96ー魔石
「リリ、大丈夫か!?」
「兄さま、大丈夫です。なんともないです」
「ルー様」
「ああ、クーファル。戻ったらゆっくり話すよ。リュカとオクソールも知っておく方がいい」
「はい、ルー様」
周りは心配してくれていたんだが、俺はまた領主隊の隊員達と海辺で遊んでいる。
「キャハハハ! リュカが一番転けてるよ!」
「殿下、ここ歩きにくいんですよ!」
そうだな。なんかスゲーじゃりじゃり言うしな。と、地面をじっと見る。
「リュカ、何か掘る物ない?」
「掘る物ですか? ないですね〜」
「そっか……」
おもむろに俺は波打ち際を手で掘ってみる。
「殿下! 手で……!」
「リュカ! これ! 見て!」
両手にのせてリュカに見せる。
「殿下、これは何ですか?」
「これ、もしかして魔石じゃない?」
「えっ⁉︎ 魔石ですか⁉︎」
周りにいた領主隊の隊員達が、剣の鞘で掘ってみている。
直径数ミリ〜2センチ位の小さな石。深い緑だったり、青だったり、黒だったり。色とりどりの石。波で削られたんだろう。丸くなっている。
「にーさまー! クーファルにーさまー!」
「リリ、どうした!?」
クーファルが駆け寄って来てくれる。俺は両手にのせた石を見せる。
「クーファル殿下、リリアス殿下。どうされました!?」
ウルも走ってやってきた。
「兄さま、これ魔石じゃないですか?」
「魔石? 何でこんな所に……?」
クーファルが手に取ってじっと見る。
「これは…… ルー様!」
バサバサとルーが飛んできた。
「ルー様、見て下さい」
ルーがクーファルの手に止まって、石を見ている。
「これは魔石だな。リリ、よく見つけたな」
「うん、なんかじゃりじゃりいってたから」
「ルー様、何故こんな所に?」
「クーファル、魔物が死んだら魔石を落とす事があるだろう? あれが長い年月をかけて流れついたんじゃないかな? 本当はもっと大きかったんだろう。波で削られて、この大きさになったんだろうね」
「どこにそんなに魔物が…… 」
「クーファル、海だ」
「ルー様、海ですか?」
「ああ。海にも魔物はいるからね。普通は海底に沈んで砂になるんだが。この近海の海流のせいかな?」
「ルー様、クーファル殿下、ここのどこを掘っても出てきます!」
領主隊の皆が、両手にいっぱいの魔石を持って集まって来た。
「これは、凄い。」
「ね! 兄さま、凄いですよね!」
「ああ。何故今まで気づかなかったんだろうな?」
「クーファル殿下。この海岸は何もないので。遠浅なので漁にも出られませんし。あまり人が立ち入らないからではないでしょうか?」
「ウル、なるほどな。しかも、リリみたいに態々掘ったりしないよね」
「はい。殿下、これは領地の収入源になりますよ!」
「ハハハ、ウル、本当だね!」
「リリアス殿下はまた素晴らしい!」
「エヘヘ。ボク偉いですか?」
「ああ、リリ。お手柄だ!」
フィオンとアルコースもやってきた。
「アルコース様、リリアス殿下の大発見ですよ!」
「ウル……これは、父上に報告しなければ!」
「はい!」
「ねえ、兄さま。もしかして、この海の底にも沢山あるんじゃないですか?」
「ああ、そうだな。アルコース殿、調査してみるといい」
「はい、殿下」
「ねえねえ、姉さま」
「リリ、どうしたの?」
「可愛い魔石を見つけたので、姉さまにプレゼントです」
そう言ってフィオンの手に小さな魔石を乗せた。透き通った翠色をした小さな魔石だ。
「まあ……! なんて綺麗な」
「姉さまの瞳の色です」
「リリ、有難う。とっても嬉しいわ!」
「エヘヘ」
「リリアス殿下に先を越されましたね〜」
「アルコース殿、すみません。ボクも姉さまが大好きなので!」
そう言いながら、ポフッとフィオンに抱きついた。
「リリ!」
「エヘヘ!」
チラッとクーファルを見ると、ウインクを返してきた。うん、俺良い仕事したよ。
「領主隊が集めた魔石は持って帰ろう。ウル、頼む」
「はい、アルコース様」
俺とリュカは先に戻ってきた。
「リュカ、これはリュカに」
リュカの瞳の様な、アンバーに輝く小さな魔石。
「殿下、有難うございます!」
「オクは、これね」
「殿下、私もですか? 有難うございます」
「ニルはこれ。お姉さんもね」
「まあ! 殿下、有難うございます! 姉も喜びます!」
オクには黄色掛かった金色の、ニル姉妹にはオクのより濃い色の金色の小さな魔石。
あと、父と母と兄弟の分とレピオスにシェフの分も、瞳や髪色と同じ様な魔石を拾った。
「アルコース殿、アラ殿とアスラ殿と夫人の分の魔石も探しませんか?」
「リリアス殿下、有難うございます。本当にお優しい」
「リリ、兄さまにはないのかい?」
「もちろん、ありますよ。えっと、兄さまはこれです」
俺は小さな手に握っていた魔石の中から、蒼色の魔石を出した。
「こっちはソールの分です。はい」
ソールにもマロン色の小さな魔石を手渡した。
「殿下、私にまで。有難うございます。大事にします」
「エヘヘ」
「これはリリ、良いアイデアだね。アクセサリーや、剣の鞘の飾り等にしたら良いかも。自分の色を選んで付けたくなる」
「兄さま、小さいですけどね」
「兄上、女性なら髪飾りにつけるのも良いですわ」
「クーファル。小さくても魔石だから、魔法付与できるよ」
「ルー様、そうですね。リリ、フィオンの魔石に防御の付与は出来るかい?」
「え、兄さま。ボクやった事ないです」
「リリ、前に教えたろう?」
「ルー、そうだっけ?」
「リリ、邸に戻ったら復習だね」
「はーい」
「じゃあ、皆せっかくだけど一度回収するよ。リリに魔法付与してもらおう」
「ええー、ボクが全部ですかー?」
「リリ、良い練習になるさ」
「はーい。兄さま」
折角、気分良くみんなにプレゼントしたのにさ。超嬉しがって配ったのにさぁ。回収だよ。クーファルは時々スパルタになる……