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今、私にできること

第十三章 “本質”



 常光君が離れていくのが分かる。ボクが進んでいくのとは正反対の

方向へ進んでいく。離れてしまうのは悲しいけれど、全部が終わったら

また会える。そう信じてボクは今ボクにできることをしなくちゃ。

 あれだけ偉そうに言っておいてボクができなくちゃカッコ悪いもんね。

 ブリッツタワー・セントラルに辿り着くまでにどれだけ障害があるか

見当もつかない。けど、立ち止まるわけにはいかない。

 常光君が言ったみたいに、今ボクにできることは皆を助けること。そ

のためにはブリッツタワー・セントラルの屋上にいかないといけない。

 地上三十階。ワーカータワーとディレクトタワーの間にある屋上。あの

場所なら色々な場所が見える。ボクの能力を使うなら視界が広いほうが

いい。

 走って行くのは時間がかかりすぎてしまう。さっきの戦闘で結構疲れた。

だからもう少ししたら、DUを使って―――。

 そう思っていたとき、横道から誰かが現れた。足を引き摺っていて凄く

疲弊しているみたいだった。

 しかもそれはボクのよく知る人物で――。

「メ、メイガスッ!?」

 ザ・メイガスその人だった。

「アッシュ・・・・ですか?」

 今にも倒れそう・・・・いや、今倒れてしまった。慌てて抱きこすが

息が荒いし痛みに悶えているみたい。これじゃまるで・・・・。

「侵食が・・・・進んできてるの。もう、限界・・・・・」

「・・・・!」

 もう限界。それはあと数分も経たずにエクスクレセンス化してしまうと

いう意味。彼女の生命力が尽きかけていることを示している。

 ザ・メイガスの死。死人の死はDUの死と同義。すなわち、DUの消滅。

それは常光君の死にも繋がる事象。メイガスのDUに助けられた人全てに

死が降りかかってしまう。

「だから・・・あなたの力で私を、封じてくれないかしら?」

 ボクの力で封じる。確かにそうすれば彼女の死を遅らせることはできる

かもしれない。

 でも、遅らせるだけ、だ。

 死そのものを消すことはできない。

「私は死にたくない・・・・死ぬわけにはいかないの・・・。あなたなら

それがわかるでしょう?」

 分かる。分かるからこそ、ここでメイガスを――――高嶺司(たかね つかさ)をここで

死なせるわけにはいかない。

 意味がわからず使い道も分からない能力に目覚めて、何も分からないまま

死兆星に連行されそうになっていたボクを救ってくれた人。そんな人をボク

の時間の檻に閉じ込める。どうしても躊躇ってしまう。

 でも、悩んでいる時間は無い。司さんはもう言葉を発する気力さえも無い

ようで、目を固く閉じて浅く呼吸を繰り返している。

 本当に、時間が無い。

 常光君に言われた言葉を思い出す。ボクの予期しなかった言葉。突然

言われたから驚いてしまった。

『今の柚木にできることも・・・・皆を助けること、だろ?』

 今のボクにできることは、そう、皆を助けること。

 なら、目の前で苦しんでいる司さんを見捨てるなんてできないし、ボク

がボク個人のくだらない感情で躊躇ったせいで司さんが死んでしまった

ら、もう二度と立ち直れないほどの傷を負ってしまう。

 ボクの心も、常光君の身体も。

 だから躊躇っている暇なんてないんだ。



「時を(いだ)け――――――――――」

 

 

