4話 出遅れねずみの初日 飢えないねずみは群れ得ないのか
「キー!」タッタッタッ
(これで7回目か…… やけに嫌がられてるな)
スモールラットとして過ごしているからか、クラウにも鳴き声からなんとなく言わんとしていることがわかるようだった。
そして起きた頃から、ほかのスモールラットが目の前を横切るたびに一言文句のようなものを伝えていくのだ。
(生きるのに必死な彼らからしたら、だらだら眠ってただけのボンクラはムカつくだろう。
嫌われて孤立してもなんとかなりそうだけれど、ちょっともったいないよなぁ……)
3択からほぼ一択で選んだだけのスモールラットだったが、
「群れる」という種族の生存戦略をみすみす諦める事は惜しく思えて仕方ないクラウであった。
(彼らが気に食わないのは、自分だけエサを探さなくてもいいこと。
自分もエサを探すか、エサ探しをしやすくしてやれば認めてもらえそうなものだけど)
あいにく、クラウもスモールラットの身で、商店からエサを買ってやることは不可能だろう。
「とりあえずは、眠気を振り切ってエサ探しだなぁ」
という結論にいたるのであった。
︙
膨れたお腹を四つ足で支えながら歩くこと数十分。穴の広がる方向へ進むと、いきなり大きな洞窟に当たる。
[ 「イッチ : 東の洞窟」を発見しました ]
広い洞窟に出た途端に流れたログを見て察する。ここは間違いなくオープンなフィールドだ。
つまり今まではスモールラットの巣穴というべきか、個人的なフィールドにいたと見て間違いないだろう。
(コレは広いな。人が3人くらいなら並んで歩けそうだ。)
などと思っていると、どこからか聞き慣れない音が聞こえてきた。
「ギギャッ」「ギィ…」
(うーん、どう考えても敵対NPCの鳴き声だぞ。
あまりにスリリング。この中をエサめがけて走り回るってことなら、動かないやつが気に食わないのもわかるな)
されどそこはひねくれプレイヤー。失うものなどないクラウにとって、ちょっとしたホラーゲーム感覚でのそのそとエサ探しに向かうのであった。
ねずみ以外の初遭遇は何になるのか。
そしてクラウくんにこのまま戦わせていいのか!?
何も決まっていません!
引き続き温かい目で更新を見守ってもらえるとありがたいです〜