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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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村から追放された俺、隣村で英雄扱いされて追ってきた美少女と「夫婦」と勘違いされる。

作者: 紗月
掲載日:2026/05/16

 「もう限界だ!ヴェイル、お前にはこの村を出て行ってもらう!」


 男の名はガラン。村長の息子だ。

 日に焼けた肌に丸太のような太い腕。脳筋という言葉がこの男にはよく似合う。


 その男の言葉に村の中央広場に集まった男たちは口々に賛同の言葉を述べる。

 みな、傷だらけだ。

 それもそのはず、今しがた村を襲撃してきたダイアウルフの群れを激しい戦闘の末、撃退したばかりなのだから。


 「俺がいったい、何をしたというのか?」


 俺の問いにそんなこともわからないのか?と言わんばかりの顔をガランが見せる。


 「では、言わせてもらおう。お前は戦いの間、いったい何をしてたんだ?」

 「何って、俺はダイアウルフにデバフを…」


 ガランはため息をついた。

 怒りの感情を抑えているのか、あくまでも冷静に言葉を続けた。


 「お前のスキルは知っている。相手のレベルをたった1下げたからと言って何の意味があるんだ?」

 「いや、1下げたわけではなく、1にしたんだが…」


 ガランはため息をつく。


 「まだ、そんなバカなことを言っているのか?この村のやつら相手に何度も試しただろう?お前のスキルは相手を少し弱くするだけなんだ…」


 ガランの言葉は合っているようで間違っている。

 ただ、それを証明する術を俺は持っていない。

 ステイタス画面が見えているのが俺だけだからだ。


 村の若者たちは俺も含めてレベルは低い。最高レベルが俺とガランのレベル3だ。

 レベルを1下げることと、レベルを1にすることに対して差は出ない。

 俺の能力を使っても「ちょっと調子が落ちたな…」くらいにしか感じられないらしく、この能力を信じてもらえない。

 かと言って、襲ったきたレベル20のダイアウルフ相手にデバフあり、なしを試すわけにはいかない。

 デバフのかかっていないダイアウルフの一撃を食らえば死人が出てもおかしくはないのだ。


 それに俺のこの能力にも欠点があった。

 視界に入った対象にしか、この能力は発動しない。

 今回のように少し離れた位置で、ダイアウルフの群れ全体を常に視界に入れなければならない。


 「お前、みなが必死に戦っている時に逃げ回っていただろう?」


 視界にダイアウルフをいれるために常に動き回っていた俺の行動は、ガラン達には逃げ回って戦闘に参加しないとんでもないヤツに見えていたようだ。

 ガランのその目にだんだん殺意に満ちていく。


 「カリナだって、気づいているだろう?こいつの臆病さをっ!」


 ガランは少し離れたところからこちらの様子をうかがっている彼女を見た。


 容姿は俺が見ても美しいと思えるほどで、村の誰もが一度は彼女に恋すると言っても過言ではない。

 腰まで伸びた金色の髪は後ろでまとめられ、青く美しい瞳は、よく俺を睨みつけているのだが、無駄のないしなやかな体つきをしているせいか、立っているだけで絵になる。

 そして、そんな彼女にガランが好意を抱いているのも知っている。


 彼女にいいところを見せたいという気持ちもあるのだろう。


 俺に冷たい視線を浴びせている彼女と目が合うと、顔を真っ赤にして視線をそらす。

 彼女もまたガランの言葉を鵜呑みにして、俺を無能扱いしているのかもしれない。


 ち!と短く舌打ちして、ガランは話を続ける。


 「ノーマン、お前がダイアウルフにやられそうになっている時に、俺が助けてやったが、ヴェイルのやつはその時どうしてた?」

 「離れたところから、俺を見てた…そうだ、何もせずに突っ立ってたんだ!」


 ガランの言葉を受けて、ノーマンの怒りが爆発する。

 俺のスキルでレベル1にしたダイアウルフをガランが追い払った、というのが真相だが話は通じそうにない雰囲気だ。

 村の男たちから俺に向けられたヘイトは頂点に達している。


 カリナですら涙ぐんだ目で俺を見ている。

 なんて、ひどいことを…と、そんなことを思っているのだろう。

 どうにも、この村に俺の居場所はないようだ。


 「わかった。俺はこの村を出ていくよ…」

 「ようやくわかったか、この腰抜けめ。今すぐに出ていけ、とは言わんがなるべくはやくな」


 俺は無言で頷いて答えた。




 その夜、みなが寝静まった頃に、俺は村を出た。

 どこか離れた場所でのんびり暮らそうと思ったからだ。

 いずれ旅立つ時は来ただろう。それが今になった、それだけのことだ。


 荷物は最小限にしたが必要なものはザックに詰め込んだ。

 よくある冒険者風の出で立ちだ。道中は何があるかはわからないので片手剣は持っていくことにする。


 とりあえず、隣村のリーベルに向かって一本道を何時間か歩き続けた時だった。

 月明りで街道の視界はよく開けていたので、俺はすぐに気づくことができた。

 ダイアウルフの群れが街道をうろついている。

 村を襲撃してきた群れだろうか?

