第八節 患者達のデイナイトケアⅣ
第八節 患者達のデイナイトケアⅣ
ノブ――。
自分のお気に入りな男が居れば、全てお構い無しに猛アタックを仕掛ける、初代ポ〇モンのベ〇リンガに似た生命体――、彼女もまた、精神病棟にお世話になった後、デイナイトケアに通う様になっていた。
ある年の冬――、
利用者kはノブの標的となっていた。利用者kは自分の帽子をデイルームの机に置いて、トイレに行っていた。するとノブは利用者kの帰って来るタイミングで――、
「アッハ!!」
利用者kの帽子をかぶった。
「!!?」
利用者kは言葉を失った。
「っはぁー」
利用者kは深いタメ息をつく。それを目の当たりにしたノブ、帽子を脱いで利用者kに返した。
「ごめんなさい。怒った?」
バッと無言で帽子をノブから奪う利用者k。すぐにデイナイトケアのスタッフに事の本末を伝えた。
「いけませんねぇ」
ノブはスタッフにお叱りを食らった。
数日後――、
ノブは精神病棟に入院した。利用者kはH2に話した。
「ノブが勝手に帽子を奪ったりするんですよー。そんでアイツ、入院したみたいですよ?」
するとH2は返す。
「アイツはダメよぅ。もう狂ってしもうた」
「ぶふッ!」
利用者kは不覚にも、笑った。ノブが入院したところで、利用者kの悩みは絶えない。
SOGA――、
40か50代のBBA。大根の様に肥えた生足を露出する服装で、よくデイナイトケアに通っている。
そんなSOGA。デイナイトケア中に、利用者kに執拗に迫るコトがしばしばあった。
「アナタは私のコトをブスと言えばいいから、楽でいいですね」
「!?」
SOGAは利用者kにそう言い放った。
「そんなコト、誰にも言ってませんよ?(bsだとは思っているけど……)」
「そう?」
SOGAは去って行った。
(一体何だったんだ……?)
利用者kは只々、一人立ち尽くした。
後日――、
デイナイトケア中に、利用者kはジュースを買った。そのジュースを右手に持ち、何の気なしにデイルームを歩いていると――、
「ちょーだい☆」
SOGAが両手を差し出し、買ったジュースを欲してきた。
「嫌です」
利用者kはSOGAの要求を断固拒否した。
「えっ?」
(!!……『えっ?』じゃねーよ)
利用者kは煮え切らない思いをしていた。
数日後、SOGAは精神病棟に入院した。かくして、利用者kは安全の日々を迎えることができた。
しかし、利用者kに対してではなく、デイナイトケアの利用者全体に害を及ぼす存在は多く――、
「ほじほじほじ、ジー……」
ハナクソを素手でほじり、ジーっと見つめる者が――、
ヨモギさんである。
ヨモギさんは中2になってもハナクソを食していたという経歴を持つ奇人変人である。一説によるとハナクソが主食になってるという噂が立っているくらいである。
「ジー……」
30代を迎えたヨモギさん、未だにハナクソを食べるという習慣は治っておらず――、
「キョロ……キョロ……」辺りを見渡すヨモギさん。
瞬間――、
「パクッ」
ヨモギさんは――、
ハナクソを、食った。
常人なら、ハナクソを食べるハズが無い。ハナクソを食べるのは、世界の全てに興味を持った、好奇心溢れる心を持つ、わんぱく幼稚園児くらいだ。しかしヨモギさんは30代なのに食べたのだ。そう、ハナクソを――。そしてヨモギさんはクッキングのプログラムに参加する。
ハナクソをほった、その指で――。