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3-13:決着


「全力で来い!」


 ラナクの言葉を合図にして、戦闘が開始した。"白星の願い"を自分とクロハにかけて、剣を構えてラナクを見据える。自分も戦うとは言ったが、ただがむしゃらに突っ込んでしまえばクロハの邪魔になるだけだ。クロハの動きをしっかり見ながら、呼吸を合わせる必要がある。


 クロハの動きを見る?1秒前の自分はアホか。そんなの無理、速すぎる。側に居たはずのクロハがフッと消えたかと思えば、次の瞬間にはラナクと激しい鍔迫り合いをしていた。一瞬離れて、また打ち合って。何度も何度も繰り返す。クロハの素早く鋭い剣撃と、それを弾き返すラナクの重い剣撃。ちょっとユウリが入っていける雰囲気ではない。


 とはいえやれる事は探せばあるものだ。クロハと少しでも距離が開けばラナクは魔法を撃とうとする。離れた位置からチマチマとそれを阻止するのがユウリの役割だ。

 フィジカル特化のクロハは中遠距離の攻撃を持たないが、その分咄嗟の瞬発力と素早い踏み込み、近距離での戦闘能力はズバ抜けている。物理、魔法と全方位に隙のない万能型のラナクが相手でも、こちらの得意な方策を押し付けていれば勝機があるかもしれない。


 実際、僅かばかりではあるがクロハの方が優勢に見える。未だこれと言う有効打を与えられてこそはいないが、防戦一方で思うように動けないラナクは徐々に苛立ちを募らせて動作が荒くなってきている。


「っ…!!」


 ラナクに生じた一瞬の隙を突いて、クロハがまさに斬り込もうとした時だった。ラナクは一歩後退し、しかし次の瞬間にはクロハの身体が吹き飛ばされていた。そのまま剥き出しの岩盤に激しく衝突し、ガラガラと崩れた岩と共に地面に落ちた。


 金色の鱗に覆われた太く長い尻尾がラナクの後ろで揺れている。尻尾でクロハを薙ぎ払ったようだ。…勝負はついた。だと言うのに、ラナクは血走った目で再び大剣を振り上げ、ぐったりと倒れたまま動かないクロハに向かって走り出そうとしている。


 まさか、トドメを…?青ざめたユウリは剣を投げ捨てて駆け出した。どういうつもりか知らないが、そんなことは絶対にさせない。先にクロハの元に辿り着いたユウリがラナクに立ち塞がった。まずい、勢いで剣を置いてきてしまった。だがもう退けない、両手を広げて目を瞑り、歯を食いしばって衝撃に備える。


 下から引っ張られてユウリが体勢を崩したのと同時、ガキンッと高い音がしてパラパラと小さな砂粒が降ってきた。見上げればユウリのすぐ頭上にラナクの大剣がある。どうやらクロハがユウリの服を引っ張ったことでギリギリ当たらなかった大剣が後ろの岩盤に突き刺さったらしい。怖すぎる。

 ラナクは唖然として少しの間固まっていたが、自分のやったことが信じられないというような顔でフラフラしながら後退った。すでに戦意はなさそうだ。


「ここまでだな。後で王宮へ来い」


 一部始終を黙って見ていた灼竜王はそれだけを言い残して去り、アジェラもチラチラとこちらを振り返りながら竜王の背中を追いかけていった。


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