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刀騎士は炎と踊る(2)

夜月が戦っている後ろでの会話シーン。

 夜月が戦っているその最中、夜月が必死に護っているその後方では海深が倒

れ、落葉も満身創痍の状態で動くこともできずに戦場の推移を見守っていた。

 先ほど雪女が動き放置されていた咲良の肉体を回収してきたところだ。

「援護しにいければいいんだけどな・・・・」

「私の護鱗でも落葉の爆心地でも、あの炎には対抗できなかったからね」

 傷を負い、地に倒れ伏した今でも二人は戦場に赴こうとしていた。それを

必死に止めたのは桜子と雪女だった。

 雪女自身、援護したいのは山々だった。しかし多面鏡で反射させた光はシュ

リーレン現象によって直線移動しなくなってしまう。雪女にシュリーレン現象

で光がどの程度屈折するかなど、計算できようはずもなかった。

 だから五人は、自分たちを護りながら頭を回転させ、死に物狂いで戦う夜月

を見ていることしかできなかった。

「決定打が無い・・・・」

 戦地へ赴こうとした海深と落葉を止めることもせず、今まで沈黙を貫いてい

た影名が不意に言葉を発する。

「決定打・・・・って?」

「今の夜月はたぶん、ウォルフラム・カーバイドしか攻撃手段がない」

「え? でももう一個地面に突き立ってる刀は―――――」

「あれは冷却用。でも液体窒素じゃ溶鉱炉並みの温度を持つ不朽鳥の炎は冷却

しきれない。だから、致命的な決定打を入れることのできる攻撃手段が必要」

 炎波を巨大な刀身で防ぎきった夜月が、今度は接近戦を挑んでいる。周囲に

乱雑に配置された冷却性刀身のお陰で熱による死は免れているが、それもいつ

まで大丈夫か分からない。

 影名は戦場を見るだけで自分の知識と照らし合わせ、状況を読んでいた。

「だったらアレは無理なのかな? ほら、映画とかでやってた・・・・あの

広島とか長崎に落っこちた奴!」

「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」

 桜子の見当違い・・・・とも言えないが、明らかに実現不可能な意見を、

四人の沈黙が迎えた。

「え・・・・? アレ?」

「桜子ちゃん、それって原子爆弾のことでしょ?」

 雪女が呆れ気味に問う。海深と落葉に爆弾の解説なんてできないし、一番

詳しいであろう影名は説明する気が全く無いのか、戦場の夜月と不朽鳥に目

を向けていた。

「原子爆弾ってね、おっきな爆発だけじゃなくって、放射線っていうものも

出るんです」

「放射線・・・・?」

 一応、桜子は高校生である。一年生とは言っても、高校生である。核爆弾

の危険性はもちろん、放射能の危険性くらい分かっていてもいいはずである。

「放射線っていうのは・・・う~ん――――簡単に言って、目に見えない危

ない光線みたいなものかな。浴びると死んじゃうよ?」

 そこまで言ってやっと桜子にも放射線の危険性が理解できたようである。

桜子はあまり頭が良いほうではないが、流石に理解できたようだ。

 死の一言が入っただけで理解するというのもどうかと思うが。

 事実、原子爆弾をこんな場所で使えば不朽鳥は死ぬだろう。が、当然夜月

も桜子も皆死ぬ。どんなに小型にしたとしてもデルタセントラルシティも無

事ではすまないほどの影響が出るだろう。

 そして、どうして頭があまりよろしくない桜子から「原子爆弾」なんて言

葉が飛び出たのかというと――――――。

(たぶん“元素”と“原子”を間違えたんだろうなぁ。発音似てるし)

 影名を除いた三人が、同時に同じことを思ってため息を吐いた。

「火薬か・・・・とにかく爆発物が使えれば突破口はある。あいつは固形を

持たないはずだから爆風があれば吹き飛ばせる」

「なら、私の爆心地で――――」

「落葉の爆弾があいつの目の前まで届くの?」

「う――――痛いところを」

 そう。落葉の爆心地による爆発を不朽鳥に直撃させられれば、炎で形作ら

れた不朽鳥は吹き飛ぶ。完全には吹き飛ばなくともダメージを与えることは

できるだろう。しかし、落葉の爆心地は制限がある。

 両手に包める大きさの物しか爆発物へ変更できない。その条件下でなら爆

発の範囲も指定できるが、それもたかが知れている。両手に包める大きさの

爆薬では、あの不朽鳥に対してはあまり成果が見込めないのだ。

 それこそ粉塵爆発クラス、ダイナマイト、トリニトロトルエン爆弾クラス

の破壊力が要る。

「使い方をちょっと変えれば、元素で作られた刀身でも粉塵爆発は起こせる

・・・・気付いて、夜月っ」

 いつも寡黙な影名が、密かに力む。ずっと一緒にいた者たちでさえ、片手

で足りるほどの回数しか見たことの無い光景だった。



次へ~。

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