 今までは「氷結結界」で発動してきたDEATH UNIT。それでは本当

の能力を発揮することはできないんだけど、わざとそうしてきた。

 そうしないと、降り積もる雪の全てが見る光景がボクに流れ込んで

きてしまうから。発動する度に全部を見てきたんじゃ・・・とても

耐えられない。

 人間は自分のキャパシティを超えた情報を得てしまうと脳が壊れて

しまう。ボクの場合は長時間、能力を完全発動し続けていれば―――

自分で自分の目を潰してしまうだろう。

 何も見たくなくなってしまう。だって、見たい見たくないに関わらず

雪が見る光景の全てが問答無用にボクの瞳に映し出されていくのだから。

 それでも、ボクの大切な人たちを助けるために必要なことだというなら

―――ボクはやってみせる。

 例え情報過多で脳が壊れたって、目を潰したって、命が続く限りは

力を使い続けてみせる。それで、一人でも多く、一秒でも長く助けて

みせるんだ。



「刻限境界――――――ッ!」



 灰色の雪が降り始める。さっきまで使っていた氷結結界よりも多く、

広く、その色をより灰色(アッシュ)に近づけながら降り積もっていく。

 ゆっくりと司さんの身体を地面に横たえる。その場からそっと離れる

と灰色の雪が降り立って大きな氷柱を形成した。その中に司さんが包み

込まれていく。

 これで彼女の時間の流れは極端に遅くなった。外の世界の約三時間が

刻限境界の中での一秒に匹敵する。

 これで時間は稼げる。氷の中で司さんが死んでしまう前にこの戦いに

終止符を打たなければならない。

 ―――この戦いの行く末が例えどんな結末だとしても、おそらく、DU

はこの世から消えて無くなるだろう。そうなったら、司さんが死ぬとか

死なないとか関係無しにDUの効力は消えてなくなる。

 考えたくもない結末。誰も救われない、皆が死んでしまう結末。もし

本当にDEATH UNIT が消えて無くなるのならば、それで命を繋いで

いる人はどうなってしまうのだろう。

 ・・・・すごく簡単な結論に達してしまう。それは避けようのない

未来なのかもしれない。だって“未知”を破壊しても破壊しなくても

司さんが死んでしまえば、常光君はもう・・・・。

 そういう考えを慌てて吹き飛ばす。今ボクがするべきことはブリッツ

タワー・セントラルまで行くこと。そこでボクにできることは皆を助け

ること。それだけでいいんだ。

 灰色の氷柱の中に閉じ込められた司さんに背を向けてブリッツタワー・

セントラルへ向けて走り出す。このまま走ったのでは時間がかかりすぎて

しまう。だから取るべき行動は一つしかなかった。

 自分の向かう道に氷でトンネルを作る。ブリッツタワー・セントラルの

入り口までトンネルを作って自分が入った後に出口と入り口を塞いだ。

 周囲――灰色の氷の外の景色が一気に遅くなる。出口まで塞いだために

今氷のトンネルの中は時間制御することができる。中の時間の進行速度を

速くして、実際の時間における三百倍の速度にした。

 ボクの三百秒が外の一秒。でも結局、走る距離は変わらない。

 体力はあるほうだと思っているけれど、全力疾走をずっと続けるだけの

体力は無い。ただでさえ刻限境界を発動したせいで頭痛が酷い。体力は

削られていく一方だ。

 嫌でも雪が見る光景が網膜に流れ込んでくる。ボク自身の体感時間と

外の体感時間の速さに違いのある今は、いつも以上に気持ち悪い。

 立ち止まりそうになりながらも必死に足を動かし続けて、ようやく、ブ

リッツタワー・セントラルの入り口に辿り着くことができた。氷のトンネル

をどのくらい走っただろうか。外の時間ではまだ十秒も経っていない。どん

なに時間がかかっていても十五分を超えてはいないはず。外では三秒も経過

していないはずだ。

 それでもこの先、建物の中にボクの刻限境界は通じない。建物ごと刻限

境界に取り込めば問題は無いのだけれど、相手は高さ二百mに達する地上

七十階建ての高層ビル。とてもじゃないけれど全体を取り込むことなんて

できやしなかった。

 他の死人同様、ボクだって“未知の欠片”の波動を受けている。ボクのD

Uの侵食は確実に進行していた。

 その証拠に身体中に刻まれていた棘のような青い刺青が顔全体、背中や

お尻にまで進行している。ボクの身体で刺青が無いのはもう胸とお腹くらい

だった。

 ボクにだって余裕は無い。無理に能力を酷使すればたちまちエクスクレセ

ンス化してしまう。そうなったら司さんだって死んでしまうし、他に助け

ることができたかもしれなかった人だって助けられなくなってしまう。この

先、地上三十階の屋上まで辿り着けば問答無用で能力を酷使することになる。

それまでに無駄な労力を使うわけにはいかなかった。

 少しの間呼吸を整えてから出口を開ける。時間制御ができなくなり氷の

トンネルは砕け散った。目の前には目的地であるブリッツタワー・セントラル

が聳え立っている。

 これからここを上らなければならない。

「・・・・・よしっ」

 疲れて震える足を無理矢理動かす。一応エレベータが動いているか

どうか確認したけど、当然、動いていなかった。

 つまり地上三十階まで階段で上らなければならない。

 諦めそうになる。挫けそう・・・・・。

 ・・・・・。

・・・。

・・。

上り始めてどのくらい経ったんだろう?