 夜とは言え、街道を魔物がうろつくことはそうあることではない。


 何か別の個体か集団に縄張りを追い出されたか…?


 いくつか疑問に思ったが、俺が気づいているくらいなのだから、当然ダイアウルフもこちらに気づいていた。

 一斉にこちらに向かって襲い掛かってくる。

 俺のスキルは集団戦には不向きだが、今回に限ってはまだこちらに利がある。


 相手が前方に固まっているからだ。

 

 一瞬で全てを視界に収め、レベル1にする。

 ステイタス画面で効果を確認するが、問題ない。

 いけそうだ。


 最初に飛びかかってきたダイアウルフを交わし、片手剣を水平に口を割くように頭部を切断した。

 その瞬間、俺のレベルが「9」に跳ね上がった。

 

 「これは?」


 まさか、相手をレベル1にしても、経験値はレベル20相当のものが手に入るのか?

 

 囲まれないように気を使いながら、1頭ずつ倒していく。

 倒すごとに俺のレベルは上がっていく。


 十数頭倒し終わった時には、俺のレベルは20になっていた。


 「こんな簡単にレベルが上がるとは…」


 俺がほくそ笑んでいると、凄まじい殺気を感じた。

 ひと際巨大な体長5メートルはあろうかというダイアウルフが姿を現した。

 どうやら、この群れのボスらしい…。

 目が合うと、その目は手下を殺されたからか、とてつもない怒りに満ちているように感じた。


 ダイアウルフのボスは、俺を見つけるなり地面を抉る勢いで踏み込み、低く唸った。

 その声だけで、背筋が凍る。

 さっきまで相手にしていた群れとは、まるで別物だ。


 「…でかいな、おい」


 思わず独り言が漏れた。

 牙は俺の腕ほどの長さがある。

 あれを食らえば、レベルがどうとか関係なく死んでしまうかもしれない。


 俺は一歩後ろに下がり、ボスの全身を視界に収めた。

 その瞬間、ステイタス画面に表示されていた「35」の数字が「1」になる。


 「よし…!」


 次の瞬間、巨大なダイアウルフは大地を蹴り飛びかかってきた。

 レベル1になっても、動きは速い。

 速い…が、ダイアウルフのボスは思ったほどのスピードは出ていないのか、戸惑ったような表情を見せているのが、こちらにもわかる。


 かわせる。

 だがレベル1でも、質量はそのままだ。

 当たれば完全に死ねる。


 「やっぱり、ボスは別格か…!」


 だが、レベル1になったことで、ステイタスは落ちている。


 ボスが再び跳びかかってきた。

 だが、思ったほどの飛距離は出ていなようだ。

 手前に着地するだろうという予測の元、俺はその位置目掛けて片手剣を振り下ろした。

 着地したダイアウルフの頭蓋に、硬い手応えとともに剣がめり込んでいく。

 頭部の半分ほどに剣が達した時にダイアウルフの動きは止まった。

 

 そのまま静かにその巨体は倒れていく。

 直後、俺のレベルが「25」に跳ね上がった。


 「マジか…」


 レベル1にしても、経験値は元のレベルのまま。

 つまり、レベル35の魔物を倒せば、そのままレベル35相当の経験値が入る。


 「これは、チートスキルかもしれないな…」


 思わず笑いがこみ上げた。


 

 次の日の昼頃、街道横の大きな木の下で休憩していたところに、行商人の荷馬車が通りかかった。

 御者は見知った顔の男だった。

 行商人のバルドだ。

 このあたりの村を回って商売をしている。

 

 「いいところに通りかかってくれた。もし隣村のリーベルに向かうところなら、ついでに乗せてってもらえないだろうか?」

 「これはヴェルドさん、村を追放されたと聞きましたが…。まあ、いいでしょう。ちょうど荷台は空いてますしね」


 俺は礼を言って、荷台に乗り込んだ。

 そこには不機嫌そうに座る先客がいた。


 「何、コソコソ村を出て行ってるのよ。追放されたって、普通は挨拶くらいするでしょ!」


 カリナだった…。

 座ったまま、俺を睨みつけている。


 「そうなのか?追放された身では、それも何か気まずい気がするのだが…」


 今更降りるわけにもいかないので、カリナの対面に座った。

 親切に俺が座るのを見届けてから行商人のバルドは荷馬車を再び進めはじめた。


 「コミュ障か!」


 カリナが冷たく言い放つ。

 否定はしないが、何故カリナが行商人の荷馬車に乗ってるんだ?


