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98ー調査に出発

 夕食の時に、付与した魔石を皆に配った。領主隊の皆の分もだ。明日からの調査で、誰も怪我する事なく、帰りたいからな。


「殿下、有難うございます! これは、勿体ないですな」

「アラ殿、人の命には代えられませんよ?」

「殿下、その通りです!」

「……んん〜! シェフ、絶品!」

「殿下、有難うございます!」


 なんと今日の夕食は、松茸とウニのパスタだ。なんて贅沢な!

 焼くだけでも美味しいのに、パスタにたっぷり入れて、おまけにウニもだなんて贅沢の極みだ!

 サラダは新じゃがのポテトサラダ。タルタルソースを作る時に、マヨの作り方をシェフに教えたら、ハマったらしい。


「これは……香りが素晴らしいね。シェフ、とても美味しい」

「クーファル殿下、有難うございます!」


 そうだろ、そうだろ。俺は無言で食べてるけどな。


「本当に、何故今迄気がつかなかったのか」

「父上、気付きませんよ。気をつけて見ないと分かりません」

「アスラール、そうなのか?」

「はい。殿下が気づかなかったら、誰も気付かないままでしょう」

「ほんの数日なのに、殿下は沢山の恵をもたらして下さった」

「リリ……?」

「……はい? 兄さま」

「美味しいかい?」

「はい! 絶品です!」

「黙々と食べているね」

「……はい、美味しいです」

「ハハ、殿下は本当に分からない」

「……?……」

「アルコース殿、リリは天使ですわ」

「フィオン様、美味しいですか?」

「ええ、とても」

「……」

 

 うん、超美味いよな。



 夕食を食べて部屋に戻ってきた。


「殿下、お着替えしましょう」

「うん……」


 満腹だぜ。満腹になると眠気がくる。


「殿下、手を上げて下さい」

「……うん…… 」


 眠い。ボーッと立っていると、ニルがテキパキと着替えさせてくれる。ワハハ、オートモードだ!


「殿下、良いですよ。ベッドに行きますか?」

「うん、ニルおねがい」


 と、俺は両手を出す。ニルが抱っこしてベッドに連れて行ってくれる。


「おやすみなさいませ」

「ニル、おやすみ」




 さあ、調査に出る日がやってきた。これが本当の目的だからな。

 気を引き締めて、張り切って行こう!


「殿下、もう騎士団と領主隊が、前庭に集まってますよ」


 朝食を食べて、着替えを手伝ってくれながら、ニルが言った。


 森の中に調査に入るからね。今日は俺もいつもの皇子様ルックじゃないのさ。

 膝までの短パンじゃないんだよ。長いズボンに、底がしっかりしたハーフブーツ。ブーツの中にズボンを入れる。

 長袖のシンプルなシャツにベストだ。その上から、膝丈のローブを羽織る。

 腰には一応剣帯を巻いていて、小さいマジックバッグと短剣をつけている。マジックバッグの中には、食料と水、ポーション、調査の為に作った道具一式等色々入っている。もちろん、りんごジュースも忘れずに入れている。

 昨日作った結界を付与した魔石は胸のポッケに入れた。


「ニル、今日はお留守番だね」

「はい。姉と一緒にフィオン様の気を紛らせておきます」

「おねがいね」

「はい。殿下、ご無事にお戻り下さい」

「うん、大丈夫だよ」

「油断されませんよう」

「うん、わかった」


 ――コンコン


「殿下、ご用意できましたか?」

「リュカ、うん。行こうか」

「はい。参りましょう」


 ニルとリュカと一緒に邸の前庭に向かう。


「リュカ、あの薬師はどう?」

「ケイアさんですか? 大人しく来て待ってますよ」

「そう、良かった」

「殿下、でもめっちゃ不機嫌ですけどね。しかめっ面してますよ」

「アハハ、多少は仕方ないよ」

「殿下は、オクソール様の馬に乗って頂きます」

「うん。分かった」

「クーファル殿下とソール様、それに俺も殿下のお側におります」

「うん。レピオスは?」

「勿論、殿下のお側に。あ、シェフもです」

「えっ!? シェフも行くの? なんで?」

「シェフの希望です。戦力になりますからね」

「そうなんだ。シェフは、もう何者なのか分からなくなってきたね」

「ククク、本当にそうですね。オクソール様の次に強いですからね」

「えッ!? そうなの!?」

「はい。こちらに着いてから、トーナメント戦をしたのですが、オクソール様の次でした」

「リュカ、シェフがトーナメント戦に参加してる事自体がおかしいよ?」

「アハハ、そうでした。当然の様に参加してましたよ。白いエプロンつけたままで」

「えー、おもしろい! 見たかった!」

「殿下はお昼寝中でしたからね」

「あー、だってお昼寝は大事!」

「はい、ププッ」

「あー、リュカまた笑ってる」


「リリ、待ってたよ」

「兄さま、すみません。お待たせしました」


 皆が集まっている前庭についた。もう勢揃いしている。


「リリ、無事に戻ってきなさい!」

「はい、姉さま!」

「心配だわ。リリは行かなくても良いと思うのだけど」

「姉さま、ボクも確認したいのです。大丈夫です。待っていて下さい」

「ええ、リリ。気をつけてね」

「はい。姉さま」


 パフンとフィオンに抱きつく。


「フィオン様、大丈夫です。我々がお守りします」

「アルコース殿、宜しく頼みます。アルコース殿もご無事でお戻り下さい」

「はい、有難うございます」


 俺はおもむろに二人の手を取って重ねた。


「……! リリ!?」

「リリアス殿下!」

「え? 何? 駄目ですか? ボク何か変な事しました?」


 キョトンと首を傾げてみる。グフフフ。


「もう、リリ。気をつけていってらっしゃい」

「はい、姉さま。行ってきます!」


「殿下、馬に。」

「うん、オクソールお願い」

「リリ、よくやった」

「エヘヘ、兄さま。頑張りました」

「ああ。さぁ、出発しようか」

「はい、兄さま」


 魔物が出る森なんて初めてだ。さあ、出発だ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 前々から、気にはなってたんてすが、王族なのに食事のマナーがなさすぎる。食べながら喋るなんて、ありえない! まぁ、アットホームな王族なら、ありなんだろうが、ンギュや、ゴキュとか、飲み込む音を書…
[良い点] シェフが万能で最高~!! そして五歳児に取り持ってもらう若者、それでええんか~(笑)。事情があるにせよ、この二人進んでるのかしら。 [一言] リリ殿下がパスタを上手にすいこめるところがすご…
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