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73ー味覚

 俺は、今いる場所より少し奥の方を見て驚いた!

 超ラッキーだ! 異世界にもあるんだな!


「アスラ殿! あれ! あれっ!!」


 俺は思わず、隣にいるアスラの服を引っ張りながら指差した! 


「え? 殿下、どれですか?」


 俺は指さした木に向かって走る!

 ダッシュだ! マジか!?  超嬉しいよ! めっちゃテンション上がるぜ!

 スーパーでも、買ったら高いんだよ! 店で食べたらもっと高いんだ!


「殿下、危ないです! 斜面なので気をつけて下さい!」

「アスラ殿! これ!!」


 俺は木の根元を指差す。


「ああ、きのこですね」


 なんだとー!? きのこはきのこだけど、こいつは超特別だぜ!!

 俺は小さい指で、そのきのこを採って嗅いでみる。


「……やっぱり!」

「殿下?」

「アスラ殿、匂ってみてください!」


 俺は採ったきのこをアスラールに近づける。


「これは! とても香りが……!!」

「でしょ! でしょ! これは松茸ですよ! 凄い!! 持って帰りましょう!! 」

「これも美味しいのですか?」

「はい! もちろんです! ひゃ〜!今日はスゴイです!!」


 いやぁ〜、マジでテンション上がるわー!


「ハッハッハッハッ! 殿下! 凄いですね! 今迄知らずに捨ててましたよ! 勿体ない事してましたね?」

「えぇー! 捨ててたんですか!? ふぉ〜! なんてもったいないことを!!」

「ハッハッハッハッ!」

「殿下! 鼻の頭に土がついてますよ!」

「リュカ! キャハハハ!!」

「殿下! 笑いすぎです! ほら、鼻の頭拭きますよ! ブフッ! ブハハハ!」

「リュカも笑ってるじゃん! アハハハ!」


 リュカはさぁ、狼と言うよりワンちゃんだよな。可愛い奴だぜ。




 帰りもアスラールの馬に乗せてもらった。

 邸の門を入ると、アラウィンとアルコース、クーファルがいた。


「あ! にーさまー!! アラどのー!! ただいまー!! 」


 馬からおろしてもらって、クーファルに飛びつく。


「リリ、おかえり! 楽しかったかい?」


 俺を受け止めて、そのままクーファルに抱き上げられる。


「はい! 兄さま! すっごく楽しかったです! それに凄い収穫もありました!」

「収穫? リリ何かな?」

「はい、兄さま! とってもとっても美味しいものです!」


 アスラールの側近が袋を開けて見せてくれる。

 俺はクーファルに下ろしてもらう。


「殿下、もしかしてこれはあの棘の中身ですか?」

「そうです! アラ殿! 美味しいですよ!」

「どうやって剥いたのですか?」

「え? アラ殿。実演しましょうッ! オク!」

「え、殿下。私ですか?」


 なんで嫌そうなんだよ!

 オクソールが一番上手じゃんか。


「え? オク、なんで嫌なの?」


 意味分からん。


「……分かりました」


 オクが嫌々イガを剥いて見せてくれた。


「ほぉ〜、そうするのですか」

「はい! アラ殿。何か挟むものがあれば、安全ですね。」

「殿下、これはどうやって食べるのですか?」

「えっ? アラ殿、食べた事ないんですか?」

「はい。ありません。アスラールはあるか?」

「いえ、私もありません」


 マジかよ!? あんなにいっぱいあったじゃん!

 今まで本当に捨ててたのかよ!? 勿体ねー!


「アラ殿、アスラ殿。兄さまも、厨房へ行きましょうか! はい! みんなで行きましょう!」


 そう言って俺は、アラウィンの手を引っ張ってズンズン歩く。



「殿下! どうされました? お腹がすきましたか?」


 ちげーよ! シェフ、なんでだよ!


「シェフ、違うよ! 栗を焼くからフライパンを火にかけて」


 俺がそう言うと、シェフはテキパキ動く。

 周りの領地の料理人達は何だ? て顔して見てる。

 そりゃそうだ。貴族が、しかも皇族が厨房には入らないよな。


「殿下、これ位ので宜しいですか?」

「うん。充分。シェフ、栗に切り込みを入れてほしいの」

「これが栗ですか。切り込みを、どう?」


 あーして、こーしてと言って焼いてもらったよ。

 焼き栗だ! 懐かしい香ばしい匂いがしてきたぞ!


「シェフ、まだかなー」

「はい、殿下。もういいですね」


 シェフが焼けた栗を皿に移して、また新しいのをどんどん焼いていく。

 ふと俺は周りを見渡した。いないかな〜? 俺、チビだから見えねーよ。


「リュカ、ニルは?」

「はい、殿下。私はここに」


 ニル、いたよ。いつの間に!


「ニル、熱いの。ふーふーして剥いて」

「はい、殿下……あ、あつッ」

「ニル! 大丈夫? 熱いって言ったのに」

「はい、熱かったです」

「アラ殿、アスラ殿、にーさま、食べて!」

「リリ、この硬い皮を剥くのかい?」

「はい、そうです。熱いですよ!」


 厨房の人が濡らした布を配ってくれた。

 熱いし、手汚れるし。でも、美味しいよ。


「殿下、あーんして下さい」

「あーーん!……おいしぃー!!」

「リリ、そんなにかい?」

「はい! にーさまも食べて! 早く食べて! ほら、アラ殿も! アスラ殿も! 早く! オク! リュカ! 食べて!」


 俺は皿をオクソールとリュカに差し出す。

 ズズイッと差し出す。


「いただきます」

「ほら、リュカも! オクとリュカが、たくさん採ってくれたんだから!」

「殿下、いただきます」

「殿下、あーんして下さい」

「あーーん……美味しいー!」


 いや、俺食べさせてもらってるじゃん! ま、いいか!


「リリ、美味しいね。甘いんだね。

 初めて食べたよ」

「にーさま、美味しいでしょう?」


 あれ『兄さま』が『にーさま』になってるじゃん。

 興奮しちゃったぜ。


「殿下! 美味いですな!」

「ふふ、そうでしょう……あーーん。シェフもみんなも食べてねーー! 遠慮したらダメだよ! 食べて! みんな一緒に、美味しいを味わうんだからね! 食べて!」


 て、俺が一番食べてるよ!

 なんせ、自動で口の中に入ってくるからね。


「ニル、食べた?」

「はい、食べましたよ。甘くてホクホクしてますね」

「うん! 甘いね!」

「殿下、この栗は焼くだけですか?」

「シェフ、ううん。あのねー……」


 シェフに少し教えた。

 明日のオヤツに出てくるかな?


 松茸も食べたいぜ!


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