結構な時間上っていることは確かだ。ボクが屋上に着く頃には全部

終わっているんじゃないか、と思うくらいに時間感覚が麻痺している。

 例え終わっていたとしても上りきってみないと分からない。もしか

したらまだまだ十分くらいしか経っていないかも。

 足が痛い。過去に経験したこと無いくらい痛い。足が棒のようだ。

少し強い衝撃を与えたら千切れてしまうかも、と錯覚するくらい痛い。

ひょっとして、こういう状況こそ本当の「大根みたいな足」というの

ではないだろうか。

 何度立ち止まったか。何回休憩したか。幾度も倒れこんでしまいそう

になった。それでも必死に足を動かし続けた。

 今何階なんだろう。階段の天上付近、そこには二十七と書かれていた。

「もう・・・・少し・・・っ」

 あと少し。それで三十階に到達する。あとは屋上への扉を探して外へ

出るだけ。そうすれば座りこんでもいい。その後は雪が見た光景を頼り

にして助けられる人を助けられるだけ助けるだけだ。

 さっきからもうずっと、片目には外の光景が映っては別の光景が映り、

また数秒と間を置かずに別の光景へ変わる。これを繰り返し続けていた。

 時折、常光君の姿が見える。大きなエクスクレセンスと必死に戦って

いる姿。

 ボクは夜月さんの携帯端末に電話をかけた。意図して映し出した光景

には舞い上がる紅蓮の炎が燃え盛っている。その中に夜月さんの姿が

見えた。

 ボクなら助けられる。暴走しかかっている咲良ちゃんを助けて――

いや、エクスクレセンス化を遅らせることなら。

 そう思って電話をかける。まだ屋上には着かない。だから今電話を

かけてもすぐに行動に移ることはできない。そもそも、ボクの氷じゃ

あの膨大な熱量は封じきれない。

数回のコールの後に夜月さんは出た。

『こちら夜月』

「夜月さん・・・柚木です」

 電話が通じてくれたことに感謝する。まだブリッツタワー・セント

ラルは機能停止したわけじゃないみたいだ。

「今、咲良さんが暴走していますね?」

 暴走という表現が正しいかどうかは分からない。けど、さっきから

見ていた光景のお陰で咲良ちゃんはまだエクスクレセンス化していない

ことが分かっていた。

『ああ・・・・絶対に助け出す』

 それは同じ気持ちだった。大切な仲間。家族。どうして見捨てること

ができるだろうか。それは夜月さんも同じ。けっして失いたくなんて無い。

「はい。ですので、提案があります」

『提案?』

「はい」

 両方を助け出すには夜月さんと桜子ちゃんたちだけじゃ無理だ。どう

足掻いてもあの火力には勝てない。ボクでさえも不朽鳥を完全に封じる

なんてできない。だから協力する必要があった。お互いの力を使って

互いに助け合う必要が。

「ボクの氷結結界で咲良さんを封じ込めたいと思います」

 正確にはもう刻限境界なのだけど、このことは夜月さんでさえも知ら

ないことだから、言う必要も無いだろうし、言っても意味がない。

『そんなことをしても根本的な解決には―――』

「なりません。確かにそうです。でも、時間を稼ぐことはくらいはでき

ます。解決策を、打開策を考える時間くらいは、稼げます」

 言ってしまえば、時間を稼ぐことしかできないのだけれど。エクス

クレセンス化が間近の人にとって一秒がどれだけ大切なのか、ボクはそれ

を分かっているつもりだ。

 咲良ちゃんは何としてでも助けたい。それは夜月さんも同じのはずで、

そうなれば行き着く答えは同じものになるはず。

 咲良ちゃんを助けるには足りないのだ。時間が、圧倒的に。

『分かった。それでいこう。どのみち、時間は必要なんだ』

