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1-10:マイペース


 はっきり言って、ユウリは話を聞いていなかった。ただフブキの切迫した眼差しを前に無意識に頷いてしまっていて、いつの間にかこのアラドイムという世界の命運を託されていた。


 後悔はしていない。悲観もしていない。きっとユウリが首を縦に振らずとも…「いいえ」を選択したとしても、「はい」というまで延々と同じ選択肢を出されるだけだろう。これは"そういうもの"だ。


「そうと決まれば、冒険の準備をしなくちゃいけませんねっ!私たちがお手伝いしますよ!」


「なーーんで俺も?すっごい嫌なんすけど」


 いきなり蝕む者の巣窟に突っ込んでも勝てないことはわかりきっているので、まずはユウリが持っているらしい能力を開花させるために旅をすることになった。敵の居城は町のすぐ隣の林の先だというのに…回りくどいが仕方ない。


 冒険に出るための準備はエリナとウルムが手伝ってくれることになっている。一緒に買い物に行って、必要な装備や道具を選んでくれるそうだ。お金はフブキから20000ベグ貰った。多いのか少ないのかわからない。


「えーと、ユウリちゃんは武器は持ってるんですよね、そしたらまずは防具屋さんに行きましょう!…ウルム様ー?逃げないでくださーい」


「はぁ最悪…そいえばあのギンネとかいう犬いないんすか?コイツにむっちゃ懐いてたじゃないすか」


「まっ!失礼ですよ!ギンネ様は犬ではなく偉大なる観測者様なんですから!世界を照らす聖なる獣…伝説の存在をあんな間近で見られるなんて…!これは子々孫々まで語り継がないと…」


「はぁー?まぁ月が獣になるなんておとぎ話だと思ってたから驚きはしたっすけど、見た目はただのデカイ犬にしか…てかエリナさんも魔物とか言って騒いでたじゃないすかー」


「それはっ…まぁ、だって初めて見たんだからしょうがないじゃないですか!ねぇユウリちゃん!」


「…?」


 ユウリは聞いていなかったご様子。

 2人が話す間、道行く人を見ていたのだ。昨晩はひとけのなかった通りだが、今日はそれなりに人がいて…だがその多くが沈んだ表情をしているのが気になった。


「まーた聞いてないじゃんすか。あ、で?その観測者様はどこいったんすか?」


「クロハ様をスカウトするって言ってましたよ、"かわいいユウリを守ってくれる強い仲間がほしい"って」


「はぁぁ?バカか!?ただでさえここの防衛はギリギリなのにクロハさんが居なくなったら持たないっすよ!そしたらまた人が死ぬんだ、またみんなっ…!!」


「お、落ち着いてください…!大きい声でそんなこと言ったら町の人がびっくりしちゃいますからっ」


 びっくりしたのは町の人だけではない。ウルムが突然声を荒らげるものだから、ユウリの目も真ん丸になっている。ウルムはハッとしてすぐに黙ったが、拳を強く握り、泣き出しそうな顔でうつむいてしまった。


「少し…休憩しましょうか?ね?」


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