プロローグ
俺の物心がついた時にはもう母親しかいなかった。
トップアイドルから一流の女優として大成した母の生き方が好きだった。
仕事で辛い時も違和感のない笑顔を浮かべていた母の生き方が好きだった。
そんな母は俺に生き方を教えてくれた。
「いい?篤輝、信用する人はちゃんと選ぶのよ。」
「困ったときには演技をするの。その場面がドラマだったら、もしくは映画だったらどういう展開で進むか考えてみるのよ。」
「信用できる人を見つけて、ちゃんと弱音は吐きなさい。」
親譲りの性格のおかげか、目立つことは苦痛にならなかった。
むしろ、みんなを引っ張るリーダー的存在だったと自負しているくらいだ。
天真爛漫な性格で、親の七光りを抜きにしても人気者だった。
中学三年生の冬、
クリスマス、
母が、
首を吊っていたその日までは。
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桜の季節。
本日づけで高校2年生になった俺、東谷篤輝は6:00きっかりに目を覚ましていた。
「今日も朝が来たか...」
気だるげに身体を起こしつつ服を脱ぎ捨て、シャワー室へ。
--パンッ!!!
頬を叩く。
「よしっ!今日も1日頑張るか!」
先程まであった、俺の中に渦巻く負の心を鎮める。
ここからの東谷篤輝は、みんなの人気者で、優しくて、頭も切れる、、、そんな東谷篤輝だ。
ササッと作った目玉焼き定食を食べ、着替えて家を出る準備を整える。
「母さん、今日も行ってきます。」
仏壇に手を合わせて毎朝のルーティーンは終了。
いつも通り、『顔を作って』学校へ。
今日も、偽って、生きていく。