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75ーじゃがいも

「殿下、こちらにいらっしゃいましたか」


 今話していた張本人のアスラールが前から側近と一緒にやってきた。


「アスラ殿。調薬室に行ってました」

「そうでしたか。殿下、ではこの後はどうされますか?」

「特になにもありません」

「では、参りましょう。殿下の知恵をお借りしたいのです」

「え? ボクは何も出来ないと思いますよ?」

「まあ、取り敢えず行きましょう」


 そう言ってアスラールはニコッと笑う。


 アスラールに連れてこられたのが、畑だった。

 もしかして、昨日の事で俺は何でも知ってるとか思われてないよな?

 知らないぞ。俺は一般人だからな。


「殿下、何かお分かりになりますか?」


 そんな事言われてもな、分かる訳ないぜ。 


「いえ、ボクには……て、シェフ!? 」


 まただよ。またシェフだよ。

 本当に何やってんだよ。


「殿下! こんな所でどうされました?」

「シェフこそ、何してんの?」

「私は野菜の収穫ですよ。ほら、立派でしょう? 旬の野菜は栄養価も高いですからね」


 そう言って手に持っていた、さつまいもを見せる。本当に立派だ。


「本当だ。凄い立派だね。さつまいもとりんごのパイは大好き!」

「パイですか! 早速作ってみましょう!」

「本当? 楽しみ〜!」

「殿下、こちらに。」


 あ、アスラールの事忘れてたぜ。


「シェフ、じゃあね〜!」

「はい! 殿下!」


「アスラ殿、すみません。またシェフがいたので」

「ええ、彼は意欲的に一日中何やらしている様ですよ。うちの料理人達も、一緒に色々試しているそうです」

「そうなんですか? 仲良くしてくれて良かったです」

「心配ご無用ですね。殿下、こちらの野菜は知ってますか?」


 そう言いながら、アスラールは足元の野菜を引っ張って抜いた。

 これは、知ってるも何も超メジャーじゃん。シチューにも入ってるし。


「アスラ殿、じゃがいもですよね?」

「ええ、その通りです。珍しくもない野菜です」

「そうですね。シチューにも入ってるし。じゃがいもが何か?」

「初代辺境伯の、日記が少し残っているのですが、そこにじゃがいもが出てくるのです。その初代達のお陰で、じゃがいもが食べられる様になったのです。それまでは、毒があると思われていて、食べていなかったそうです」

「じゃがいもが?」

「ええ。もちろん今はそんな事はありませんよ。ちゃんと芽をとって皆普通に食べてます。しかしその初代達が食べたであろう料理法で、分からないものがあるのです。

 日記にはとても美味しいとあるのですよ。手が止まらないと」


 なんだそれ? じゃがいもでそこまで思うか?


「レシピは何も残ってないんですか?」

「そうなんです。ただ、ポテトとだけしか」

「ポテト?」


 じゃがいもでポテトと言えば、ポテサラ? ポテトフライ? それともポテチ?

 でも、手が止まらないんだよな?

 じゃあポテサラは消えるか? 俺はポテサラも好きだよ。


「アスラ殿、もしかして油で揚げるのかな?」

「殿下、油でですか?」

「はい。その様な事も残ってませんか?」

「残念ながら。なにしろ630年前の物ですから」

「630年!? 」

「殿下、帝国が建国されてから630年ですよ?」


 そうだったわ。俺の祖父である前皇帝は54歳で亡くなって、父が後を継いだんだ。第24代皇帝だ。


「そうでした」

「殿下が思っておられる調理法は、今帝国にありますか?」

「どうでしょう……? シェフはまだいるかな?」


 辺りを見渡した。お、いたいた。

 まだ嬉しそうに収穫してるよ。


「シェフー! シェーフー!! ちょっと来てー!」


 シェフが気付いて、ビュン! と飛んで来た。


「はい! 殿下、どうされました!? 」

「シェフ、あのね。じゃがいもだけど、油で揚げたりする?」

「じゃがいもを油でですか? いえ、ありませんね。」


 よし! じゃあポテトと言えば、あれだ!


「じゃあ、シェフ。ちょっと付き合って!」

「はい! 殿下!」

「アスラ殿、じゃがいも持って調理場に行きましょう! リュカ、じゃがいも持ってきて!」

「え? じゃがいも!?  待って下さい! 殿下!」


 アスラールとリュカが、じゃがいもを持って追いかけてくる。

 その後から側近や畑にいた使用人達もじゃがいもを持って走ってくる。

 ブハハ! めっちゃ、じゃがいも持ってる!

 みんな昨日の事があるから分かってるんだ。

 なんでじゃがいもを食べれるのが伝わっていて、調理法が伝わってないんだよ!?


 調理場にやってきた。昨日の事があるから、俺達が入って行っても料理人達はあまり驚かない。

 それよりも、興味津々だ。


「殿下、何を用意しますか?」

「揚げられる様に、油をたっぷり用意して温めておいてほしいな」


 ――了解です! こっちで用意しておきます!


 どこからか、知らない料理人が返事をしてくれる。凄いな!


「じゃあ、シェフ。じゃがいもを切って!」

「殿下、どう切ります?」

「あのね、よく洗って皮付きのままでね…………」


 俺は説明をして、シェフや数人の料理人が切って、別の料理人が揚げて。

 めっちゃ連携できてるじゃんか! いい感じだな! 


「それにね、パラパラと塩を振って出来上がり! 食べよう!」


 出来上がったのは、フライドポテトだ。

 マッ○にある様な細いのではなくて、じゃがいもをくし形に切って揚げた、ホクホク感のあるやつだ。


「殿下、これだけですか?」

「うん、シェフそうだよ! あーん……ハフッハフッ! おいしー! アスラ殿も食べて! アスラ殿が食べないと、みんな遠慮して食べないから! 食べて!」

「は、はい。殿下。では、……ハフッ、美味い!」

「みんな、食べて! どんどん揚げて! みんなで食べよう!」

「殿下、またですね!」

「リュカ、いいから食べて! 美味しいよ! 新じゃがだからめっちゃ美味しい!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] フライドポテトは、魅惑。 香しく、そこはかとなく魔性を持つ。 讃えよ«٩(*´ ꒳ `*)۶»♬︎ (ง ˙-˙ )งグッ♬︎ジョブ«٩(*´ ꒳ `*)۶»♬︎
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