「はい。それで、お願いがあります。咲良さんの火力を下げてくれませ

んか?このままだと火力が強すぎて氷結結界を構成できないんです」

 このままじゃ雪を降らせても咲良ちゃんに到達するどころか炎にさえ

届かない。外炎に溶かされてしまう。それこそもっと離れた場所から広範

囲に覆ってしまえば問題無いんだけど、そんなに力を無駄使いできない。

『了解だ。結界を張るタイミングはそっちに任せる』

 てっきり拒否されるかと思っていた。火力を下げろということは咲良

ちゃんを攻撃して弱らせろということなのだ。仲間を攻撃なんてできない、

と拒否される可能性もあるから説得する必要も考えていたんだけど・・・

必要なかったみたい。

「分かりました。・・・・頑張って、気をつけてくださいね」

 そういって通話を切る。通話を続けながら一歩一歩足を進めていたが

流石に体力がもう限界だ。気力も尽き掛けている。でも、今の夜月さん

との会話で気力が充填された。

 ボクがここで倒れて先へ進めなくなってしまえば夜月さんは死んで

しまう。来ない助けを待ち続けて、たぶん、咲良ちゃんに殺されてしまう。

 それはとても悲しいこと。ボクも、夜月さんも、咲良ちゃんにとっても。

 だから上る。今は二十九階。後一階分だ。どんなに長く感じても後

一階分も上れば三十階に辿り着く。そのあと屋上への出口を探さないと

いけないんだけど―――それを考えるとせっかく充填された気力がもの

凄い勢いで流れ出てしまうから考えないようにしよう。

 重たい足を動かして、ようやく、三十階に辿り着けた。あとは屋上へ

の出口を探すだけ。

 とは言ってもこの階だけでも相当な広さがある。歩いて探せばそれなり

に時間がかかってしまいそうだ。

 ・・・・というか壁に案内図があった。

「そうだよねぇ・・・。商業ビルの中に案内図が無いなんて有り得ない

よねぇ・・・」

 安心感と共に脱力感も襲ってきた。あれだけ探し回る覚悟を決めて

いたのに・・・・。まぁ、よかったことなんだけどね。なんだかなぁ。

 案内図を見て屋上への出口を探す。そもそもあるかどうかさえも

不確かだったがどうやらあるようだ。

 その場所を目指して歩く。ゴールが見えたことで足の動きも少しば

かりか軽くなった。

 少しの階段を上って扉に手をかける。ドアノブを回して開けようとする。

 しかし、扉は開かなかった。

「・・・・・あれ?」

 押しても引いても動かない。ノブは回っているのに扉が動かないのだ。

ノブが回る以上、鍵はかかっていない。それなのに動かないのはなぜ

だろう?まさか、戦闘の余波か何かで歪んでしまったのだろうか?

 それでは開けることができない。

「どうしよ・・・」

 蹴り破る?残念ながらボクにそれだけのキック力は無い。同じ理由で

タックルも却下。DUは建物の中にまでは作用しない。

 そこでふと、扉を見る。どこが歪んでしまっているのか確かめたかった

のだ。

 そして違和感に気付く。何かが違う。普通の扉に見えて、決定的に

何かが間違っている。

「あ・・・!」

 思わず指差してしまった。

 蝶番(ちょうつがい)が無い。

 扉を開け閉めする際に関節のような役割を担う蝶番。それが無いのだ。

しかも扉の端は壁の中に吸い込まれるようにして埋まっている。

「まさか・・・・ね」

 ドアノブに手をかける。もしボクの予想が正しければ―――。

 押して開かないのを確認する。引いても開かないのを確認する。どう

しても動かないのを確認してから―――思い切り扉を横へスライドさせた。

 ガラッ!

