1−17:[1章ボス:ガドレッグ]後半
「グゥゥ…ッ!」
麻痺で鈍化したガドレッグ。筋肉の隆起した双腕を振るうが、その動きはぎこちない。好機である。
ユウリは剣を大きく振りかぶった。狙うは赤く爛れたガドレッグの右腕。ウルムが初撃の火球で火傷を負わせた部位である。上手いこと攻撃が当たれば大ダメージを与えられるはずだ。
「いけぇぇっ!!」
狙い通り、ガドレッグの火傷した腕に月光の剣が深々と突き刺さった。悲痛な叫び声が耳をつんざいて、思わず身を震わせたユウリをガドレッグの巨体は容赦なく振り払う。
「ユウリさんっ!!」
ユウリの身体は地面に打ち付けられる前に、駆け寄ったウルムによって抱きとめられた。ナイスフォローである。
「むっちゃ効いてるっすよ、ナイスっす!もうちょっとっすね!気張ってくっすよ!!」
勝ちが見えてきたからか、ウルムは興奮気味だ。しかしユウリはうっかり剣を手放してしまった。月光の剣はガドレッグの腕に刺さったまま。回収するのは難しそうである。
「ぴかーーーっ」
「え」
戦闘中は基本的に空気と化しているギンネが、珍しく声を発したと思ったらガドレッグの腕…いや、腕に刺さっている剣が激しく発光し、同時にガドレッグの右腕が弾け飛んだ。
「グォアアアアッッ!!!」
「え!なんすか今の!」
「あの剣はぼくの一部だから。光の斬撃が出るのもぼくの力だし、こういうこともできるんだ」
「なるほどっす!?」
なんだかわからないが月光の剣は地面に落ちて回収は容易になった。急に片腕を失ったガドレッグはバランスを崩して尻もちをつく。この機を逃す手はない。
「総攻撃!行くっすよ!!!」
どれだけ苦戦をしても、終わりとは呆気ないものだと思う。事切れて立つことの出来なくなったガドレッグの巨体は、空を睨むように仰向けに倒れてフッと消えた。初めから何も無かったかのように穏やかな風が草原を撫でては去っていく。
「やったっすねユウリさん!俺達やったっす!」
強敵を2人で倒した達成感からだろうか。ウルムは珍しくも無邪気な笑顔でハイタッチを求め、ユウリもそれに応えた。いつの間にやら名前で呼ぶようになっているし、少しは認めてくれたのかもしれない。泥で汚れたウルムの頬をユウリが拭っても、嫌な顔ひとつしなかった。
「っと、忘れるとこだったっす。ピンク頭の子は?無事っすか?」
ウルムが先に様子をみに行っていたギンネに声をかける。ギンネは女の子のヒョコヒョコと無造作にはねた髪の毛をつついているが、女の子は俯いて座り込んだまま動かない。
「うーん、ちょっと元気がないよ。ケガはしていないみたいだけど」
「………った」
「ん?なあに?」
「ルッチはおなかへったのぉーーーー!えーーーーーーーん!」
ルッチ、とはこの子の名前だろうか。えーんとは言うが泣いてはいない。なんならとても元気そうだ。とりあえず無事に助けられて良かった。ちょうどいいし、みんなでお昼ご飯にしよう。