 「ちょうど、バルドが村を出発するところだったから乗せてもらったのよ。リーベル村に用事もあったしね」

 「用事って?」

 「そんなこと、どうでもいいでしょ。それより少し気になることがあるの。昨日のダイアウルフのことなんだけど、かなり魔力が小さかったの。あなたのスキルと何か関係あるの?」

 「レベル1だったからじゃないか?」


 カリナは魔力感知のスキルを持っている。

 レベルによって魔力のようなものの大きさが違うのかもしれない。それを感じ取ったのだろうか?

 これも証明できるわけでもないので、なんとも言えないところだが。


 その時、急に荷馬車が停止して、バランスを崩したカリナが俺に倒れ掛かってくるが、情けないことに俺は支えきれずにそのまま倒れこんでしまった。


 「痛ててて…」

 

 カリナが俺を押し倒したような格好になっていた。

 目の前にカリナの顔がある。

 カリナは顔を真っ赤にしながら、起き上がり姿勢を正す。

 ちらりと横目で俺を見る。


 「何かあったのか?急に止まるなんて…」


 カリナが何か文句を言いたそうな顔をしていたので、俺はバルドに話しかけることにした。


 「あ、あれを…」

 

 バルドが指さす方向見ると、上空から羽の生えた竜のようなものが森の向こうに急降下しているのが見えた。

 急降下しては、また上空に戻り旋回している。

 何か獲物を狙っているような動きだ。


 「あれはワイバーン?」


 カリナがつぶやく。


 「あの方向はリーベル村じゃないのか?」


 俺の問いにバルドがうなずく。


 ダイアウルフどころじゃない。あんなのに襲われたら、あっという間に村は全滅だ。

 リーベル村でスローライフを密かに狙っていた俺の計画が狂ってしまう。


 「バルド、急いでくれ。このままでは村が…」

 「行ったってどうにもならんだろう。ここは引き返したほうが…」

 「いや、俺が…倒す」


 スキルを使えば倒せないことはない、という俺の判断だったが、カリナが横やりを入れる。


 「何バカなこと言ってんのよ!あんなの倒せるわけないでしょ!」

 「いや、できる…はず…」


 スローライフのために必死だった。

 怒りに顔を硬直させながら、カリナは俺をみつめていた。

 やがて…。


 「わかったわ…好きにすればいいわ」

 「いや、嘘でしょ。二人で勝手に決めないで、私の意見も聞いてくださいよ…」


 バルドは泣きそうな顔をしていた…。


 

 

 急いでリーベル村まで来ると村人たちの必死の抵抗にあっているためか、ワイバーンは旋回しながら様子をうかがっているようだった。

 何から襲おうか迷っているのか、余裕の表れなのか、まだ、そこまで村に被害は出ていないようだ。


 あとは俺がワイバーンを視界にさえ入れれば、なんとかなる。


 …はずだった。


 ワイバーンの急降下のスピードが速すぎた。レベル1でもワイバーンのスピードは飛んでもなく速い。

 一瞬で俺の視界から消えた。

 リーベルの村人の悲鳴が響き渡る。

 

 村人たちが逃げまどい、家々がなぎ倒されていく。


 「これはまずいな…。相手の動きが速すぎて追いつけない…」


 しかも、ワイバーンはすぐに上空へと舞い戻ってしまう。

 その時には視界に入れることができるが、すぐに俺の視界から急降下して消えてしまう。

 移動距離が長すぎるのだ。

 もちろん、遠く離れれば視界に入れることは可能だが、それでは意味がない。


 俺がどうすべきか考えていると、荷馬車から降りてきたカリナが耳打ちする。


 「私が魔力感知のスキルでワイバーンが狙っているものを判別すればなんとかなる?」


 俺は、ハッとしてカリナを見た。

 すかさず、カリナは頬を赤くして、顔をそむける。


 「それはいいかもしれない…」


 あらかじめ移動先がわかっていれば、攻撃もできる距離で視界に入れることもできる。

 


