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第21星話 借りてきた猫の返し方の星 1   【本格SFミステリ】 【エリクの名推理】 【18歳美少女刑事レイラ】 【ダリューン星編大宇宙刑事シリーズ3】



 女刑事レイラ。弱冠18歳ながら宇宙警察期待のエリート刑事である。刑事に着任するやたちまちにして手腕を発揮し難事件を解決し、早くも出世街道確実視されている。悪党に容赦なく、特に女性の敵には厳しいとの評判であった。



 「まさか、そんなことが」


 レイラは、動揺していた。頭を悩ませていた。といっても、星の安全を脅かす悪党どものことでもはない


 エリート女刑事レイラの上司、ギルバンのことであった。ギルバンとは大宇宙刑事の異名をとるスーパー刑事である。星域に名を轟かす美男子でもあった。レイラも星の他のご婦人(レディ)同様、ギルバンのことで胸のトキメキを抑えることができない一人だった。


 もちろん、上司と部下の間柄である。職務は職務、そこはそれで、ちゃんとやってる……つもりだったんだけど。


 「ギルバンが一般市民を自宅で保護している。それも17歳の女の子!」


 レイラは激しく動揺する。高なる胸の動悸を抑えることができない。そのメロン(サイズ)(バスト)を抑える切るのは、ただでさえ厄介だったのだが。


 「ギルバンが……まさか、まさか……」


 レイラは、頬を紅潮させている。


 ギルバンは宇宙警察に勤める身でありながら、役所勤めを嫌う勝手気ままな自由人として、大都会星ダリューンの星都に私立探偵事務所を構えることが許されていた。スーパー刑事の特権である。そのギルバンの住宅でもある探偵事務所に、女の子を住まわせているというのだ。


 確かに、ただならぬ事だ。ギルバンは、美女に弱いとの評判だったが、今まで1人の女性にぞっこんになった事は、なかったはずだ。同棲したこともない。なんだかんだ孤高の大宇宙刑事だったのだ。それがいきなり〝保護〟と称して17歳少女との同棲?


 「うう、ありえない!」


 レイラは、頭を抱える。


 いったい何が起きてるんだ。やはり、この目で確かめなければ。レイラは、自分に言い聞かせる。宇宙警察きっての敏腕刑事ギルバンにもし何かのことがあれば。これは全宇宙の安全に関わる問題なのだ。だからこれは、決しておろそかにすることができない問題のだ。ギルバンが少女を保護している件は、当然ながら、厳重な秘密とされていた。星のご婦人(レディ)たちにショックを与えないためである。全女性の憧れの的である美男子ギルバンに彼女ができたなどと言う情報が広まったら、どんな騒動が起きるか分かったものではない。しかし、職務上、上司の秘密を知ったレイラは。


 「これは、宇宙警察始まって以来の非常事態。この件は、自分が解決しなければならない。ギルバンに、まちがいがあってはならない。絶対に」


 もはや完全に私情と公務の混同なのだが、憧れの上司ギルバンの事となると、冷徹無比なエリート女刑事も1人の18歳の乙女となってしまうのであった。そのことに自分では気づいていない。



 ◇



 レイラは、ギルバン私立探偵事務所へと向かった。そこは星都の閑静な住宅街にあった。緑が多く、鳥の囀りが聞こえる。探偵事務所、ギルバンの城はなかなか瀟酒で趣味がよく、ひっそりと佇んでいる。


 レイラは、ここに来る事は滅多にない。基本的には、宇宙警察の仕事で上司と顔を合わせるからからだ。レイラは、職分をきちんと守っていた。胸の想いがどうあれ、上司のプライベートに侵入する事は、これまでずっと慎ましく自重してきた。


 だが、今は。かなりなSランク級の非常事態。もちろんこれはほとんど、レイラの主観的妄想と言うべきなのだが、ともあれ、今は踏み込んでいかねばならない。


 探偵事務所玄関の前で。一呼吸置いたレイラは、呼び鈴を押す。


 

 「はーい」


 扉が開き現れたのは、10代後半の少女。レイラの鋭いまなざしが走る。


 目の前の少女は。小柄で華奢な体。スレンダーで、スラっとした手足。豊かな亜麻色の髪。黒い瞳。青いブラウスに白いラインの入った赤いミニスカート。黒のニーソックス。黒の革靴。いかにも10代少女! な服装(コーデ)。だが。レイラの視線が止まる。少女の左太腿の銀のガーターリング。なんだ、あれは。やや、年齢不相応。蠱惑的な香りを立ち込めさせている。いったい何をアピールしているのだ。大人だと言いたいのか。大人だとして、何をどうしたいのか。まさか、ギルバンとの関係を、この銀のリングで、アピールせんと言うのか。


 水を打ったような冷徹で知られるレイラ、少し頭がのぼせている。いきなりの少女のガーターリングに、かなりガツンとやられたのだ。不覚である。


 

 うん? なんだ? 探偵事務所の来客を前にしたエリクは、やや面食らう。呼び鈴がして扉を開けたら立っていたのは女性。まだかなり若い。10代だろうか。びしっとした身なり。白のブラウスに、グレーのジャケット、グレーのタイトスカートで、ぴったりと身を包んでいる。もっともメロン(サイズ)のその双穹(バスト)は、抑えきれてはいない。端正な顔立ち。長い藍色の髪を後ろで束ねている。


 その水色の瞳は。エリクに釘付けとなっている。すごいまなざしだ。食い入るように見つめてくる。なんだろ、この人。こんな必死なまなざし、すごく久々のような気がする。


 ともあれ、来客なんだ。たじろぎながらも、エリクは笑顔を浮かべる。


 「ギルバン探偵事務所へようこそ。えーっと、ご依頼の方ですか」


 「あなたは?」

 

 レイラの鋭い声が飛ぶ。女刑事は、頬を紅潮させていた。なんだか追及モード。


 「助手のエリクです」


 エリート刑事の眼光に、エリクはさらにたじろぐ。この人はいったい何者なんだろう。可愛いけど、すごい圧だ。


 「あ、今、ギルバン所長はいません。所用で出かけています」


 エリクが付け足す。レイラは一つ頷く。ギルバンがいない。好都合だ。落ち着いてこの子が何者か、追及できる。とにかく、ここまで来たのだ。手ぶらで帰るわけにはいかない。


 レイラは、警察手帳を取り出す。


 「私は宇宙警察の刑事レイラです。ギルバン刑事に会いに行きました。不在でしたら、中で待たせてもらいましょう」


 ああ、なるほど。エリクはやっと理解する。なんだ、刑事か。それでものすごい目つきをしてるんだ。警察の仕事してると、やっぱりこんなになっちゃうんだな。レイラという人、かなり可愛い顔してるけど、悪党を凄ませるのは、なんでもなさそうだ。ん? でもギルバンは〝大宇宙刑事〟だけど、割といつものんびりした顔してるな。警察にも、いろんな人がいるんだろう。


 「さあ、どうぞ、お入り下さい」


 何はともあれ、レイラを案内する。



 宇宙最高額賞金首指名手配犯のエリク。宇宙警察期待のエリート女刑事レイラ。


 2人の少女の、初顔合わせである。




(第21星話 借りてきた猫の返し方の星 2 へ続く)



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