表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/442

99ートゲドクゲの卵

 領都の中を、カッポカッポと森に向かって馬を進める。領都内はまだスピードを出せない。

 沿道には領都民達が、出てきている。


 ――クーファル殿下、カッコいい!

 ――ああ! なんて素敵なお姿!

 ――リリアスでんかー!

 ――かーわいいー!

 ――いってらっしゃーい!


 ん? 子供の声じゃねーか。

 子供に可愛いとか言われたくないぜ。

 俺も子供だけどさ。


 調査隊の構成をお知らせしておこう。

 一番先頭に領主隊隊長、アラウィンとアルコース、そして領主隊。

 その後ろにクーファル、ソール、そしてオクソールに乗せてもらっている俺、リュカ。

 俺たちの後ろはレピオスとシェフ。

 それから薬師達が数人。その中にケイアもいる。そしてアスラールとハイク、領主隊副隊長。一番後ろが騎士団だ。


「殿下、人気者ですね!」

「リュカ、面白がってるよね!?」

「ククク……」

「オク、笑わない」

「クハハハ」

「リュカー!」


 あー、手が届いたらくすぐってやるのに!  コチョコチョッてな。


 領都を出たらスピードアップだ。風を切って馬は進む。畑が広がる地域を抜けて暫く走ると森はもう直ぐそこだ。


 森の前で一旦止まって、小休憩を兼ねて虫除けを塗って装備をつける。

 長い手袋にマスク代わりの被り物をつける。その上からローブの帽子を被る。

 

「オク、魔石持ってる?」

「はい、持ってますよ。今日のメンバーは皆持ってます」

「そう。何があるか分からないからね。用心しなきゃ」

「はい。殿下、側を離れない様にして下さい」

「うん。分かってるよ」


「殿下、森に入ったらゆっくり進みます」

「うん、アラ殿」

「何かあれば直ぐに声を掛けて下さい」

「うん、わかった」


 さあ、いよいよ森だ。


 馬がゆっくりと森の中を進む。まだ魔物は出てこない。


「殿下、葉が繁ってますね」


 後ろからレピオスが声を掛けてくる。


「そうだね、あの葉の裏側はどうなのかな?」

「卵ですか?」

「うん」

「リュカ、ついてきてくれるか? 何枚か葉を採取しよう」

「はい、レピオス様」


 レピオスが少し隊列を離れて葉を採取する。葉を容器に入れ、ちゃんと採取場所も記してくれている。

 流石、レピオス。完璧だな。


「殿下、もうトゲドクゲがいそうですか?」

「オク、まだだとは思うけど。念の為にね」


 森に入って1時間位たった頃だろうか。隊列の前で魔物を討伐している音がする。


「オク、もう魔物が出てきてるの?」

「はい。まだ小物ですよ」

「そう」


 そうこうしている内に、シェフも魔物を狩り出した。後ろの騎士団も、少しバラけて討伐している様だ。


「多くなってきたね」

「はい。もう少しで中間位でしょうか」

「うわ……オク、上を見て。蜘蛛の巣が沢山ある」

「そうですね。少し多いですね」

「蜘蛛もグリーンマンティスを食べるよね?」

「はい。トードだけではない様ですね」

「うん、そうだね」


 アスラールが、後ろで風の斬撃を飛ばしている。蜘蛛を退治しているのだろう。

 蜘蛛と言っても、魔物だからきっと大型なんだろうな。


「レピオス、あそこ。あれ見て」


 俺はそれを指さした。大きな葉と茎との間と葉の裏にびっしりと産み付けられた卵だ。


「あれですね。殿下、採取しますか?」

「採取より焼き払いたいな。森の中だと無理だよね。どうしようか?」

「殿下の考案された、虫除けの液体は駄目ですか?」

「あれはかなり薄めてあるからなぁ」

「原液も持ってきていますよ?」

「レピオス、原液だと今度は植物が駄目になっちゃう」

「リリ、切り落として一箇所に集めて、焼いたらどうだい?」

「兄さま、そうですね。オク、止まってもらって」

「はい、分かりました」


 オクが笛を吹くと、隊列が止まった。


「殿下、どうされました?」


 アラウィンがやって来た。


「あそこ、見て下さい。トゲドクゲの卵です」

「あんな所に。凄い数ですね」

「この近辺を探してもらおう。見つけたら切り取って一箇所に集めて焼いてしまおう」

「分かりました。アスラール!」


 後ろからアスラールがやってきた。


「はい! 父上!」


 今の説明を、アスラールに話して指示をしてくれる。


「アスラール、後ろに指示を。私は前で指示を出す。あまり離れ過ぎない様にな」

「はい、父上。分かりました」


 俺は馬から下ろしてもらう。

 卵の付いた葉を集める為に、大きな植物を切り倒したりして焼く場所を作る。風魔法でね、サクサクやるよ。

 リュカも風魔法で切り倒してくれている。オクとシェフは、周りに魔物が出てこないか、警戒してくれている。


「レピオス、こんなもんかなぁ?」

「ええ、殿下。充分かと」

「焼いたら駄目な薬草はないよね?」

「はい、ここら辺はないですね」


 薬師も手伝いながら、薬草がないか確認してくれているが、ケイアはボーッと見つめて立っている。

 念の為、周りの地面を少しだけ盛り上げて、火が燃え移るのを防ぐ。


「殿下、土魔法ですか」

「うん。周りの植物を燃やしたくないからね。出来るだけ森の生態系を壊さない様にしなくちゃ」


 どんどん、卵が付いた葉が重ねられていく。


「多いねー」

「殿下、これが全部孵化していたら、どうなっていた事か」

「アスラ殿、本当ですね」

「殿下、取り敢えずこの近辺ではこれ位で。移動してまた増えてきたら集めましょう」

「そうだね、じゃあ焼くから離れてね。兄さま、お願いします」

「ああ、リリ」


 そう言って皆が距離を取ったのを確認してから、クーファルに魔法で火をつけてもらう。俺はその周りを結界で囲み、火が燃え移らない様にする。

 俺が焼くと思っただろう。違うんだなぁ。クーファルは頭がいいだけでなく、火魔法も得意なんだぜ。

 

 ボワッと一気に火が回る。結界の中で沢山の葉が一気に燃え上がった。


「殿下は無詠唱なのですか?」


 アスラールが聞いてきた。


「うん。一応、心の中で言ってるんだよ」

「殿下は、ら行が言えなかったですもんね」

「リュカ、ら行が言えないとは?」

「アスラール様、殿下が魔法を覚えられたのは3歳の頃なんです。あの頃は、ら行がちゃんと発音できなくて、りゃりりゅりぇりょ、だったんです。ですので、詠唱も正確に発音できなかったのです」


 なんだと!? リュカ、気付いてたのか!? 俺の秘密だったのに! 黒歴史だよ。


「リュカ、知ってたの!?」

「え? 殿下、皆気付いてますよ?」

「ええー! ボク隠してたのにー!」

「あれ、そうなんですか? でも、誰でも気付くと思いますよ?」

「まあ、リリ。そうだね。皆、気づいていたな」


 マジかぁー! そうなのかぁー!

 かなりショックだ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