表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/437

80ー荒療治

「……ゴクンゴク……」


 昼寝の後のりんごジュースは美味いぜ。

 いつも美味いけどな。

 味覚は今の身体に引っ張られてるよな。

 りんごジュース大好きだし。前世はどうだったか覚えてないけど。


「殿下、レピオス様とオクソール様、リュカは直ぐに来られるそうです」

「うん、分かった」

「……ふわぁ~……アフ……」

「あら、まだ眠いですか?」

「ううん。ちょっと気疲れ?」

「薬師の件ですか?」

「まぁ、ね……うん」


 ――コンコン


 ニルがドアを開けた。レピオス達が来た。


「殿下、クーファル殿下も直ぐに来る様にと仰ってます」

「そう、ニルありがとう。ちょうどいいや。レピオス、オク、リュカ行こう」

「はい、殿下」

「殿下、私達もですか?」

「オク、当たり前じゃない」




「リリ、どうしたんだ?」

「兄さま、ご相談なのです。アラ殿にお話する前に、兄さまに聞いて頂こうと思って」


 クーファルの部屋には、クーファルと側近のソールがいた。

 俺は薬師達の話をした。


「私も同じ事を聞きました」

「レピオス、そうなの?」

「ええ、殿下。それと、彼女の性格でしょうが言葉が少しきつい様ですね」

「ああ、それは領主隊でも言われています」

「え? オク、そうなの?」

「はい、忘れておいて偉そうだと」

「えぇ~……」

「殿下の件で弾みがついたと言うか……」

「リュカ、なんか表現が変。ズレてる」

「え? 殿下、そうですか?」

「うん。リュカ時々あるよね。ニルの天然と似てる」

「「……!! 」」


 なんでニルと2人でガーン!! て顔してんの?


「ククク……」

「オク、笑ってるけどオクもだよ?」

「……!! 」


 また、オクまでやめて。その顔は。


「何より忘れるのは良くないね」

「兄さま、そうなんです。あってはならない事だと思います」

「そうだね、城だと減俸処分だね」


 減俸か……それもいいなぁ。


「リリは何か考えがあるんだろ?」

「はい、兄さま。荒療治なんですが。領地の現状と、命の価値を分かってほしいので」

「どうするんだい?」


 俺はクーファルに考えを話した。


「……うん、確かに荒療治だね。悪くはないけど、邪魔にならないかな? オクソールどうかな?」

「薬師の1人位どうにでもなります」


 まあ、オクソールったら! このイケメン!


「レピオスはどう思う?」

「はい、クーファル殿下。今迄の意識を変えるのは、そう簡単にできる事ではありません。リリアス殿下が仰る位の事は、必要なのではないかと思います。

 最初は調査ですし、他の薬師も同行します。そう危険もないでしょう」

「そうか」

「兄さま。兄さまはどう思われますか?」

「私かい? 私なら……そうだね、有無を言わせないかな。忘れるなんて、職務怠慢だよ。いくら知識があっても、私ならいらない」


 うん、俺には優しいから忘れてたけど、クーファルはそんな奴だった。

 そうだ、王国に乗り込んで黙らせた奴だもんな。


「じゃあ、ソール。辺境伯の都合を聞いてきてくれるかな?」

「はい、畏まりました」


 ん? あれ? 今ニルと目配せした?

 なんだよ、意味深だな。


「ニル、もしかして……また?」

「え? 殿下、また? ですか?」


 もう、やだこの子! 本当やだ!


「え? 何? 兄さまは知ってたのですか?」

「ん? リリ、何かな?」

「兄さま、ソールとニルです!」

「ああ、まぁね。ソールはちゃんと話すからね」

「ほら。ニル、聞いた? ちゃんと話すって!」

「殿下、それはまた後で」

「もう! ニルて本当そういうとこあるよね!」


「殿下、すぐに来られる様にと」

「ソール、有難う。じゃあ、リリ、皆も行こうか」


 俺、思わずソールをじっと見ちゃったよ。

 俺の大事なニルに手を出すなんて!

 チャラく見えるけど、手も早いのかよ! 


「リリアス殿下、どうされました?」

「ソール、なんでもない! ニルはボクには何も言ってくれないから!」

「え? 殿下?」

「ソールいいの。また後でニルに聞くから」

「ハハハ、リリはヤキモチかい?」

「兄さま!」

「さ、行くよ」

「はい……もう!」


 ニルはまた大きいのをやらかしたよ。



「クーファル殿下、リリアス殿下どうされました?」


 アラウィンの執務室だ。

 部屋にはアラウィンと側近だけだ。


「辺境伯、例の薬師の事で提案があるのだが」 

「クーファル殿下、ケイアの事でしょうか?」

「ああ。調査に彼女を同行させよう」 

「殿下、それは……理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」


 アラウィンが驚いている。だよな、普通は驚くよな。


「辺境伯、彼女がどう思われているか、知らない筈はないと思ったのだが?」

「クーファル殿下、どうとは……?」

「本当に知らないと? それは、私には信じられないね」

「クーファル殿下」


 駄目だよ。クーファルの目は誤魔化せないさ。


「良いかな? あなたはこの地で領民の、いや、帝国民の生活を、命を守っておられると、私は信じている。今回の件を放っておいて良いはずがない。分かるか?」

「殿下……申し訳ございません。私の甘えでございました」

「やはり、気付いていたか」


 クーファル怖い。絶対に敵にまわしたくないタイプだ。

 俺なら、当たり障りなく提案て形で話するね。

 クーファルは直球だもんな。


「あれは、ケイアは、私の父の弟の忘れ形見なのです。子供の頃に、父親を魔物に殺されました。私の父は、その事を死ぬまで悔やんでおりました。もっと早くに、魔物の動きに気付けていたら、ケイアの両親は殺されることはなかったと。それを私はいつの間にか負い目に感じておりました。それが間違っていたのです。不甲斐ないことでございます」

「魔物に殺されたとは?」

「殿下はご存知ありませんか? 30年前のスタンピードを」


 スタンピード……俺が生まれる前の出来事だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