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第23星話 遊園地の星 後編



 遊園地(レジャーランド)のハイパープールで、はしゃぎまくり遊びまくったエリク、ギルバン、レイラの3人。


 そろそろ食事だ。レストランに行こう、ということになった。


 プールを出て歩く3人。


 急に、警報サイレンが鳴った。巨大な遊園地(レジャーランド)いっぱいに響き渡る大音量のサイレン。


 「なんだ?」


 3人は、中央管理塔を振り返る。遊園地(レジャーランド)の制御システムのある塔だ。その最上階のガラス壁(グラスウォール)に姿を現したのは。


 「あっ!」


 ギルバンとレイラが同時に叫ぶ。



 「お前ら、おとなしくしろ!ここは俺たちが占拠した」


 サイレンが止まり、大声が響き渡る。間違いない。


 「ゴランだ!」


 ギルバンとレイラ。


 間違いなかった。中央管理塔に現れたのは、スキンヘッドの大男、宇宙野盗ゴラン団の首領(ドン)ゴラン。背後には、モヒカンやモシャモシャ長髪の世紀末ルックの手下を従えている。


 ゴラン団は最近、この星で大規模な悪事を働いていたところをギルバンと宇宙警察に踏み込まれ、仲間の半分を逮捕され、残りの首領(ドン)以下の一味は、地下に潜伏していたのである。


 ゴラン団が乗っ取った中央管理塔からの、大音量の場内アナウンス。


 「いいか! お前ら動くんじゃねえぞ。ここの地下にある動力源は、俺たちが抑えている。爆破したら、お前らみんなぶっとんで死ぬぞ。これから部下を下に送る。金目のものを全部よこせ。お宝をいただいたら、俺たちはここからずらかるからな。わかったか。逃げたり抵抗するやつは、容赦なく撃つぞ」


 ゴラン団一味、ガラス壁(グラスウォール)の扉を開け、バルコニーに出てくる。一味は皆、でっかい派手な長銃(ライフル)にバズーカ、ロケットランチャーを持っている。


 ハイパープールの客たちから、悲鳴が上がる。しかし、誰も動けず、その場に立ちすくみ、震えている。



 ギルバンとレイラ、顔を見合わせる。


 「やつら、どこへ逃げたかと思ってたけど、ここに潜伏していたのか」


 「悪事にかけては執念深いですね。でも、ここ、プールなのに。金目のものなんて、みんな持ってきてないと思うんですが」


 「相変わらず、ちょっと抜けてるな」


 ギルバンとレイラ、中央管理塔の下まで歩く。エリクもついていく。



 「おおい、ゴラン」


 ギルバンが、上に叫ぶ。


 「お、その声はギルバンか」


 首領(ドン)ゴランは、下を見下ろして、ニヤリとする。


 「なんという幸運(ラッキー)。お前をここで始末できるのか。大宇宙刑事さんよ。とうとう、お前も終わりということだ。最後に、俺のショーを、たっぷりと楽しんでもらおうじゃないか」


 「馬鹿なことを言うのはよせ。何をやってるんだ。こんなところに立てこもっても無駄だぞ。プールで奪えるのなんて、はした(かね)だ。お前たちは絶対に逃げられない。今すぐ投降するんだ。怪我人を出す事は、許さんぞ」


 「ハッハッハ」


 ゴランは大声で笑う。


 「わかってないのはお前の方だ、ギルバン。俺たちは地下に潜伏した後、この塔に、作業員として潜り込んだのだ。そしてここの重力制御システムを改造して、宇宙船(シャトル)にしたのよ。(かね)を奪うだけ奪ったら、塔がロケットになって、宇宙に大噴射発進ってわけさ。宇宙警察が駆けつけてくる前に、あばよ、さよなら、そういうことだ。おまけに超時空航行(ワープ)装置も取り付けた。ここの巨大重力制御システムのパワーだ。超時空移動(ワープ)防止(フェンス)も、ぶち破れるぜ」


