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2−16:救済


 異形となったギガブブンビーを物ともせず、クロハは見事に1人で打ち倒してしまった。やはりこの男、とんでもなく強い。


 心配なのはウルムの方だ。ユウリとルッチが落ち着かせようと声をかけ続けているが、かろうじて立っているウルムは視点が定まらず発汗が止まらない。


「ウルム?」


 戻ってきたクロハが声をかけると、ウルムは血走った目でクロハの腕の傷を睨んだ。裂けた服の隙間から見える、ギガブブンビーから受けた小さな傷のまわりは肌が赤黒く変色している。


「あぁ…キリア……。やらなきゃ…俺が、わかってるよ…。"神さまは僕たちを見捨てた、だから代わりに僕たちがみんなを救ってあげるんだ"…そうだよな…、姫……俺、ちゃんとやるから…」


 うわ言のように漏れてくるウルムの言葉はユウリにとって意味のわからないものであったが、ルッチは何かに気付いて血相を変えた。


「まさかウルム…だめっ!!!」


「あああああああああっ!!!!!キリアは俺が"救う"んだああッ…!!!」


 ルッチの制止を振り払って、錯乱したウルムは剣を振りかざす。斬り込んだ先に居るのはクロハだ。


「……」


 ゴスッ。と鈍い音がして、気づけばウルムは剣を落としていた。クロハに無言で手を蹴られて手離したようだ。そりゃそうである、ウルムがクロハに一太刀でも入れられるはずがなく…。


「落ち着け、俺はキリアじゃない」


「ぅ……そっすね…ぉぇ、吐きそっす……」


 とりあえず、いつものウルムに戻ったようだ。

 ウルムが草陰でゲロゲロしている間にルッチが説明してくれた。そういえばルッチはウルムの過去を見たことがあるのだった。


「蝕む者の攻撃を受けるとね、その赤黒い跡が傷口からどんどん身体中に広がって、全身が朽ちた木みたいになって死んじゃうの…。回復薬とか治癒魔法じゃ全然効かなくて、だから朽木化した部分を切り落とすしかないみたい…」


 ルッチは言いにくそうにクロハの顔色をチラチラうかがいながらそう話した。クロハは既に腕の一部が朽木化してしまっている。今はほんの狭い範囲だが、やがてはこれが全身に…そしていずれは…ということか。


「そこでユウリの出番ってわけ」


 重い空気を完全に無視して、ギンネがユウリの前にぴょんと躍り出た。


「ぼくたちのユウリ。きみなら救えるはずだよ、本当の意味でね」


 ギガブブンビーを倒したことでユウリにはまた潤沢な信仰値が集まっていた。厳密にいえばギガブブンビーを倒したのはクロハなのだが、アラドイムの大地は細かいことを気にしないらしい。


 ギンネの言葉にユウリは頷くと、クロハの手を取って願った。悪しきものを取り除いて、どうか健やかな元の姿に戻りますように。"浄化の願い"…。


 柔らかなオレンジ色の光が朽木化した傷口に集まり、光がふっと消える頃には元の肌の色に戻っていた。ついでに回復薬を撒けば傷も治ってすっかり元通りのスベスベ肌である。


 いつの間にか側で見ていたウルムもこれにはニッコリ…ではなく、泣いている。


「なんだよ…居るんじゃないすか、神さまって……は、はは…でも良かったす、ほんとに…クロハさん……」


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