第七節 小説
第七節 小説
20××年、いぶさんは物書きになるコトを志す。
夢に出た、煌びやかにすら見える、宇宙の爆発の様子を、何か書いて伝えなければと思ったからである。そして、出来上がったのが――、
「あぁ、あぁ。流せない」
排便はそうやってトイレを指差す。トイレには汚物(小の方)が残っていた。茶色い。
主人公ツトム、絶句。
何故か精神科の話。しかも、汚物が出てくる。いぶさんは、とある小説公開サイトに、その小説をアップロードした。
小説をアップロードして、数日後――、
「おっ、1000PVか。PVって何だ?」
PVと呼ばれるポイントも入り、コメントも少しだけ送られてきたため、いぶさんは満足気だった。と、一つ気になるコメントが。
良い点:あったら奇跡、これ程につまらない小説は無い。
一言:稚拙でつまらない。人様に見せられる様なモノじゃない。
「あ?」
いぶさんは激怒した。
(誰がやった? 心当たりのある奴は……)
居た!
k氏――、
いぶさんはk氏と面識があり、4年前までは仲が良かった。しかし、Lineで暴言を吐かれ、憤りを感じた為、LineIDをブロック、絶縁していた。
コメント主は○○、k氏から教えてもらったハンドルネームだった。
「ビンゴ!」
翌日、いぶさんはLineグループに事の本末をリプした。
Hは言う。『仲良しだったのにねー、ショックー』
それに対しH2はリプした。『コメント、相手にしない方がいいよ』
更にH2Oは書き込む。『コメント消した方がいいぜ?』
「……」
いぶさんは、k氏から書かれたコメントを消すことにした。
しかし――、
(この恨み、晴らさでおくべきか)
いぶさんは4年ぶりくらいにk氏のLineのブロックを解く。
そして――、
『中出〇失敗できちゃった婚のk氏さぁん!? 嫁との新婚生活はたーのしぃですかぁ?(笑)』
数分後、k氏の既読が付く。
瞬間――、
「はぁーい!! ブロック!!!!」
いぶさんはk氏のLineIDをブロックした。
「アッハハハハハハハ(笑)」
いぶさんはご満悦だったが、攻撃の手を緩めない。
「こーなったら、小説に書いたろ」
いぶさんはルンルン気分でキーボードをたたき始めた。
「カタカタカタカタ……ターン!」
「よっしゃ!」
かくして、『松本という漢Ⅲ、第四節 バレンタイン』が書き上げられた。
しかし――、
「――、――、はい」
k氏はいぶさんの実家に電話を掛けた。いぶさんちのお父さんは珍妙な面持ちでいぶさんを叱った。
「うん……、うん……(涙)」
k氏が一転攻勢したため『松本という漢Ⅲ』にはちょっとした規制が掛かり、表舞台から姿を消すこととなる。
『松本という漢Ⅲ』は、犠牲になったのだ。犠牲の犠牲の犠牲にな――。