 「なんと」


 ギルバンもさすがに驚いた。


 巨大遊園地(レジャーランド)である。大規模な重力操作を必要とするアトラクションが多数あった。そのために、巨大な重力制御動力炉があったのである。改造すれば、確かに宇宙航行用の(シャトル)になる。超時空航行(ワープ)機能もつくれる。そして、ダリューン星のような大きな星では、超時空航行(ワープ)による不意の襲撃逃亡を防ぐため、超時空移動(ワープ)を妨害阻止する特殊電波を星の周囲に張っているのだが、巨大な重力操作装置があれば、それも破ることができる。宇宙に飛び立って、そのまま超時空移動(ワープ)すれば、もう追いつけない。作業員に変装したゴラン一味、地下で営々と、大それた作業をしていたのであった。


 

 さすがのギルバンも、これには打つ手無し。赤いスカーフを風にたなびかさせている。


 すると。



 ドオオオオオオーン!



 爆発音。中央管理塔の下部が吹っ飛び、大きな穴が開いた。


 なんだ、とみんな振り返る。


 プールサイドの椰子の木の陰から現れたのは、


 「マキト大佐!」


 エリクは、目を丸くする。


 いかつい大男。バミューダパンツ1枚の姿である。肩には、身長の2倍はある巨大な電磁砲(レールガン)を担いでいる。


 「よう、ギルバン、レイラ、それにエリクの嬢ちゃん、みんなお揃いでどうしたんだ? この俺様の活躍をみんなで拍手喝采に来てくれたってことかな?」


 マキト大佐、ウィンクしてみせる。


 大佐は情報部にその人ありと知られる切れ者豪傑であった。ギルバンの大親友である。


 「情報部のお出ましか。どうしたんだ? ゴラン団の動き、突きとめていたのか?」


 「ハッハッハ」


 マキト大佐、豪放に笑う。


 「情報部ってのは地味な仕事でね。星の重要施設を、いつもくまなく探査(モニタリング)してるんだ。あいつら、うまいこと偽装して作業をしてやがったんで、なかなか気づけなかったんだけど、今日になって、この遊園地(レジャーランド)の動力炉に突如異常が起きたのを探知した。これは事故じゃない、人為的な改造だ、てなって、俺たちが、すっ飛んできたってわけよ。俺たちが動く時は、宇宙警察より早いんだぜ。今、俺が撃った一発で、塔の最上部の制御システムと、地下の動力炉の通信は破壊した。奴らにはもう何もできない。後は、ただ、捕まえるだけだね」


 物陰から次々と現れる情報部の精鋭たち。ゴラン団のこもる塔の最上階へ、暗幕弾を撃ち込んでいく。ゴラン団は逃げ場もなく、視界も消された。


 「よーし、突入だ!」


 マキト大佐が叫ぶ。


 建物の陰から、情報部員のエアカーが現れた。


 「私も行くぞ! 私は宇宙警察の者だ。一緒に乗せてってくれ。制圧を手伝う」


 ギルバンは警察手帳を見せて、エアカーに飛び乗る。レイラも続いた。


 エリクは、情報部員たちと2人の刑事の突入を、下で見送っている。


 任せておいても大丈夫だろう。ここで超駆動(オーバードライブ)し、超人スーパータイプの力をみんなに披露することになるのかと、覚悟してたけど、よかった。自分は何もしなくてもいい。さすが情報部と宇宙警察だ。



 塔最上階への突入から15分後。


 首領(ドン)ゴラン以下ゴラン団一味は、全員捕縛された。


 暗幕用ゴーグルをつけたレイラは白ビキニで(メロンサイズ)を激しく揺さぶりながら、手刀で次々と逃げ回るゴラン団一味を叩きのめしていった。突入戦では、1番の活躍であった。


