第十四節 イブキの犬
第十四節 イブキの犬
「ペロ! こっちだよー」
「ハッハッ」
「ペロ、お休みー」
「クゥ……」
「ペロ! ペロペロくすぐったいよぉ」
「ペロペロ」
イブキとペロ(シベリアンハスキー)は、いつも一緒に遊んでいた。
そう、あの事件が起こるまでは――。
ある日、イブキとペロはいつものお散歩コースを散歩していた。
「ペロぉ、今日は何して遊ぼうか?」
「ウォッ! ウォッ!!」
イチョウが立ち並ぶ、並木道を真っすぐ歩いていた、
瞬間――、
「パァン!!」
「キャイン!!」
「!?」
銃声が聞こえた。と、同時にペロの悲痛な鳴き声も――。
「ハッ! ペロ! ペロ!!」
ペロは道に倒れ込んでいた。イチョウの葉っぱで黄色に染まっていた並木道が、次第に赤く染まっていく。
「クゥン……」
ペロの呼吸は段々とか細くなっていった。
「そんな! ペロ、ウソだよね……これはサイリュウムの中身だよね!? サイリュウムって言ってよぉ! ペロぉおお!!!!」
我を失っているイブキ。泣き、崩れる。
その30m後方で――、
「ほっ」
拳銃を構える者が――。銃口の先からは煙が立っている。
拳銃の持ち主は、シゲミ!
一日警察官のシゲミが、拳銃でペロを射殺していたのだ!!!!
数秒前――、
「ペロぉ、今日は何して遊ぼうか?」
「ウォッ! ウォッ!!」
「ん?」
イブキとペロが散歩している様子を、シゲミが発見した。
「オオカミじゃ、殺さんといけん。これ、貸せ」
シゲミは一日警察官だったが、モノホンの警察官から拳銃を奪い――、
「パァン!」
ペロを射殺した。
現在――、
「ペロぉ!! ペロぉおお!!!! ん?」
イブキは自分の後方から、煙臭さを感じ取った。煙の臭いがする方向に、振り向くイブキ。そこには拳銃を持ったオッサン(シゲミ)が居た。
「テメェエエエエエエエエエエエエ!! コノヤロぉおお!!!!」
シゲミに突進していくイブキ。
しかし――、
「パァン……」
「!!?」
銃弾はイブキの1m前方に撃ち込まれた。
「早まるでない、ワシは警察だ」
「!?」
シゲミは銃弾を放った後もイブキの方に向けて銃を構えている。
(チ……チクショウ! 近付けねぇ……)
悔し泣きしそうなイブキを前に、シゲミは続ける。
「ワシは一日警察官じゃ。ワシは警察なのじゃ。そしてワシは……」
「カチャ」
「!?」
シゲミはワッパをかけられた。
「声優のシゲミさん、あなたを動物愛護法違反と公務執行妨害で逮捕します」
「クゥン……」
シゲミは力無く、
鳴いた。
「『クゥン』じゃねぇ!! 泣きたいのはこっちじゃボケぇ――!!!!」
イブキはシゲミに一撃を食らわすべく、突進していった。
「こら! 止めなさい!!」
モノホンの警察は、イブキの首根っこを掴み上げ、それを制止した。
「だってぇ……だってぇ!!」
イブキは号泣していた。フーと、溜め息をついて警察は言った。
「ここで手を出したら、君まで傷害罪で捕まってしまうよ? そんなコトになっても、君の大切なわんちゃんは喜ばないよ?」
「うぅぅ……わーん(涙)」
弱い立場になるのは、いつも被害者だ……。
その日から夜、イブキは涙で枕を濡らす日々が続いた。
「まっくら枕……光」
そして、不幸というモノは連続して起こる様で――、
「ハイ――、ハイ――、えぇ!? 会社が倒産!?」




