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刀騎士は炎と踊る(3)

 剣戟を幾度も重ね、あいての片腕を切断しようとも、すぐに再生されて

しまう。こいつを倒すための糸口も見出せないまま、そんな塞がれた、突

破口の見えない戦いを俺は続けていた。

「考えが・・・纏まらねぇから――――ちょっと離れろよっ!」

 息が上がってきた。止まらない猛攻のせいで思考も纏まらない。いつも

クソ長い講義の時間に学んできたことが、今はからっきし思い出せない。

 焦り。そんな勝利とはかけ離れた場所にある感情が、今の俺を支配しか

けていた。

 まだ何かできることがあるはず。何か見落としていることがあるはず。

あの定義に対してどの程度まで屁理屈を捏ねられるかが勝利の鍵だ。

(何とかこいつから離れねぇと・・・ゆっくり作戦練る時間も余裕もねぇ)

 それが現状。能力の万能さも刀の駆使技術も俺が上回っている。だがそ

れは覚醒したばかりの新能力の弱点。戦闘の最中覚醒したせいで技術云々

よりも扱い方がしっかりマスターできていないのだ。

 ――ジャアアアアアアッ!

 俺が疲弊し焦っているということを察知したのか不朽鳥はより一層攻め

てくる。俺は堪らず後退してしまう。・・・・ダメだ。俺の後ろには、護る

べき皆がいるのに・・・・! 

 意地で踏みとどまる。こういう、実力が逼迫した戦いで敗北するのは、

大抵が恐れ、一歩引いたものだと相場が決まっている。

「ヤバ・・・・・いっ!」

 チリチリと肌が痛い。かなり弱くなっていた熱気が復活し始めている。

 戦場が少し移動したせいで配置した冷却性刀身から離れてしまっている。

このままじゃあいつの纏う死の熱気が勢いを取り戻してしまう。

 それでも俺は新しく刀身を生み出す余裕が無かった。対策が得られない

ことに対する焦燥。勝てないかもしれないということに対する恐怖。目の

前の、俺を、皆を殺すかもしれない存在に気持ちが自然と萎縮してしまう。

 このままじゃ負ける。そんな、俺が求めた未来を根底から否定する言葉

が俺の頭にちらつき始めた、そんな時。

「何をしているの、夜月っ! あなたは勝つのよっ!」

 そんな、俺自身も全くといっていいほど聞いたことの無かった大声が俺

に投げかけられた。次いで間をおかずにグレネードランチャーの弾丸と思

しきものが飛来、俺に当たらずに不朽鳥に直撃する。突撃を敢行している

最中だっただけに直撃は免れなかったようだ。

 ――ジャ・・ア・・アアアッ!

 苦悶の咆哮が響く。振り向けば影名が腕をグレネードランチャーへと変

貌させ、俺を睨んでいた。

「あなたがここで勝たなくて、誰が勝てるというのっ!? 焦ってないで、

今この場で勝つことだけを考えなさい! 焦ることなんて後から幾らでも

できるわっ! 銃弾程度なら腐るほどあげるから、とっとと勝ちなさい」

 影名が怒鳴っているところを見るなんて、人生初じゃなかろうか。それ

ほど驚きに塗れていて、あの寡黙な影名が怒鳴らなければならないほど、

今の俺は体たらくを晒していることになる。

「そう、そうだよっ! 私の提案は却下されちゃったけど――――勝てる

って、絶対っ!」

 戦いに不向きで、戦いを好まない桜子さえも声援を送ってくる。本当な

らもっと後ろへ下がっていなければ巻き込まれてしまうのに。俺の戦場が

下がってきているとはいえ、声の届く位置は結構近いはずだ。

「援護ならいくらでもしてやるぜ・・・・」

「そうそ。防御ならおまかせ、ってね」

「牽制程度でいいなら幾らでもっ!」

 俺は一人で戦っているつもりだった。海深は傷つき、落葉は疲れ果て、

銃弾は通らず光は捻じ曲がる。そんな中でも皆は戦おうとしてくれてい

たのに、俺だけが一人で戦おうとしていた。

「そう、だな・・・・・指示は出さねぇ。そっちのタイミングでサポー

ト、頼むぜ」

 両手に耐熱性刀身を持ち直し苦悶から復活した不朽鳥に向かって歩を

進めていく。その隙に思考をめぐらせ、冷却性刀身をイメージしそこら

辺に配置しておくのも忘れない。

(さて、せっかく影名が冷静に戻してくれたんだ・・・突破口を見つけ

なくちゃな)