 ゴラン団は、苦心の改造重力制御炉ロケットを使う間もなく、壊滅したのだった。


 ◇



 「ヤレヤレ、今日は完全オフプライベートの予定だったんだけど、結局仕事になっちゃったな」


 ギルバンがぼやく。


 「事件が大宇宙刑事を呼んでいるんです」


 レイラが言う。


 「そういうものかな。そういえば、マキト大佐、」


 ギルバンが、いかつい大男に、声をかける。


 「なんでお前、バミューダパンツなんだ? 仕事できたんだろ?」


 「ここはプールだぜ」


 マキト大佐は、ニヤリとする。筋骨隆々の巨体が、陽にまぶしく映える。



 当然ながら、遊園地(レジャーランド)は、ここで本日閉園となった。客たちは皆、ほっとして帰路につく。


 エリク、ギルバン、レイラも。後処理は情報部に任せ、着替えると、遊園地(レジャーランド)を出る。


 星都のレストランに入る。


 「ここは僕がおごるよ。レイラ君、今日は大活躍だったからね。しっかり食べてくれ」


 ギルバンの言葉に、うら若き乙女レイラは、頬を染める。憧れの人からの言葉。それは何よりも大切な勲章となるのである。



 ◇



 「なんてこった!なんでこうなるんだ?」


 マキト大佐は、怒り狂っている。


 ゴラン団制圧のニュース。トップにでかでかと写っているのは、ギルバンとレイラだった。


 「これは、情報部の手柄だぞ! どうしてこうなる?」


 記者たちの説明は、情報部員たちよりも、ギルバンとレイラの方が、絵になるんで、とのことであった。


 マキト大佐はキリキリとなる。せっかくバミューダパンツ1枚で筋骨隆々の肉体をアピールして、この星のご婦人(レディ)方を虜にしようと思ったのに。



 ◇



 探偵事務所で。


 ギルバンと2人きりになった時、エリクは、思い切って訊いてみた。


 「あの、所長、賞金首のエリクについて、何か分かりましたか?」


 宇宙最凶賞金首のエリクが、この星でギルバンと宇宙の旅人の少女エリクを狙っている。そもそも、そういうカンチガイが原因で、エリクはギルバンに〝保護〟されていたのである。目の前の少女エリクが、宇宙警察が総力を挙げて追っている賞金首エリクであることは、無論、ギルバンは知らない。


 「うーむ」


 ギルバンは、安楽椅子に深々と凭れ、思案する。


 「宇宙警察のデータでも、情報部のデータでも、はっきりとエリクがこの星に来たという証拠は見つかっていない。しかし、私はどうも感じるんだ。エリクがこの星にいる。そして、いつも私を()ている。そんな気がしてならない。しかし、これは、あくまでも刑事の勘だ。私の勘も、たまには外れることがあるのかもしれない」


 「そうですか」


 エリクは、やや寒い笑顔を浮かべる。この刑事の勘は、驚異的だ。しかし、訊いておかなきゃ。


 「あの、賞金首のエリクについて、わかってることって、あるんですか? 私も狙われてるんですよね。やっぱり知っておかなきゃと思って」


 「そうだね。話してもいいだろう。君も関係者だ。これは絶対、他言無用だよ」


 ギルバンは、声をひそめる。エリクは、ドキッとする。いよいよ、宇宙警察の極秘情報、それを教えてもらえるんだ。


 「我々がエリクについてつかんでいること、それは、エリクの姿が、額に(ツノ)が一本。口から火を噴く。目の数は三つ、または十三。それが全てだ」


 「はあ?」


 エリクは、目を大きく見開いて、自分の安楽椅子に、ずるずると沈む。なんだ、こりゃ。そもそもエリクがギルバンに〝保護〟されることに同意したのは、宇宙警察がどこまで賞金首エリクに迫っているか、手の内を知りたいとの考えからだった。でも。


 「要するに、何もつかんでなかったんだ」


 しばらくの間、少女は呆然となっていた。



 ◇



 エリクは、星を発つことにした。なかなか居心地のいい星だったが、いつまでも、一つの星に長居することは、できない。


 ギルバンには、もう賞金首のエリクは、私を追っていないようなので、安全安心なようです、これまでどうもありがとうございました、と言って、別れた。レイラもマキト大佐も宇宙港(ステーション)に見送りに来て、別れを惜しんだ。レイラは、とても晴れやかな顔をして、エリクを抱きしめた。



  ◇



 愛機ストゥールーンで宇宙に飛び立ったエリク。


 久々の無機質な宇宙空間の中で。


 宇宙警察には、とことん、いつまでも、呆れ果てていた。



 ◇



 ゴラン団一味は。


 送られた刑務所星から、皆、脱獄した。さっそく次の悪事に取り掛かる準備を始めている。宇宙のどこかで、また出会うこともあるだろう。



 ◇



 星から星へ。


 エリクの旅は続く。



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