第十六節 河本の最期
第十六節 河本の最期
“あの”グループホームには悪行超人がいる。
MIYAZAKIと、もう一人――、
河本である。
朝、デイナイトケアに行くバスを待つ時間に、女好き河本は女性のグループホーム利用者に握手を強要してきた。
「あの……手を」
「え?……はぁ」
「仲間になってくれ」
「!!?」
女性利用者はドン引きした。河本は女性の手を強く握った。
「これで、仲間だから」
ジャンプマンガを読み過ぎたのか、河本は現実とフィクションのくべつがついていない様だ。
翌日の朝、女好き河本は、別の女性に話し掛けた。
「僕はドラゴンボー〇が大好きでねぇ。うったおうぜ♪ ドラゴン〇ール♪」
ポカンとする女性。一応助言をしてあげた。
「掴もうぜじゃないのそれ?」
「アレ? そうだったかなぁ。ヴァッハッハ」
河本は高笑いを上げた。
その日、河本はデイナイトケアでドラゴンボ〇ルの塗り絵をした。
「よし! できた。完璧だ」
完成品は――、ブルマが金髪に塗られていた。顔は目までオレンジだった。そして顔が真緑の悟空も居た。やはり河本は患者だった。
後日――、
利用者kはバス内で河本の隣になった。体が密着する形となっていた。が、何かがおかしい。わき腹が偶然当たっていたのだが、利用者kには肋骨が独立して動いている様に感じ取れた。
河本・妖怪説、浮上!!
老師Aは語る。
「ありゃダメよ、人間じゃない。妖怪よ」
……らしい。
さて、河本はグループホームでもデイナイトケアでもパワー全開である。
河本は将来、病院で働きたいらしい。ミイラがミイラ取りになる形を、実現しようとしているのである。デイナイトケアのスタッフに、河本は言う。
「僕はぁ、命を守りたい。僕は諦めません」
「はぁ? 何をですか?」
伝わっていない様だった。河本はグループホームでも、口答えをする。この日は伊藤さん(スタッフ)に口答えしている様子だった。
「今はご飯を食べて」
「あのぅ、伊藤さん」
「いいからご飯を食べて」
「でも、伊藤さん」
「嫌いでもいいからご飯を食べて」
また、次の日にも、食事の前の体操について言われていた。
「反対回しは?」
「もう、した」
「ずっと見てましたよ?」
「……します」
これで病院勤めができるのか――?
河本は字も汚い。と、言うよりは何を書いているのか、誰にも分からない時がある。
デイナイトケアのプログラム参加の理由を、掲示板にこう書いていた。
『ごhhu目肺水を治す』
――。
自分ノートにはこんな文字も書いている。
『鯉木尾ながら書いてとくわからないデtpキmpハナシfrカンゼンニウツヅ』
――、
就職は、諦めた方が……。
そんな河本、自分には絶対の自信を持っている(しかしド緊張するコトが多い)。世間話をしている時、彼は真顔で言った。
「人間、いい人も居れば、悪い人もおる。僕みたいに感じのいい人とか」
!?
その言葉を聞いていたナガトスグル、堪らず河本に突進していった!
「コノヤロぉおお!!!!」
「え?」
河本は俊敏な動きができない。そして突進を避け切れず――、
「ガッ!!」
「ボキン!!」
ナガトスグルが河本のヒザを蹴り、そのヒザは逆方向に曲がった。
河本、骨折!!!!
「え~ん」
河本、死す!!!!