 「あそこの中年の女性を狙ってる」


 急いでカリナの指さす方向へと俺は向かう。

 中年の女性には、声をかけこちらへと逃げてくるように叫ぶ。


 女性と位置が入れ替わった瞬間、ワイバーンが視界に入る。


 スキルを使いワイバーンのレベルを1にして、動きが鈍くなった瞬間、俺は剣を振るった。

 残念ながら仕留めることはできなかったが、羽を切り裂くことには成功した。


 そして、また上空へとワイバーンは舞い戻っていく。


 「次、私を狙ってくるわ!」


 カリナが叫ぶ。

 呼び寄せたのか?カリナのスキルは魔力感知だけじゃないのか?

 疑問に思ったが考えている暇はない。

 

 何度か上空を旋回した後、ワイバーンがカリナ目掛けて急降下してくる。

 カリナは全く、その場から動かなかった。

 

 「信じてるから…」


 カリナが俺を挑発してくるが、俺はワイバーンだけに集中する。

 タイミングを合わせて、剣を振り上げた。


 ワイバーンの首が跳ね上がる。

 まるでスローモーションのように胴体はそのまま地面に倒れた。

 遅れて、頭部が落ちてくる。


 俺のレベルは「50」にまで一気に跳ね上がった。

 




 「ワイバーンを倒した…すごい…ワイバーンを倒した!」


 祈るような姿勢で立っていたカリナがものすごい笑顔で俺に抱き着いてくる。

 こんな彼女は今まで見たことがない。


 そして、今までどこに隠れていたのか、リーベル村の住人たちがいっせいに現れ始め、俺たち二人を取り囲む。

 

 「本当にワイバーンを倒したぞ!なんて人だ」

 「すげえ!!この村の英雄だ!」

 「旅の夫婦が村を救ったんだ!」


 次々に村の人たちが叫ぶ。


 「ごめん、ちょっと我を忘れてしまったわ」

 

 冷静さを取り戻したカリナがそそくさと俺から離れる。

 ただ、村人たちの賞賛はいつまでも止むことがなかった。



 

 その後、俺は自らの状況を村長に話すと(追放された…とは言わなかったが)、この村に住めばいいと言ってくれた。

 それを聞いた他の村人たちも、快く受け入れてくれるようだ。


 「この村に住んでくれたら逆にありがたい」

 「今回みたいなことは、そうそうないと思うが、もし、また何かあった時にあなたたち夫婦がいてくれたら、どんなに心強いか…」


 「ん?」


 何か誤解されている感じもする…。

 俺がどうしたものか…と苦笑いをカリナに向けると、

 顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる。


 そ、そうだな。ここは俺がちゃんと否定しなきゃいけないところだな。


 「いや、俺たちは夫婦とかじゃないんだ…」

 「そうよ、まだ違うのよ…」

 「ん…?」


 そんな俺たちを見て、村人たちはニヤニヤといやらしい笑いを浮かべていた…。





---村長の息子「ガラン」------------------------


 その夜。村は再びダイアウルフの襲撃を受けた。

 ただ、その数はたった一頭。

 群れからはぐれた個体がやってきたのだろう。


 簡単に追い返せる。

 そう思っていた。

 だが、このはぐれダイアウルフはとんでもない強さだった。

 俺たちの攻撃を全く受け付けず、村を蹂躙する。


 攻撃を受け、ノーマンが倒れる。

 とどめを刺そうとさらに襲い掛かるダイアウルフとの間に割って入ったが、剣で切りかかった俺の右腕をダイアウルフはやすやすとかみ砕いた。そして、そのまま静かにノーマンの喉元を食いちぎった。


 「ノーマン!」


 俺は悲痛な叫びをあげた。

 武器を持った右腕を失った俺にダイアウルフはゆっくりと顔を向ける。

 何故、こいつはこんなに強いんだ?

 見た目は、むしろ先日襲ってきた群れのダイアウルフより小さいくらいなのに…。


 その時、不意にヴェイルのことを思い出した。

 俺のスキルは視界に入れた任意の相手をレベル1にするのだと…そう言っていたことを。


 「あれは、本当だったか…」


 動きを止めた俺の喉元にダイアウルフが飛びかかってくる。

 押し倒されて、ぶちぶちと何かが食いちぎられている音を聞きながら俺は考えていた。


 「ここにカリナがいなかったことが唯一の救いか…」


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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