黄州変事
百官は列を成し宮城を埋め尽くす、壮観なる眺望
しかし雰囲気は重苦しく晴明なる空の下に沈黙は淀む
帝、烈が静謐を破る
「揚玄忠、申せ」
最前列より一人の官が進み出る、烈の前で跪き恭しく拱手する
「臣、玄忠、申し上げます
我が珍国はますます貧しくなり、宮城はこの通りに痛み朽ち果てるばかり
各県の城壁はますます崩れ、城邑は名ばかりに成り果てて久しく
兵に給与なく、士卒は甲冑も刀剣も売り払い、心ある者は逃散し
無き者は盗賊に身をやつし民を守るどころか脅かしております
それもこれも国に富の無いためでございます
今、民に活力無く、市場に売り買いの声は無く
工房に槌の響く音は無く田畑は荒れ果て耕す者もありません
農民は逃散し技師は逃散し商人は寄り付かず
宮城に生い茂る草を刈る者もおりません
それもこれも税が重いためでございます」
揚玄忠は顔を上げくわと目を見開き声を荒らげた
「いったい如何なる事でございましょうや!」
「いったい如何なる事でございましょうや!」
「重税有りて国庫が潤わないとはいったい!」
右列の官たちは顔を上げ凄いような表情で老臣を睨みつける
揚玄忠は続ける
「寄生虫にてございます」
「いやしくも!民と帝との間にて
民より多くを取り帝に少なく渡す者どもが跋扈しているのでございます!」
その時、宮城の門にてどよめきが起こる
一人が正門から闖入し手に割符を掲げ中央の大道を駆けてくる
「急報にてございます!」
「急報にてございます!」
その者は帝の前で跪く
「黄州に異星人襲来!」
「皿型飛船、数十が飛来、州都僻京に空挺降下
そのかず夥しく、州の全域を席巻
太守、寒門無才、消息不明、鎮軍の活動なく
家々を焼き四方を略奪し家畜を奪い去っております」
「なんと!」
揚玄忠は絶句した、一瞬、静寂があった
帝、烈が言った
「車騎将軍、生ハム原木に兵2千を与えエイリアンを討たせよ!」
臣、ザオガオが進み出て言った
「恐れながら、現時点で敵情不明、出兵は拙速かと」
帝、烈が言った
「兵は神速を尊ぶと申す、それに2千など惜しくもない
それで敵情がわかれば十二分、直ちに兵を出せ!」
車騎将軍、生ハム原木は勅令を受けると
兵2千をかり集め出陣した
その軍が黄州に達すると
牧歌的な田園風景の上空に皿型飛船が浮かんでいる
ピワワワワーーン!
下部の円形の窪みより下に向かって黄色い光が円錐形に照射された
すると、一頭の牛が、「もー」と鳴きながら空へと浮かんでいき
やがて皿型飛船の内部に吸い込まれていった
見渡せばそのような光景がいたるところで繰り広げられている
将、殺伐益虫が怒鳴った
「エイリアンが家畜を奪っているぞ!」
生ハム原木は背に負った3人張りの強弓を取り
右腰につけた箙より矢を取り出し番え
上空の敵にひょうと放つ
すると、皿型飛船は傾きゆるゆると落ちていき
山の斜面に激突、爆発炎上した
生ハム原木たちは次々と矢を放ち皿型飛船を追い払う
その姿のほとんどが上空から消えかけた時
前方の平野の向こうから白い物が向かってきた
背丈は4尺あまりの小人の群れである
将、殺伐益虫が言った
「灰矮人、グレイ、背丈は4尺あまり
槍弓を能くしその勇敢なる事は比類がない」
体躯のわりに頭が大きく4頭身あまり、槍を手にし
肌は灰色、目は大きく黒い、口辺を歪め歯を剥き出し
「キェアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーー!」
と絶叫しながら槍を並べ宇宙ファランクスを組んで前進してくる
生ハム原木の軍は一斉に矢を放った
それは密集隊形に吸い込まれ、灰矮人が次々に倒れていく
槍が傾ぎ隊列に隙間が出来ていく
生ハム原木は愛馬メイヨンギルに飛び乗ると、偃月刀を振り上げ
一文字に突進する、彼の兵もすぐ後に続く
双方の列は乱れ入り混じり忽ち乱戦となった
「テェェェェェーーーーーーーーーーイィ!」
一体の灰矮人が槍を振りかざし
絶叫しながら1丈あまりも跳ね飛んできた
生ハム原木が偃月刀を大上段から振り下ろせば
それは真っ2つに割れ右の半身は右、左の半身は左
それぞれ吹っ飛んで地面を叩く、緑色の血がぶっしゃあと草の上に降り注ぐ
「テアッテアッテアッテョアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!」
別の1体、槍を突き出し突き出し突き出しながら迫りくる
生ハム原木が標槍を投げると、それは頭にぶっ刺さり
その体、縦に回転しながら地の彼方まで跳ね飛んでいく
「キュエアアアアアーーーーーイ!」
もう一体、絶叫しながら双節棍を振り回す、体側、右、上、左
「ホアアアアアァァァァァァーーーーーーッ!」
「タアーーーーーーーーッ!」
生ハム原木が偃月刀を車斬りに振えば
その首、ビューンと空の彼方に飛んでいく
胴からぶっしゅああああと血が吹き出し緑の飛沫は空に上がる
見渡せば、灰矮人は尽く倒れ、味方は勝どきを上げていた
その時である
平野の向こうに面妖なる物が顕れた
巨体であった、物見櫓のようであった、3本の脚で歩いてきた
上に楼があり灰矮人が見え隠れする
殺伐益虫が言った
「三脚楼、トライポッドだ!」
楼の中から灰矮人が次々と矢を放ってくる
生ハム原木の軍は楼に向けて一斉に矢を放った
しかし、三脚楼はびくともしない
灰矮人は狭間に隠れ矢は当たらない
灰矮人は矢をしのぐと狭間から身を乗り出し一抱えもある石を投げ落としてきた
生ハム原木の兵が次々と打ち倒され、怯み、逃げ出す者もあらわれた
生ハム原木は愛馬メイヨンギルを駆って突進する
三脚楼の脚の其の蠢く間に滑り込みて偃月刀を一閃
1本の脚が断ち切られ跳ね飛べば三脚楼の巨体は傾ぎ地響きと共にどうと倒れる
これを見ると兵は忽ち勢を得て三脚楼に群がった
矢を放ち石を放ちて楼の中の灰矮人を怯ませ
槍を突き出し斧を振いて三脚楼の脚を断ち切る
殺伐益虫は輪にまとめたる縄を肩にかけて馬を走らせ
三脚楼の周りをぐるぐると回りて縄を巻き付けると
三脚楼は足をとられ前につんのめるようにして倒れる
こうして三脚楼は尽く打ち倒された
もはや、異星人に兵は無かった
生ハム原木は異星人を降すと彼らを捕縛して
南方に送り田を耕させ屯田兵として南から押し来る地底人への備えとした
完




