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EX-16:パツパツとフリフリ


 バチン、と何かがユウリのおでこに当たって床に転がった。…これは、ボタン?


「悪ぃ!大丈夫か?」


 視線を戻すとすぐ目の前に褐色の立派な大胸筋があった。いや、確かに服のサイズが合ってないなぁとは思っていたが、胸が大きすぎてボタンが弾け飛ぶって実際に起こる現象なのか。これは採寸をしなかったカイが悪いのか、ラナクのダイナマイトバディが罪深いのか。


「デコ怪我してねーよな」


 ラナクは左手をユウリの頬に添え、右手でユウリの前髪をどかしながら顔を覗き込んだ。…近い。鍛え上げられた筋肉、優しく触れる無骨で大きな手、その体温。赤く揺れる真剣な眼差しは真っ直ぐこちらへ向けられていて、つられて身体が熱くなる。


 しかしユウリがドキドキしたのは束の間、頭上の猫耳が目に入った瞬間に驚くほど冷静になった。やはりどう足掻いても解釈違いである。


「…よし、怪我はねーな。じゃ、こっちの嬢ちゃんは俺が面倒みとくから、ユウリは他の奴らを笑いに行ってやってくれ。じゃーまたな」


 そう言うとラナクはエレノアを片手でひょいっと抱き上げてそそくさと去っていった。他の奴らを笑いに…というのは、まさか。…あまり考えたくない。


「おいおいアレが誇り高い灼竜の姿かぁ?最強の竜としての威厳はどこにいっちまったんだろうなぁ、はーぁ、見ていられねぇよ」


 ユウリの腕の中で魚がぱくぱくしながら何か言っている。よくもまぁその姿で他人の威厳について言及できたものだ。後で鏡をみせてあげよう。



「あ〜〜!ユウリ〜〜!!」


 …この声は、ルッチ。いつものようにハグをされるのだろうと身構えたが、意外にもルッチはユウリに触れることなく適度な距離で止まり、くるくるとターンしてみせた。


「みてみて、メイド服着てみたの!ルッチ可愛いよね!」


 ちょっとばかし残念である。ユウリはもはやおかえりのハグがないと物足りない体になってしまっていた。とはいえそんなことは恥ずかしくて言えようもないので、ひとまず促されるままにルッチのメイド服に目を向ける。


 手の込んだヘッドドレスと猫耳、フリフリのスカート、ダイヤ柄のタイツ、猫尻尾。…似合う。こっちがデフォルトの衣装だと言われたらそのまま信じてしまいそうなくらいに着こなしている。この世界にカメラが無いことが悔やまれるが、カイに相談したら作ってもらえるだろうか。


「かわいい」


 語彙力皆無のユウリが拍手をしながら正直かつ無駄の無いシンプルな感想を述べると、ルッチはご満悦でユウリをぎゅーっと抱きしめた。あぁ、これこれ。


「ね、ユウリもお揃いで着ようよ!そしたらもっと可愛いよ!」


 …え?いや、それはちょっと。かなり、嫌かも。学園祭とかならノリで着れるが、何のイベントもないのに着るのは少々ハードルが高い。ユウリは首を振って断ったがルッチが聞き入れてくれる様子はなく、さらには廊下の奥からメイド服を抱えたラッチがこちらへ向かってくるのが見えた。


 これはまずい。危険を察知したユウリは素早くルッチの腕から抜け出し、身代わりにニルを差し出してその場から逃げ出した。


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