 今俺に必要なのは何だ? それは周りにある炎。夜の暗闇に明かりを

灯し、揺ら揺ら頼りなく揺れながら、煌々と、獰猛に燃え盛る炎のせい

で強烈な熱気が常に俺を襲っている。冷却性刀身がそれを防いでいるが

戦闘中にいつでも配置できるわけではない。これの突破が一個目。

 二つ目は不朽鳥本体の打倒だ。というか、それが主目的だ。

「まずは一個目の突破口をこじ開けるか・・・・・!」

 火を消すのなら水をぶっかけるか酸素を奪うのがいい。だがこの火力

に水など意味無いだろう。それこそ滝のように、湖のようでなければ。

 となれば酸素を奪うしかない。幸いこの火力、一気に大量に奪えば

あるいは―――――。

 そこまで考えを巡らせ、酸素を奪うことでの鎮火は危険と思い至る。

 急激に酸素を奪うことでの鎮火。それは不可能なことじゃない―――

と思う。でも、そんなことをすれば俺だって酸素欠乏症に陥る可能性も

ある。それより何より、こんな開けた場所での酸素欠乏による鎮火。鎮

火は一瞬で、すぐに周囲からの酸素供給は受けられる。完全に鎮火しき

らずに燻った火でも残っていようものなら――――バックドラフト現象

を引き起こす可能性もある。

 バックドラフト現象は本来、密閉された空間で起こる現象。酸素欠乏

で鎮火しかけた火に突然大量の酸素が供給されると火は急速に燃焼、一

気に大爆発を引き起こす。そんなことになれば不朽鳥だけでなく俺も皆

も死んでしまう。

「一個目は無視するしかないか・・・・さすがに水の大量生産なんて

できないだろうからな」

 液体窒素を宿した刀身が作れるからたぶん水を宿した刀身も作れるの

だろう。しかしながらその際に刀身における能力付加が想像もつかない。

液体窒素は冷却性という分かり易い性能があったが水にはそれがない。

液体窒素が液体で現れなかったことから水も液体で現れないものと思わ

れる。そうなったら水の鎮火性など期待できない。

 いきなり出鼻を挫かれた気分だ。そう落ち込んでいる暇も無いので手

早く二個目の突破口を開いてしまおう。

 ウォルフラム・カーバイドを振りかざし有翼人形を牽制しながら隙を

窺う。不朽鳥はさっきのグレネードランチャーにより不意打ちが効いた

のか不用意に攻撃してこない。用心深くなったか、それともただ不意打

ちに臆しているだけか・・・・・。

 ビッ―――と雪女の光線が見当違いの方向へかっ飛んでいく。放たれ

たそれはシュリーレン現象とやらで明後日の方向へ向かって飛んで行っ

たにも関わらず不朽鳥は気を取られた。いや、ビビったのか?

