第五節 患者達のデイナイトケアⅢ
第五節 患者達のデイナイトケアⅢ
「気に食わんの! むしゃくしゃするの!!」
NAGAMORIの声が轟く。むしゃくしゃするって言っても……と、デイナイトケアのスタッフは困り果てた。
「NAGAMORIさん、クジ引きで決まったことですから……」
どうやら、NAGAMORIはカラオケで2曲目を歌えなかった様だ。
「何で私、歌えんの!?」
NAGAMORIはさらに吠えていた。デイナイトケアのカラオケはお店のカラオケの様にはいかない。限られた時間に、歌えるのは20人程度。当然、何曲も歌えるはずが無く――、
「私、気に食わんの! むしゃくしゃするの!!」
2曲目を歌えなかったNAGAMORIは、現状を不服としていた。
1曲歌えただけでも満足しろよ……わがまま言い過ぎ、と言った声が聞こえてきそうなデイルーム、雰囲気は徐々に悪い方向へ向かって行っていた。
ここで、看護婦さんがNAGAMORIに話し掛ける。
「そんなコト言ってたら、カラオケのプログラム無くなっちゃうよ?」
「それでも気に食わんの! むしゃくしゃするの!!」
「!(コイツ……)」
NAGAMORIは引き下がらない。それに対し、看護婦さんも引き下がる訳にはいかず――、
「プログラム無くなったら、1曲も歌えなくなるよ? それでもいいの」
「うー」
NAGAMORIは渋い顔をしていた。
そして――、
「(埒が明かないなぁ)ちょっと、こっち行こうか」
NAGAMORIは相談室に連れていかれた。
時も場所も同じくして、デイナイトケアにて――、
「にょーんにょーん」
マスクを引っ張る謎の動作をする者が――。
河本である。
河本は、スタッフさんに対して伝えたいことがある様で……
「――、――を、――で、――」
河本は何かを伝えようとしているが、意味不明であった(日本語で表すことすらできない)。それでも親身になってくれるデイナイトのスタッフさん、河本に質問してみる。
「どういうコトでしょうか?」
すると――、
「まっ、僕だけが分かってれば、いっか。レベルが違うんですね」
河本は、舐めた態度をとってきた。煮え切らないスタッフさん。
「それはそうとして、アナタは今何をしなければならないか、分かってますか?」
「そっそっそれは、病気を治すこと!」
河本は――、キョドった。
数日後――、
「オラァ! オラァアア!!」
「! !!」
デイナイトケアの最中、YT がFジュニアの背中を殴っていた。
YT――、
数年前に実の父親を切れたナイフでくし刺しにした為、医療刑務所に入っていた。
Fジュニア――、
被害者。
「コラァ!!」
「何をしているんだぁああ!!」
スタッフさんがそれを見つけ、YTを押さえつけた。
「オラァ? オラァアア!?」
YTは暴れていた。
更に数日後――、
「!」
Fジュニアは入居施設廊下にて、YTに出会った。一歩、また一歩とYTが近寄ってくる。
そして――、
「お前も〇してやろうかぁ?」
グルグルと顔を回しながらその様なセリフを口にするYT。それは天津梅飴の人形の動きにそっくりだった。そしてそれはMYの動きと瓜二つだった様だ。
パワー系は総じて天津梅飴の人形の動きをするのか……? 疑問は絶えない。
堪え切れずにFジュニアは施設のスタッフに告げ口した。
「YTが……」
「あらぁ、大変だったね」
YT、入院決定!!!!
「放せ! は! な! せ!」
YTは精神病棟に入院する際、暴れ回っていた。
時を同じくして――、
「オマエムカツク。ワタシ、ニホンゴワカリマセン。ワタクシハロボットデス。ロボットナノデアナタヲマッサツシマス」
「ゴッ!! ゴッ!! ゴッ!! ゴッ!!」
「あぁ! ぐあ! がぁ! ああぁ!!」
YTも入院する精神病棟で、MYが中国人にボコボコにされていた。
MY、YT。二つのYが交錯するとき、物語は動き出す……!!