3-11:背徳スイーツ
「して、客人よ。我が灼竜の一族は弱きを嫌う。この世界とて異邦の者に滅ぼされるのならそれまでよ。我らの力を欲するならば、まずソナタらの強さを示せ」
灼竜王の鋭い眼光がユウリとクロハに向けられる。…怖い。怖いが、臆してはいけない。胸を張って、いざとなったらブン殴る…。必死にそう言い聞かせるユウリと違って、クロハが動じている様子はない。この人感情とかないんか?
「ソナタらに試練を与えよう。明日の正午、ゴダの広場にて待つ。それとお前も来い、ラナク」
…試練、試練か。なるほど"それっぽい"響きだ。むしろ今までどうして試練が無かったのだろうと思うほどに。とはいえ何をさせられるんだろう。クロハは強いから問題ないと思うが、ユウリには自信が無かった。
竜王の間を出ると、ラナクがふぅーと息を吐いた。ラナクも緊張していたのだろうか。
「悪ぃな、うちの親父あんなんで…。何が試練だよ、世界の危機だっつーのによ。馬鹿げてる」
…だったら直接言ってやってほしかった気もするが、言えない気持ちはよくわかる。灼竜王怖すぎる。圧が強い。ラナクを責めるつもりはないし、むしろ気圧されていたのが自分だけでなかったと知り、ユウリは少し気が楽になった。
「試練は明日の昼か…何するつもりか知らねーが、まぁ今日のところは栄養あるもんでも食って早めに休むくらいしかないな…。アンタらも食ってけよ、客間もあるしウチに泊まってけばいい」
それは素晴らしい提案だ。人生の中で王宮に泊まれる日が来るとは思わなかった。クロハも異論はないようだ。ありがたくそうさせてもらおう。
夕食にありえんくらい豪華な食事をいただいて、貸し与えられた客間に戻ってきたユウリはフカフカのベッドに寝転がった。もうお腹いっぱいで動きたくない。外はふざけた熱さだったが、建物の中は涼しくて快適。詳しい説明はよくわからなかったが壁に刻まれた魔術式による効果らしい。最高である。もうここで暮らしたい。
コンコンと誰かが扉を叩いて、ユウリは仕方なく重たい身体を起こした。こんな時間になんだろう。
「うーす。俺、ラナクだけど…開けて良いか?」
ラナク?わざわざ部屋を訪ねてくるなんて急ぎの要件だろうか。ユウリが扉を開けると、ラナクは数種のベリーが乗った可愛らしいケーキを持って立っていた。
「今日デザート無かったろ?甘い物も欲しかったんじゃねーかなと思って作ってきたんだ。1つしか無いからクロハには内緒な?」
なんだと、なんていい人なんだ。お腹はいっぱいだったがデザートとくれば別腹だろう。というか、作った?料理をするとは言っていたがケーキまで作れるとは恐れ入った。
ユウリはラナクを部屋に招き入れて、ケーキを半分こして食べた。優しい甘みとベリーの酸っぱさがちょうどよく、無限に食べられそうだが残念ながらすぐに無くなってしまった。
「はは、そんなうまかった?んな幸せそうな顔されたら作った甲斐あるよ。…明日、がんばろうな」




