[個別エピソード:ルチルとライラ2]後編
「着いたよハニー。さ、目をあけてごらん」
秘密の花園は秘密の場所にあるからと、目隠しをされてお姫様抱っこで連れてこられた。それなりの距離を歩いていた気がするが、ルッチは本当に力持ちだな…竜だからだろうか?
ともあれようやく開放されたユウリが目を開くと、色鮮やかに咲き誇る美しい花々が視界いっぱいに広がっていた。大小様々、色彩豊かな花たちがところ狭しと並び、ツタのあるものは壁を伝って天井まで伸びている。そこはルッチと同じ甘い匂いで満ちた温室だった。
「きれい…」
自然と声が漏れていた。ユウリは花に詳しくなかったが、これは圧巻としか言いようがない。ため息が出るほどに見事な花園だ。どこまでも爛漫なさまは甘く美しく幻想的で…ルッチとよく似ている。
「あは!気に入ってくれた?ユウリが気に入ったならいつでも来ていいよ、場所が分からなくても"瞬転の願い"で来れるでしょ?ここをルッチたち3人の秘密の場所にしよ!」
いつものように背中から抱きついてきたルッチはいつの間にか元の口調に戻っていたが、男装をしているせいか、それとも甘い温室のせいか…なんとなく普段よりもドキドキしてしまう。ルッチの手が少しお腹をなぞっただけで、ユウリは全身が熱くなるのを感じていた。
「あは!ユウリかわいー。独り占めしちゃいたいけど…」
「それはいけないね」
「ラッチ〜邪魔しないでよ」
「先日は君に邪魔をされたからね、仕返しなのだよ」
ラッチ?いつの間にかラッチがいる。いや、元から居たのか?全く気がつかなかった。ラッチはルッチの少し後ろからユウリを覗き込んで微笑んだ。
「ようこそワタシ達の花園へ。また逢えたね、月の乙女よ…」
ラッチの手がユウリの頬に触れる。おそらく離れていた間の記憶を覗き見ているのだろうが、今は火照った肌に触れられることが恥ずかしい。ユウリは逃げ出したい思いだったが、ルッチにがっちりと捕まっているのでそうもいかない。
「…ふむ。ルチル、離してあげたまえ」
「えっやだよ!ユウリはルッチのだもん!」
「つまりワタシのものでもあるね。けれど今ワタシが言いたいのはそういう事ではないのだよ」
ちょっと待ってほしい。ルッチのものになった覚えもなければ、ルッチのものはラッチのものという考え方もちょっとよくわからない。
「この子はとても流されやすい。今ここで月の乙女を籠絡することは容易いかもしれないが、そうしてしまってはアラドイムの未来に関わるだろう」
「んー。後でなら良いってこと?」
「そうだね。全てが終わったら楽しいことをしよう。3人で、ね?」
ラッチはユウリの瞳を覗き込んで妖しく微笑みかけた。甘い匂い…温室に入ってからというもの、頭の中がずっとフワフワしている。ユウリはもはや何を言われているのかも理解できないようで、惚けた顔で見つめ返すことしかできなかった。
「…その顔、たまらないね。やっぱり今…」
「ダメってラッチが言ったんじゃん!!もうそろそろユウリが限界だからエリナたちのとこに戻るよ。あとラッチ、蝕む者倒すの手伝ってね。なるべく早く平和になってもらわないと困るから!」
「ふふ、そうだね。そうしよう」




