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93ー遠出

「殿下、おはよう御座います」

「うん……ニル、おはよう……んん〜」


 ベッドの中で伸びをする。ヨイショとベッドをおりて顔を洗う。

 ニルが服を用意して待っている。


「殿下、今日は遠乗りなさるとか」

「うん。フィオン姉さまも一緒だよ」

「私もご一緒しますので」

「そうなの? ニル、馬乗れるの?」

「はい、少しは。殿下、皇族付きの者は皆一通りできますよ」

「あー、そうだった」

「シェフも行きたがっていたのですが、今日はご一緒出来ないと」

「そう、今日はシェフ、先生なんだよ」

「先生ですか?」

「うん、街の人達にお料理を教えるんだ」

「まあ、そうですか」

「うん、凄いよねー」

「シェフは、お弁当をご用意しておくので、私に持って行く様に言われました」

「そうなんだ」

「では、食堂に参りましょう」

「はーい」



 朝食を終えて、領主隊が集まっている場所にニルとリュカと向かう。


「殿下、領主隊の皆が楽しみにしてましたよ」

「リュカ、そう? どこに行くんだろ?」

「さあ? とにかく盛り上がってました。殿下をお乗せする順番をくじ引きで決めてましたよ」

「えー……!」

「まあ、オクソール様が阻止しましたけどね」

「アハハ、そうなんだ」

「はい、クーファル殿下とオクソール様がお乗せするそうです」

「もしかして、だから今日は兄さまも一緒なの?」

「殿下、それしかないじゃないですか」


 そうか……知らなかったよ。

 クーファルお前もか。クーファルは時々過保護になる。



「殿下、おはよう御座います!」

「ウル隊長、今日はよろしくお願いします!」


 俺は領主隊の集合場所に向かっている。


「此方こそ、宜しくお願いします。もう皆集まってますよ」

「今日はどこに行くのですか?」

「領地に入った時とは、反対側の海沿いに行きます。昼過ぎまでしか現れない海の道があるのです。綺麗ですよ」

「凄い、そんなのがあるんだ!?」

「ええ、海も港にはなっていないのですが、鮮やかな青でとても綺麗です。そこで、シェフのお弁当を食べましょう」

「楽しみです!」


 ――リリアス殿下! おはようございます!

 ――殿下ー!

 ――おはようございます!


 領主隊の皆が声を掛けてくれる。


「おはようございまーす! 今日はよろしくおねがいしまーす!」


 俺は大きな声で領主隊の皆に言った。


 ――任せて下さい!

 ――殿下! こちらこそ!


 皆、いい笑顔だ。

 嬉しいねー! ワクワクしてくるぜ!


「リリ、皆大騒ぎだよ」

「本当に、リリは人気者ね」

「兄さま、姉さま! よろしくおねがいします!」

「リリ、行きの半分は兄さまが乗せて走るよ」

「そうなんですか? よろしくおねがいします!」

「ああ、リリと遠出なんて初めてだね」

「はい! 兄さま! 楽しみです!」

「行きの残り半分は、私がお乗せします」

「隊長、よろしくお願いします!」

「リリアス殿下はお元気ですね」

「アルコース殿、よろしくお願いします!」

「こちらこそ、宜しくお願いします」

「姉さま、無理せずにアルコース殿を頼って下さいね!」

「リリ、大丈夫よ。姉さまだって乗れるんだから」

「ハハハ、少しは頼って下さい、フィオン様」

「まあ、アルコース殿。宜しくお願いします」

「はい、喜んで!」


 お、いい感じじゃねーか? フィオンよ。頑張れ!


「リリ、また悪い顔になってるよ」

「兄さま、ひどいです」

「ハハハ、まあ、無理しない様にね。はしゃぎ過ぎない様に」

「はい、兄さま」

「では、皆様。参りましょう」



「兄さま、とっても綺麗です!」

「ああ、リリ。素晴らしいね」


 俺はクーファルの馬に乗せてもらっている。直ぐ後ろに側近のソールがいる。

 街の中を抜けて、海岸線に出た。街の中は、ゆっくりカッポカッポ進んでいたが、街を出てやっと少し風を感じれる速さになった。


「兄さま、平和ですねー!」

「ああ、こうしていればな」

「そうでした」

「ハハハ。まあ、どこでも少し位は色々あるさ」

「じゃあ、うちもあるのですか?」

「そうだね。うちは兄上の婚姻がまだ決まってないからね」

「あー、そうでした。でもクーファル兄さまもです」

「私は兄上が決まってからだね」

「そうですか。婚約者もいないのですか?」

「あぁ、いたんだが。色々あってね」

「そうなのですか?」

「ああ。リリが気にする事じゃないよ」

「あー、またボクですか?」

「ハハハ、違うよ。馬鹿な大人が悪いんだ」

「あー、なるほど」

「リリ、そんな事より今はこの美しい景色を堪能する方がいいと思うよ」

「……そうですね。兄さま」


 俺が赤ん坊の頃から狙われてきた事が、3歳の時の事件をきっかけに色々明るみに出た。

 帝都民からは、邸の表門にゴミを置くと言う無言の通報が。

 同じ貴族同士でも、足の引っ張り合いがあったりした。

 その結果、数人の貴族が爵位剥奪の上、国外追放になっていた。その中に、高位貴族も含まれていた。

 多分、兄達の婚約者の家もあったのだろう。

 あれから、誰が見ているのか分からないと思っているのか、それともセティの調査部隊が、目を光らせているのかは知らないが、大きな事件は起きていない。

 お陰で俺は平和に暮らせている。

 普通、皇子2人が……しかもフレイは皇太子だ。そんな立場の兄達の婚約者がいないなんて有り得ない。



 海沿いの道を暫く走ると、また少し道が海から外れて行くが、そのまま、道を進む。

 もう、周りに家はない。畑が続いていて、もう少し走ると海側には畑もなくなるそうだ。


「兄さま、白い岩が増えてきましたね」

「ああ、あの岩を砕いて混ぜて防御壁を作ったそうだよ」

「石灰岩でしょうか?」

「リリ、よく知ってるね。城にある資料を読んだかな?」

「それもですが、アラ殿にも教えてもらいました」


 嘘、前世の知識だ。


「そうか、リリは賢いな」

「兄さま程の知識はありません。兄さまはなんでも知ってるじゃないですか」

「そんな事はないさ」

「ボクが知っている中で、兄さまが一番です!」

「そうかい? それは嬉しいね。ほら、見えてきた。あの草原で少し休憩だ」


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