 そこを隙とみて攻撃に移ろうとしたが、俺の先を越すように大量の銃

弾が次々と着弾する。しかも銃弾一つ一つが小さく爆発しているのが見

て取れる。

 背後を見れば影名が左右の腕を同化させ一丁の重機関銃を生み出して

いた。その脇には弾丸が入れられた大きなケース。落葉がベルト給弾式

の弾丸を手で包み、数個ずつ弾丸を爆心地で爆弾に変えていた。

 冷却性刀身のお陰で熱は殆ど無い。だから弾丸が通るようになったの

だ。

 影名の瞳は「さっさと対抗手段を見出せ」と語っていた。

 俺はそれに頷き目を閉じる。俺が目を閉じたって皆が護ってくれると

信じている。思考に集中し、何とか不朽鳥を倒す手立てを考える。

 あいつと咲良は同時に氷結結界に閉じ込めなければならない。咲良を

結界内に封印してしまうのは気が引けるがそうしないとダメなのだ。い

いくら不朽鳥を閉じ込めたって、咲良自身の時間進行速度が減退しなけ

れば生命力を奪われる速度は変わらない。どちらか片方を閉じ込めた場

合、不朽鳥と咲良を繋いでいる炎の管のせいで氷が閉じきらない。だか

ら外世界と結界内世界で完璧に区別することができなくなってしまう。

 こういうとき、彼女が仲間でその能力を聞いておいてよかったと思う。

 これを実行するためにはなるべく不朽鳥と咲良が近くにいないといけ

ない。だがそれでは咲良を気にして攻撃ができなくなってしまう。

「奴が空にいれば・・・・咲良に影響は出にくい、か」

 その結論に至る。不朽鳥が勝手に飛ぶか、俺が空へ追い払えばいい。

「結論が出れば実行するだけだっ!」

 俺は弾丸を浴び続けている不朽鳥に向かって走り――――出さず、方

向転換して落葉に駆け寄った。

「落葉っ!」

「んあ? 今忙しいんだけど・・・つか戦ってこいよ!」

 弾丸を包んでは爆弾に変え、包んでは爆弾に変え。そんな作業中の落

葉に頼みがあったからわざわざこっちまで来たのだ。

 俺の手には小さなウォルフラム・カーバイド。匕首よりもずっと小さ

く、ちょうど落葉の両手で包みきれる程度の大きさしかない。殺傷能力

を主とするならあまりに頼りない一品だ。

 それが五本。落葉に向けて差し出す。

「これを爆弾化してくれ。これからやることに必須なんだ。起爆するタ

イミングは、刀身が敵に当たった瞬間だ」

「・・・・まぁ、わかったっ」

 弾丸を爆弾化するのを中断して一本一本爆弾に変えていく。五本しか

なかったからすぐに終わってくれた。

「これで、何とかなるんだろ?」

「――――何とかなるさ。いや、何とかしてみせる」

 思いつきで言った言葉。何とか安心させられないかと思って咄嗟に思い

ついた言葉がこれだった。ちょっと情けない感じがいなめない。

「何とかしてみせる、ね。この兄弟は揃ってもう・・・・・」

「ん?」

「い、いやなんでもねぇ! とっとと行けっ」

 何か落葉の呟きが聞こえた気がしたから振り向いたんだが怒られてしま

った。何なんだよもう。

 爆心地で爆弾化された物は落葉の意思で起爆する。もう一個の不安要素

さえ無くなれば俺は勝利できる。

 あいつを倒すに足る攻撃手段はもう考えた。あとは―――――。

「空へ逃げたあいつに、どうやって攻撃を当てるかだな・・・・」

 それこそが最後の不安要素。それが出来なければ全てが水の泡。この爆

弾化された刀だってあいつを空へ追いやるためのものだ。威力は最大にし

てもらっているから、さすがに連続で五発ももらえば逃げるだろう。

 逃げなかった場合は、刀で強制的に打ち上げるしかない。

「とりあえず・・・・ぶっ飛んどけッ!」

 図ったようなタイミングでその辺を飛んでいく光線。未だに降る爆弾丸

の雨。攻撃を完璧に封殺する鱗。炎といったって、肝心の熱がなければこ

んなにも弱く見える。

 俺が不朽鳥に向かって走っていくのを見た影名が射撃を止める。体勢を

立て直す暇なんかやらない。突然の射撃中断にここぞとばかりガードを解

いて攻撃に移ろうとした奴の眼前には、既に俺が肉薄していた。

「落葉ぁっ! 起爆しろッ!」

 右手に三本、左手に二本の短刀を持ち、同時に前へと突き出す。それは

不朽鳥に密着し、途端に爆発した。

 手を離し右手にウォルフラム・カーバイドを出現させる。身体を捻りな

がら逆袈裟に斬る。

 ――ジャアアアッァ!

