2−3:耽美
「誰かさんのせいで時間が遅くなったから宿は1部屋しか取れなかったす。文句言わんでくださいよ?」
…結局、マオは見つけられなかった。ユウリは走り回って探したのだがすぐに迷子になってしまって、たまたま遭遇したルッチのお兄さんに謎に絡まれて、探しに来てくれたルッチとウルムに回収され、今に至る。
「はぁ…」
ソファーに座り、ユウリはため息を漏らした。考えるのは弟のマオのことである。人混みの中で一瞬だけ見た彼はマオ本人だったのか、それとも見間違いか。
マオは元の世界で普通に過ごしているものとばかり思っていたが、もしアラドイムに居るのならやはり危険な旅をしているのだろうか?だとしたら放っておけない、マオに会いたい。
「1人部屋を3人で使うのがそんな気に入んないっすか?あんたのせいっすよ?ねぇ?」
ユウリの浮かない態度を見てウルムは勘違いをしたようで、若干イライラしている。別に部屋の件でため息をついた訳ではないユウリは慌てて首を振った。
「やっぱりラッチにイヤな事されたの?かわいそう〜!」
ルッチはルッチで勘違いをしているようだ。ラッチとはユウリが迷子中に偶然遭遇したルッチの双子の兄ライラの事であるが、特別嫌なことをされたという印象はない。今ルッチがそうしているのと同じように、ただ無遠慮に抱きしめられただけだ。
「ユウリ、イヤな事は忘れてもう寝ちゃお?ベッドが1個しかないけど一緒に寝れば良いよね?ウルムは床ね」
「はぁ〜〜〜?なんで?女尊男卑ってやつすか?そういうのキモいっすよ」
「そういうのよくわかんないけど可愛いルッチとユウリには温かいベッドを譲ってあげたくなるでしょ?ほらみて!にこにこのルッチとおねむのユウリ!こんなに可愛い!」
「うわぁ〜…あんたマジで言ってます?」
2人の言い争いをよそに、ユウリはまさしくおねむであった。考えてみれば今日は朝から長い距離を延々と歩いては戦いを繰り返し、ケントルに着いてからも迷子になってひたすら歩いたのだ。疲労困憊、もう目も開けていられない。ルッチの高めの体温と甘い香りが心地よくて、寝る場所なんてどうでもよかった。もう寝る、今すぐここで。
「あは、寝ちゃったの〜ユウリ?かわいーね」
腕の中でスヤスヤと寝息を立て始めたユウリを、人懐っこいふにゃふにゃの笑顔で見つめるルッチ。その顔を見て、ウルムはふと思う。
「てかあんた…表情は抜けてるけど顔のパーツは兄ちゃんとまるっきり同じっすよね」
「うん?ルッチもラッチも同じくらい可愛いよね」
「確認なんすけど、ルッチさんは女っすよね?」
「あは!触ってみる?」
「どこを!!?じゃなくて!!いや…!は???」
「テンパりすぎ〜!性別なんてどっちだっていーじゃん。ルッチはルッチなんだから!」
「はぁ、そっすね…もういいっすわ…」




