1話【私の在り方】
「1年A組…A組……
ここだ!」
ここは、以前通っていた中学よりも遥かに大規模な学園。
正直時間がかかると思ったけど、奇跡的にすぐ自分のクラスを見つけることができた。
上に『1-A』と表記のある教室のドアを開く。
「___あっ」
すると、そこにいる全員と目が合った。
「……」
しかし、すぐに逸らし、友人同士での話を再開した。
「……ねぇ、あの子」
「ルリさんに告白した身の程知らずだ……」
「なぁ、めっちゃ可愛くね?」
「あの銀の……能力者、なんだよね」
普通の話を装って私を話題にしていること、嫌でも分かるくらい何度も見られる。
新学期1日目。
周りが騒いでいる中、私はただぼんやりと窓の外を眺めていた。
ただ単に、窓際の席だったから。
「おはよーリア」
等身大の女子高生と呼ぶに相応しい声色が、近くで私の名前を呼ぶ。
それが知り合いのものだと気付くのに時間はかからなかった。
「おはようございます、リコ。今日は早いんですね」
「去年まで寝坊してたから、夕方寝て朝の4時に起きたー」
「……」
この子は中学からの唯一の友達、リコ。
"元"中学生モデルであり、顔は良いと思う。
輪郭は…流石モデルをやっていただけあって
縦と横の比率が僅かな違いしかなく、バランスが良い。
目は切れ長で、私のような垂れ目でもルリさんのようなツリ目でもない。
鼻はマネキンのように存在感がなく、所謂忘れ鼻。
唇がM字リップなのも、女子が憧れる要素と言えるだろう。
そんな顔立ちに、杏色のショートボブがよく似合っている。
……ここまで読んでお察しだろうけど、私は超がつく程の面食いだ。
だから顔の良い女性が好きだし、当然その他の美しい物にも目がない。
街中の美人は必ずと言っていい程じっと見つめてしまうのだ。
「ねさ、ルリさんに告ったって本当?」
「げっ…もう広まってるんですか」
私は先程、ルリさんに電撃結婚ならぬ電撃告白をした。
彼女が言うに、どうやらそれが所々で広まっているらしい。
「気を付けなよ?ただでさえ私達、『前代未聞の外部受験能力者』として噂になってんだから」
「程々にしまーす」
そう、私達は外部受験で入学した能力者。
普通なら、能力が開花する幼稚園生の間で、小等部から特待生としてこの学園への入学が決まる。
しかし、私達は訳ありで、中学までを普通の学校で過ごしてきた。
「まあ、噂になってる理由はそれだけじゃないんだけどね」
「リアちゃんおはよー!」
4人の男子が、一斉に私達の元へ集まってきた。
「じゃあ私自分のクラス戻るわ」
そっか、リコって男子苦手だもんね。
「はい、また後で」
そう言いながら手を振って、彼女を見送った。
「……ふぅ」
一呼吸置き、私は笑顔で男子軍の方を向いた。
「みなさん、おはようございますっ」
恐らく全読者が誰おま状態でしょう。
実は私、ルリさんや男子の前では『愛嬌ある私』を演じているんです。
私が笑いかけると、男子軍は頬を緩ませた。
ああ、この歳の男って単純で大っ嫌い。
笑いかけるだけで、自分に好意があるって勘違いする馬鹿しかいない。
「さっきいたのリコちゃんだよね?なんかの雑誌に出てた」
「リアちゃんもモデルやればいいのにー」
やらないし。
リコのことを探ろうとするのも鬱陶しい。
「えー?私じゃ身長足らないよー」
…こんな風に振る舞うようになってしまったのは、中学の出来事がきっかけ。
まあ、所謂女子の嫉妬とやらに巻き込まれたのだ。
だから入学後は、男子を味方に付けようと決めていた。
男受けの良い童顔で、愛嬌があって、か弱そうな私なら、周りより大事にされるから。
守ってもらえるから。
私だって本当はこんなことしたくない。
普通に過ごしたかった。
…後者は能力者という肩書きがある以上、不可能だけど。
だけど、悪い事何一つしていない私が傷付くのはもう嫌だった。
"だから今度は、今ある武器を駆使して上手く立ち回ってやる"
ぎゅっと拳を握り締め、心の中で誓った。