 爆発のせいで手が焼けた。だがこれは生死を賭けた、自分だけじゃない

仲間の命も賭けた戦い。手が焼けた程度で音を上げるなんて情けない真似

はできない。

 不朽鳥は上空へ逃げていく。地上にいることが不利と感じたのだろう。

高く高く舞い上がり、重機関銃の射程から逃れようとしている。その姿を

再び大怪鳥の姿へと変貌させより一層早く翔けていく。

「ここが正念場か・・・・」

 さぁ考えろ。どうすればあんな空高く飛び上がった不朽鳥に攻撃を当て

ることができるのか。

 投げる、では届かない。かといって他に遠距離攻撃法なんて・・・・。

 俺のDUの定義を思い出す。“刀身”でなければならない。その“刀身”

は元素から成らねばならない。面積体積、数に制限はなく、使用者の実力

に依存する。そこから何か見出せるか・・・・・? あと定義されていな

いことはなんだ。

 俺と同じか、少し大きい程度だった有翼人形。俺よりもずっと大きかっ

た巨大な鳥の姿。その鳥の姿が今はもう、五円玉の穴程度の大きさにしか

見えない。あんな遠い場所に行ってしまった敵に攻撃を当てる――――。

 そう、『遠い』んだ。

 遠い相手に攻撃したいなら、攻撃を届かせるしかない。

 でもそれができないなら? 攻撃そのものを相手に近づけて放てばいい。

 今の俺ならそれができるんだ!

「まったく・・・・よくここまで屁理屈思いつくなぁって、自分で思うよ」

 空高く舞い上がった不朽鳥へ向けて手を伸ばす。五指をいっぱいに開いた

その手には何も無く、ただ空へ向けられていた。

 俺のDUに定義されていなかった項目。おそらくは最後に相当するだろう

事柄。

 それはイメージで生み出した“刀身”の“出現場所”だ。

 今まで無意識的に出現場所は俺の手の届く場所だった。俺が持って使うの

だから当然だ。だが冷却性刀身を配置するときは意識せずにバラ撒くように

配置した。それはいたる場所に空間の裂け目ができ、そこから刀が出現した

からだ。

 だったら、遠く離れた場所に刀身の“出現場所”を“指定”することもで

きるはずだ。

 ――ジャアアアアッアアアッ!

 攻撃が届かないことに喜びの咆哮を上げ、もう勝利が見えたことに確信を

得た不朽鳥がクチバシから炎を固めた炎弾を発射する。

「まずは、試しだ」

 俺と不朽鳥の直線上、適当に離れた場所にウォルフラム・カーバイドを出

現させる。それは少し前に炎波を防ぎきった大盾と同じ形をしていた。

 盾と同じくらいの大きさだった炎弾はぶつかり、その圧倒的な熱を以って

盾を貫通――――することはなかった。大盾のほうが耐熱性があり強固だっ

た。それゆえに炎弾は塵と消え、俺に降ってくる火の粉さえも残らなかった。

 ムキになって何発も炎弾を放つが、それは全て同じ盾にぶち当たる。そこ

をわざわざ狙っている不朽鳥はバカだと思う。盾を突破しようと考えている

のか、俺が何もしなくても炎弾は全て散った。

 その事実に俺は笑う。

 もう、勝利はこの手に掴んだ。

「焼き鳥は、串に刺さってるのが一般的だよな?」

 イメージする時間は十分にあった。俺の頭の中には、もう勝利するために

必要な過程が全てイメージできている。後はそのイメージ通りの武器を生み

出して実行するだけだ。

 不朽鳥の周囲を囲むように空間が裂ける。黒く裂けた空間は光沢を持った

銀白色の切っ先を覗かせた。

「ウォルフラム・ニードルッ!」

 針のように細い――――とはいっても普通の刀身と同じほどの太さはある。

距離と長さのせいでそう見えるだけだ。針のように細く見える刀身が、十m

級の長さで幾本も出現し空中で不朽鳥を縫いとめた。

――ジャジャアアアッ!