 あれだけ頑なに動かなかった扉があっさり開いた。

「・・・・・・」

 夜風に近い風が長い髪の毛を舞い上がらせる。真夏の風だから生暖かい

のだが何故か、冷たく感じた。

 超脱力感。

「―――って、意気消沈してる場合じゃなかった!」

 気合を入れなおして屋上の縁からシティを見下ろす。流石にこの場所

からなら見晴らしがいい。その気になれば見える範囲どこまでも雪を

降らせることができるだろう。

 上を見る。そこには空間を突き破って現れている“未知の欠片”が堂々

と君臨している。時折、心臓のように脈動するクリスタルが生物的に見え

るが、やっぱりどう見ても生き物には見えなかった。だからといって機械

にも見えないけど。

 その下には倒れている何人かの人と壊れた機械がある。あれがこの死

兆星の上層部と呼ばれる人たちであり、壊れている機械こそが彼らが開発

した“未知の欠片”を壊すもの。

 彼らは死人を生み出したものを侮りすぎた。自分たちが観測できず、自

分たちが触れられず、自分たちが生み出せないものに恐怖でも抱いて恐慌

状態になってなりふり構わず攻勢に出たのか。それとも勝てると過信して

強攻したのか。どちらにしろ無謀すぎる。

 一般人ではどんな兵器を使っても強力な死人に勝つことは難しい。それ

が分かっていながらどうして、死人を生み出した存在なんかに牙を剥いた

のだろう。もしかしたら、死人そのものを殺したかったのかもしれない。

もし本当にこの人たちがボクたちを殺そうとしていたのだとしても―――

死んで当然なんて、思えない。偽善と言われればそれまでかもしれない

けれど、人が死んで良かったと思える人間なんて、絶対にいないとは言い

きれないけど、少ないと思う。

 死体から目を逸らす。これ以上無関係なボクが遺体を見続けるのは良く

ないと思う。それに死体なんて見ていて気持ちいいものじゃない。ボク

にできることは遺体を見て冥福を祈ることじゃなくて、目の前にいる救え

る人を救うことだ。

 屋上の縁に座り込んで目を閉じる。瞳の裏に雪が見た光景がリアルタイ

ムで映し出されていく。イメージとしては目を閉じた先に幾つもの画面

があって沢山の映像が映っている感じ。それを全部見ながら頭で判断して

行動に反映させていく。こんな風に考え事をしている今だって助けられ

そうな人を見つけては氷で包み込んで助けている。暴走しそうな人も、

エクスクレセンス化しそうな人も。もうエクスクレセンス化してしまって

手遅れな人も。

 そして最も今、注目しなければならない場所。それを見つけて状況を

見る。

 夜月さんが必死に戦っている。よく見知った人たちが命を賭して仲間

を助けようと戦っている。

 今すぐにでも助けてあげたい。でも、助けてあげられない。助けよう

と雪を降らせても全部溶かされてしまう。

 だから待つことしかできない。絶好のタイミングが絶対に訪れる。そ

の時を待つしかない。

 常光君たちもどこかにいる。もし向こうでの戦いが終わっているなら

夜月さんたちの場所に向かうはず。

 早く無事を確認したかった。無事で、皆を助けるために戦っている

姿を見たかった。でも、目を逸らすわけにはいかない。絶好のタイミング

は一瞬。もし少し目を逸らしたその一瞬でそのタイミングが来たら、もう

二度と来ない。逃してはいけない一瞬の時なんだ。

 “未知の欠片”の真下という危険な場所ということも忘れて、いつ来る

かもわからない瞬間を待ち続けた。

 誰一人として欠けることなく、この戦いを終わらせるために。



柚木の視界は、デルタセントラルシティに降っている雪すべてが目だと思ってください。それで必要な場所に雪を降らせて氷柱を構築して、対象を時間操作が可能な氷の中に閉じ込めます。


ではまた次回。

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