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68/442

68ー真っ赤

「殿下ー! 夕食のお時間ですよー!!」


 場の空気を、木っ端微塵に壊すシェフの声……マジでな。


「リリ、呼んでるよ。クククッ」

「兄さま、笑わないで下さい。ボクにはどうしようもありません」

「ハハハ。さ、行こうか。夕食だ」

「はい、兄さま。フィオン姉さま、行きましょう。アラ殿、夫人、行きましょう!」

「ええ、リリ」


 俺はクーファルとフィオンに挟まれて二人と手を繋いで歩く。

 アラウィンと辺境伯夫人、ソール、オクにリュカ、皆で邸に戻る。

 ルーがクーファルの肩にとまった。


「ルー様、素晴らしい話を有難うございます」

「うん、後はクーファルに任せるよ。公表するも良し、皇帝一家と辺境伯一家だけの話にするも良しだ」

「はい。有難うございます。私達の代では、フレイ兄上とアスラール殿が同級です。本人達曰く盟友だそうです。

 それで今回も、アスラール殿が辺境伯と同行して帝都に来られていたそうです」

「そうか、本当に縁て不思議だな。いつの代でも、皇帝一家と辺境伯一家は繋がっている。良い事だ。きっと初代二人も嬉しいだろうね」

「はい。本当に」


「私は学年は違いましたが、アルコース殿に良くして頂きましたわ」

「姉さま、そうなんですか?」

「ええ。私の方が一つ下なの。でも、生徒会でご一緒だったのよ」

「ああ、フィオン。そうだったね。卒業式を思い出したよ」

「お兄様、思い出さないで下さい!」

「アハハハ!」

「なんですか? 兄さま。教えて下さい」

「リリ、アルコース殿が答辞で、フィオンが送辞を読んだんだけどね、フィオンが泣き出してしまってね。アハハハ……」

「お兄様、止めて下さい!」

「フィオン、あれはあれで良かったよ? もらい泣きしている者がいた位だからね」

「でも、やめてください。恥ずかしいですわ」

「おー、青春だねー」

「もう、ルー様まで!」


 おいおい、フィオン真っ赤だぜ。

 もしかしてアルコースに会いたかったのか?

 いいねー。こんなフィオンは可愛いねー。


「シェフー! お待たせー!」

「殿下! ご用意できていますよ! 皆様もどうぞ!」


 シェフはブレないね。



「……ん〜……」

「おはようございます。殿下」

「ん……ニル。おはよう」


 さて、次の日の朝だ。

 今日から例の道具作りだ。


「殿下、クーファル殿下とフィオン様が、朝食をご一緒にと仰っています。食堂に参りましょう」

「うん。わかった」


 俺はモゾモゾとベッドを下りる。

 顔を洗って、ニルに手伝ってもらって着替えて部屋を出る。


「ニル、もしかして兄さま達をお待たせしてるのかな?」

「大丈夫です。ゆっくり来られる様にと仰ってました」

「そう? ならいいけど」


 食堂に入って行く。


「やあ、リリおはよう」

「リリ、おはよう。良く眠れたかしら?」

「兄さま、姉さま、おはようございます。お待たせしてしまいましたか?」

「大丈夫だよ」

「ええ。そんな事ないわ」

「殿下、おはようございます! 今日の朝食です!」

「シェフおはよう。ありがとう」

「いいえ! さあ、美味しいですよ! こちらは本当に食材が豊富で、料理人も知識が豊富で勉強になります! ミルクも卵もとても新鮮です!」

「そう。仲良くやってる?」

「はい! 勿論です! 色々教わっております!」


 あ〜んッと食べる。これは、クロックムッシュか? 美味いな。チーズが激ウマじゃねーか。ふむふむ。モグモグと食べる。


「……おいしい! ホワイトソースもチーズもすっごく美味しい!」

「ああ、美味しいな」

「フフ、リリはいつも本当に美味しそうに食べるわね」

「はい、姉さま。本当に美味しいですから!」

「あぁ〜、リリはなんて可愛いんでしょう!」

「姉さま、やめて下さい。ボクは男の子です。可愛いは嬉しくありません」

「まあ! じゃあ、沢山食べて大きくなってカッコいいと言われる様にならないとね」

「はい! 姉さま! 見てて下さい! 絶対に大きくカッコよくなります!」

「まあ、フフフ」


「フィオン様は、本当に弟君が可愛いのですね」

「まあ、アルコース殿。嫌ですわ、いつの間にいらしたのですか?」


 声に振り返ると、食堂にアルコースが入って来たところだった。

 おい、フィオン。また顔が赤いぞ。可愛いぞ。


「今来たところですよ。私もご一緒しても宜しいですか?」

「勿論ですわ、ねえお兄様」

「ああ。アルコース殿。鍛練は終わりかな?」

「はい。今日も兄に勝てませんでした」


 朝早くから鍛練してるのか!? タフだなー。

 俺は無理だよ。寝てるよ。


「アスラール殿もお強い」

「はい。しかし、オクソール殿にはかないません」


 まあ、オクは強いよね。

 うん。あいつは別格だ。

 俺は無言で食べるぜ。


「おや、今日の朝食は初めて見るものです」


 え? そうなの?

 シェフの定番クロックムッシュだよ。美味しいぞー。


「そうなのか? シェフの定番なので、良く食べられているものだと思っていたが」

「クーファル殿下、とても美味しいですね。シェフ、美味しいよ」

「有難うございます。リリアス殿下がお好きなので、よくお作りします」

「ああ、そうだ。リリアス殿下のシェフでしたね。本当に美味しいです。初めて食べました」

「実は私も、殿下に教わるまで知りませんでした」


 ん!? なんだって? 俺か?

 知らねーぞ? まあ、俺は無心で食べるけどな。


「……リリ」

「……? はい? 兄さま」

「これはリリが考えたのかい?」

「さあ? ボクは覚えてません。定番すぎて」

「そうだね。兄さまも定番すぎて考えもしなかったよ。シェフ、そうなのかい?」

「クーファル殿下、そうなのです」


 ん? 俺は知らねーぞ? と、顔を横に振る。お口に入っているのでほっぺがちょっと膨らんでいる。ウマウマだ。


「殿下は覚えておられない様ですが、パンにハムとチーズを挟んでホワイトソースをかけて。と、仰ったのです。

 あれはまだ3歳になっておられなかったかと。その時に作ったものを、クロックムッシュと言うんだと教えて頂きましたよ」


 マジ? 覚えてねー。

 待てよ、て事は。前世の記憶がハッキリ戻っていなかった時も、中身はやっぱ俺なのか?

 無意識に色々やってそうだ。


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