着の袖でごしごしと拭った。 そしてそのまま皮ごと齧ればしゃくりと小気味よい音を立てる。


「……やっぱり甘くありませんわね」


 綾の想像した通りに味は薄く、甘さも殆どなかった。 誰に管理されている訳でもないのか、一つの木に実が生りすぎているからだ。

 それでも十分喉を潤すことは出来るので、芯のみを残してありがたく完食する。 残った芯は少し土地の空いた場所に埋めた。

 人心地ついた綾が真上を見れば、目の前には太くて大きな枝振りの林檎の木がある。


「誰もいませんわ、ね」


 分かってはいたが、それでももう一度周囲を見渡して、人目がないのを確認する。 そうして手頃な高さにある枝を掴むと、幹を思いきり蹴り上げた。




「絶景ですわ」


 元の世界の果樹園と比較すれば、ここの林檎の木は随分と背が高い。

 最初はもっと根元に近い枝にするつもりだったが、綾はついつい自分を支えられるだろうギリギリの高さまで登ってきてしまっていた。

 ほぼ天辺の枝に片腕を巻き付けているから、枝に腰掛けても顔が枝葉から出るために、景色はよく見える。


 林檎園の盆地を覆う木々の隙間から、空と森の色合いを楽しむ。

 そうして落ち着いて景色を良く見れば、悪路の足元ばかりを見ていて気づかなかった、山を登りはじめた最初に感じた違和感の正体に、綾はようやく気づいた。


「……ああ、気づかなかったのが不思議なほどですわね」


 この山の濃く深く密集した木々の幹は元の世界で見慣れた太さではない。

 大の大人が何人も手を繋げてやっと一回りするような、樹齢千年と言われ崇められている神社の神木と同じほどの巨木ばかりだった。


 それと分かって眺めれば、これほど壮観なものもそうはない。

 綾は驚嘆と、それから微かに持っていた期待を打ち砕かれたことへの失望を混ぜ合わせた複雑な溜め息を吐いた後、くしゃりと顔を歪めた。


「日本に、このような場所はもう、ありませんもの……」


 まだ幼い時分に、綾は日本の巨木の特集を組んだドキュメンタリーを見たことがあった。

 日本各地で人の手や調査が入っていない土地は皆無に等しいそうで、これほど広大な巨木の群生地など、ここまで寒くなる地域では、もう遥か昔に消滅しているのだ。


 海外なら? 一瞬あがくようにそう考えてみた。

 しかし、それらは現実的でないことを知っていた。

 地球ではないと、確信を持って感じているのを、綾は自分で知っていた。



 ――けれども、今この瞬間まで、決定的な事実を目の当たりにはしていなかったのだ。





綾の心情。



景色はこんな場所があるなら見てみたいなあ。


そして一日一投で連投第二弾。

でも出掛ける予定なのでいつも自分が上げてそうな時間帯に予約投稿してみます。

無事投稿出来ると良いんですが…

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