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2−9:エアシト


 暗くなってきたのでその日はケントルの宿で早めに休んで、翌朝エアシトに発つということになった。部屋は2つ取れたので男女で分かれて、ユウリとルッチが同じ部屋。


「ユウリ〜今日も一緒に寝れるね!」


 ルッチはご機嫌だがユウリは首を振った。なぜなら今回はベッドが2つあるからだ、わざわざ一緒に寝る理由がない。


「なんで?ルッチのことキライ…?」


 これにもしっかり首を振る。全くもって嫌いではない。ルッチが加入してからというもの、その天真爛漫さに振り回されることはあるが旅に彩りが生まれたように思う。


「ルッチもユウリのことだーいすき!一緒に寝ようね!」


 いや好きとは言っていないし一緒に寝る理由もないのだが…もはやユウリは意見することを諦め、無抵抗でお姫様抱っこをされてベッドへ運び込まれた。ルッチは意外と力持ちである。


 その晩、ユウリは再び病弱な少女の夢を見た。今日は看護師さんに付き添われてリハビリをしているようだ。どこか痛めているという様子はないが、寝ている時間が長いせいで筋力が弱っているのかもしれない。少女の白い足は細く、フラフラとおぼつかない。


 ドンドンドンと大きな音がして、ユウリは驚いて目を開けた。いつの間にか朝になっていたようだ。


「いつまで寝てるつもりっすかー!もう出発しますよー!」


 扉の向こうでウルムが怒っている。それもそうか、2日連続で寝坊は良くない。ユウリを抱きしめたまま動こうとしないルッチを説得して、2人は急いで部屋をでた。



 大きな橋を渡れば、そこはもうエアシトの大地である。


 ゴチャゴチャしたケントルの街並みとは打って変わり、草木の芽吹く悠然とした大自然が広がっていた。足元には可愛らしい小さな花が咲き誇り、小鳥たちは木の上で果物をつついている。


「女王さまに会いに行くんだったよね?それなら王都はこっちだよー」


 一行はルッチの案内で広い街道を進んだ。街道といっても舗装されている訳ではなく、旅人たちに踏み固められて草が薄くなっているだけの道だ。当然魔物も出る。


 ユウリも戦闘にはすっかり慣れたものだ。もちろん仲間たちの活躍によるところも大きいが、狂ったように跳ね回るウサギのような魔物も、毒の鱗粉を振りまく蝶の魔物も、それほど苦戦はしなかった。

 そうして順調に経験と信仰値を稼いでいたとき、ヴヴンと不快な羽音を鳴らしながらユウリたちの上空をいくつもの影が遮った。


「わ、すげー風きた今。なんすかあのでけぇ虫」


「空のギャング、ブブンビーの群れだよ!空を全部縄張りだと思ってて、飛んでるものをなんでも攻撃しちゃう怖い虫なの」


「飛んでるものをなんでも…?それって、郵便配達の魔道具とかも?」


「うん!そう!なんか最近は被害が多いの!」


「はぁ〜〜!?じゃあ竜王の手紙が届かなかったのってアイツらのせいじゃないっすか!!うっざ!!」


 ウルムは遥か遠くに飛んでいったブブンビーの群れに不敬だなんだとしばらくキレ散らかしていた。


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