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松本という漢Ⅵ  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十七節 いぶさん

第十七節 いぶさん




俺は焦っていた。何かから逃げる様に列車に乗り、福島県の郡山まで来た。金はあった。


郡山に着くと、17時くらいで、すぐにホテルの予約をし、ふかふかのベッドで横になった。


(少し遊ぶか……)


飲み屋やカラオケ店を探し、ホテルを出る。


東北地方だけあって、4月でも外の気候は肌寒かった。ふと、道脇に目をやる。


「!?」


そこには、60台近く、違法駐輪車が綺麗に並べて置いてあった。


どうでもいい、毛ほどにも気にしなくて良い事だ。


しかし――、


(奇麗に並べればいいってもんじゃねぇだろ……!? どうせ違法駐輪、違法は違法だろう!!)


俺はそれが無性に許せなかった。俺は走り出した。そして――、


ガッ! ゴッ!! と言わんばかりに違法駐輪車を蹴って回った。そこへ――、


「何してるんだ!?」


一人の中年男性が俺の胸ぐらを掴み、それを止めに入った。


「これ全部違法駐輪車ですよ!? 誰が片付けるんですか!?」


俺は吠えた。


「ちょっと置いていただけかも知れないだろ!?」


(フッ……勝った)


俺は中年男性を完全に論破した気でいた。60台の自転車が、ちょっと置いていただけ? そんなハズは無い。俺は中年男性を振り切って更に違法駐輪車を蹴りまくった。数十秒後、


「あっちです!」


中年男性は2人警察を連れてきた。それを見て、興奮状態になった俺は、走り出し、違法駐輪車に飛び蹴りを入れてやった。当然の如く2人掛かりで押さえつけられたら、なす術も無く――。


俺は警察にお世話になるコトとなった。拘置所で、一夜を過ごす。照明が天井から照り付けて来て眩しい。


「あの、眩しくて寝られません。消してくれますか?」


「ダメだ」


牢屋とここは、どう違うのだろう? 正方形の間取りに、壁もない便器が、置いてあるだけだった。


長い長い夜が明け、朝が来た。


「どこから来た?」


「……神奈川」


「あの男性のオートバイ、壊れてたけどお前の財布から出した3万円で、手を打ってもらったぞ」


(……勝手なことを。これが警察のすることかよ。3万、お釈迦になっちまった)


「財布にあった、精神科の障害者手帳。2級なんだってな。これから近くの病院に緊急措置入院だ」


「ちょっと待ってくれ、家に帰してもらえないのかよ!?」


「ああ、ダメだ」


っくそ! しくじった!!


入院は中学以来2回目だ。もう無縁と思っていたのに、あのストーカーの所為で、20代でまた入院する事になるとは……。俺は郡山の精神科にぶち込まれた。開口一番の感想が、




くせぇ。




ジジイとババアしか居ねぇ。歯の溶けたジジイとババアが放屁してやがる。病室に向かう前だったか――? 主治医から説明があった


「72時間、ここで面倒を見るから」


3日間、こんなところで生活しなければならねぇのか……。気は重くなる一方だった。


「も゛ォオオ――!!」


「!?」


遠くの病室でBBAが吠えているのが聞こえた。


「お゛ォオオ――!!」


「!!」


かなり遠くの部屋だったが、かなりでかい大声だったので相当やかましい。


「あ゛ァアア――!!」


「るせっ! 黙れや!!」


3日間もこんなところで過ごすとなると、本当に気が重くなった。

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