②《ムンドゥス創世大史詩》
第一歌 黄金紀 ― 神々の離宮
はじめに神々ありき。
彼らは虚無に境界を引き、
境界に名を与え、
名に形を与え、
形に命を吹き込んだ。
世界はかくして生まれた。
その名を《ホルトゥス》。
神々の箱庭。
大地は脈打ち、海は胎動し、空は光を宿す。
すべてを貫くものは魔那。
万命の根源、存在の理、力の原初。
神々は十六の光を分かち、
己が影にして分身たる神格を創る。
のちに真精霊と呼ばれる柱なり。
彼らに管理を命じ、
そして枷を課した。
越境するな。
魔那を喰らうな。
力を振るうは魂を燃やすこと。
魔那を枯らすは己を滅ぼすこと。
二万年、世界は神意のままに在った。
やがて神々は言う。
「飽いた」と。
かくして神々は去り、
黄金紀は幕を閉じた。
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第二歌 白銀紀 ― 精霊の離反
主なき王座に座したは十六柱。
彼らは魔那を織り、地を縫い替え、
山を起こし、海を割り、生命を弄んだ。
世界は十六の領域へと裂かれる。
西方。大内海。中央アゼリア。デリーアダ。
インデネンシー。央華。オース。北アメリ。
メソアメリ。南アメリ。モーランデス。
シレベアダ。アフロディア。ズーラシア。マー。
そして失われし一域。
二千年、改変は続いた。
だが一柱、尽きる。
魔那の灯火が消えたのだ。
枷は真実であった。
力は己を蝕む刃であった。
死は彼らにも訪れる。
恐怖は神格をも歪める。
彼らは新たな世界を鋳造する。
魔那溢るる第二の天地を。
そして去った。
ホルトゥスは捨てられた。
ここに管理は終わり、
生命は自由という名の混沌へ堕ちる。
人の祖は精霊の残滓に触れ、
知を得る。
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第三歌 青銅紀 ― 諸族の興亡
世界は歌う。
精霊に近きもの、
獣の牙を持つもの、
血を糧とするもの、
魔を宿すもの。
無数の種が競い、喰らい、交わり、滅びる。
人はその只中にあった。
姿は神に似、力は弱く、
されど知恵は鋭し。
文明は火を起こし、
火は森を焼き、
都市は自然を呑み込む。
鬼は中央アゼリアに塔を築き、
魔はデリーアダを染め、
血はインデネンシーで同族を裂き、
獣は央華で吼え、
人は西方で争った。
純血は薄れ、
混血は増え、
世界は一つの潮流へと収束する。
人を核とする時代へ。
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第四歌 黒鉄紀 ― 人の王座
西方歴、始まる。
暦は時を縛り、
記録は記憶を固定する。
神は戻らず、
精霊も現れず。
立つのは人。
魔も血も獣も鬼も幽も、
すべてを内包し、
混じり合い、
人はムンドゥスの中心に座す。
ここに歴史は真に始まる。




