ひまわりのような笑顔の彼女の為に……
残酷なシーンが含まれておりますが、控えめにしておりますので、多少血が苦手な方でも読めると思います。
「何故、実の娘であるカーリーを殺した!」
体中を複数の槍で押さえられ、地面に這いつくばっている騎士の鎧を着た男は、数メートル先で見下している黄金の鎧を着た男に向かって叫んだ。
「ふん、所詮は政略結婚した側室の娘よ。愚かにも儂に、戦争を止めて不毛な殺生をするなと主張しよった」
「帝王よ!平和を求めて何が悪い!」
「キースよ……お前も戦っておるではないか。戦いが始まれば遺恨は残る。遺恨が残れば戦争は始まる。例え儂が戦争を止めても遺恨が再び戦争を起こす。ならば、歯向かうものをすべて殺し、全てが帝国の物になれば良いだけの話だ」
帝国への従属として小国の王子であるキースはカーリーと結婚をする予定だった。だが、帝王によってカーリーは殺され、キースは帝国との戦いを決めた。帝国の喉元にある小国が反旗を翻したため各国で戦っている兵を呼ぶこともできず、帝王は自らの兵で小国との戦いを決めた。
もちろん帝国の兵に小国の兵が敵うこともなく蹂躙され、キースは包囲されて槍で押さえつけられていた。
「お前だけは許せない……」
「貴様はカーリーの婚約者だったから、儂に復讐をしているに過ぎない。戦争の大局も分からん奴はさっさと死ね。兵よ、こいつを処刑せよ!」
帝王の合図により、キースは体中を槍で刺された。流れゆく自身の血を見ながらキースは意識が遠のくのを感じた。だが、消えゆく視界が眩しく光り、キースはその中に太陽のように輝くカーリーの笑顔を見た。
突如キースは目を見開き、止めを刺すための頭を狙った槍を避けた。そして、自身に刺さっている一本の槍を折ると、それを血だらけの手で引き抜いた。上半身を無理矢理起こしたため、背中の槍は貫通した。それにより体が固定されたので、キースは渾身の力を振り絞り手に持っている折れた槍を帝王に向けて投げた。
「ば、馬鹿な……」
放たれた槍は帝王の喉元に突き刺さり、暴君は死んだ。キースもまた、体中に槍がささった状態で血を流し死んでいた。だが、彼の口元はわずかに微笑んでいた。
そして、暴君の死により戦争は止まった。帝国を含め国々の人々は戦う事に疲れていたのだ。皮肉な事に帝国は他の国を保護という名の傘下に入れる事で勢力を拡大し、帝国の基盤は盤石なものとなった。
ただ、帝国内の公園の噴水には二人の石像が置かれるようになった。その二人の石像は寄り添う形で空を見上げていた。まるで、眩しい太陽のもとで平和を祈る様に……
本作品は第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞の応募作品として書かせて頂きました
本作品は企画内でキーワード全部乗せが流行っている中、逆にキーワードを一切本文には使わないでタイトルを表現できるかということをチャレンジしてみました。少しでも面白いと感じて頂けると嬉しいです。
あなたの小説ライフが楽しいものになる事を。
茂木多弥