遠距離から見ればまるで串に刺さっている様。もがく鳥に逃げる術はない。

ウォルフラム・カーバイドと同じ耐熱性刀身であり、奴の身体が千切れて

抜け出してしまわないように刃の向きを変え、不揃いな方向から貫き、わ

ざわざ刀身が絡み合うようにしたのだ。

抜け出せるわけがない。

「さぁ、しっかり焼いてやる――――これが、メインディッシュだッ!」

 串刺しにされた哀れな鳥の頭上に、黒い大きな裂け目が生まれる。否、

それは黒い大きな裂け目ではない。黒い小さな裂け目の集合体だ。それも

百や二百程度ではなく、それこそ千や万を超えるほどの数。それがくっつ

きそうなほどに隣接しているから大きな裂け目に見える。

 そこからパラパラと、光沢を持たない銀白色の粉が落ちてくる。それは

粉塵のように辺りに漂い、白く串刺しの鳥を覆い隠していく。

「軽量性刀身・特別仕様だ。カタカナならアルミニウム刀身とも言うな」

 聞こえているかどうかも定かじゃない距離だが、そんなことはどうでも

いい。俺が言いたいだけだ。

 あの粉のようなものは極小――――粉と見紛うほどまで微細に作られた

刀身の形をしている。面積体積が俺の一存で決められるなら、当然、大き

くも小さくもできるってわけだ。

 そして粉末状になったアルミニウムは可燃性である。即ち、よく燃える。

 あいつの全身が炎を纏っていなかったのが幸いした。あいつは身体から

熱気を発しているだけだ。身体が燃えているわけじゃない。

 もう哀れな鳥は見えない。それほどの数の極小アルミ刀身が空中を浮遊

し立ち込めているのだ。

 足りないピースは後一つ。それで―――――決着だ。

 無数の軽量性刀身を吐き出し閉じたはずの黒い空間の裂け目。新しく開

いた裂け目から一本の普通の形をした刀身が舞い落ちる。何の変哲もない

刀身は、重力に従って回転しながらゆっくりと落ちる。一秒もしないうち

に浮遊している軽量性刀身の雲に突入する。落下したそれは串刺しにされ

た不朽鳥にぶつかり、コツンッと音を立てた。

 ――ジャアアッ?

 あまりにも場違いな武器に、あまりにも意味のない攻撃に疑問符を浮か

べる不朽鳥。だが、その姿は一瞬で見えなくなる。

ぶつかったことで刀身に衝撃が伝わり、そして―――――発火する。

 粉末状になったアルミニウムは可燃性が強い。それは即ち、よく燃える。

十分な酸素と粉末状可燃物、そして火。この三つが揃えばある程度の知識

がある人間ならおのずと答えは導き出される。

 それ即ち、粉塵爆発。

 耳をつんざくような轟音が夜空に舞い、星の消え失せた空を巨大な爆発

がオレンジ色に彩る。鮮やかに着色された大空は“不朽”を司る者の最後

を飾るように大きく、大きく広がっていく。

「悪いけど、技名は考えてねぇんだ“焼き鳥”。まぁあんだけ鮮やかだった

んだ、黄泉への道は明るいんじゃねぇか?」

 こういう決め台詞ってさ、男の憧れだよな。

 爆発に背を向け、俺は影名の方へと向き直る。そして目に飛び込んだ光

景を見て、海深の声もあってすぐに視線を戻した。

「夜月さんっ! まだ、倒しきれてないッ!」

「・・・・・っ! 嘘だろ・・・・」

 爆風が消え、煙が晴れたその中に。満身創痍で炎を押し固めたような

流線型の滑らかなフォルムは見る影も無い。所々から炎を漏らし、それ

でも生きていた。

「粉塵爆発の直撃だぞ・・・・ッ」

 俺の周囲の炎は勢いを取り戻し、咲良と不朽鳥の間を繋ぐ炎の管はま

だしっかりと繋がっていた。

 ――ジャアアアッアァァアアアッ!

 ボロボロで、疲弊しきった鳥が咲良の肉体目掛けて降下する。そのま

ま再度咲良の中に隠れるつもりだ。そうなったら攻撃できなくなる。

「お前ら、離れろっ! そこにいたら巻き込まれるぞッ!」

 そういって俺も咲良の身体から離れる。本当なら完璧に滅してやりた

かったが仕方ない。

「ちょ、ちょっとっ!? 見捨てる気ッ!?」

「ふざけろっ! んなことするかよ」

 巻き込まれまいと離れた俺たち。それを好機とみたのか不朽鳥は降下

速度を上げた。そして、咲良の体内に逃げ込もうとしたその瞬間。

 

 天を突くような巨大な氷柱に、咲良の身体ごと閉じ込められた。



途中、聞こえてきた声は夜月に宿っているDEATH UNITの声です。彼らも元は人間の魂であり、変質させられてしまってDUになってしまっているのですから、逃れたいですよね、そんな運命から。


以上です。次へ~。

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