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62ー領地

 次の日、午前中はクーファルの馬に乗せてもらった。

 午後だと、どうしても眠くなる。5歳児だからね。お昼寝は大事。

 だから午前中、昼食までの間に馬に乗せてもらう。

 またその次の日は、アスラールだ。

 そして、その次の日。

 俺はアラウィン・サウエル辺境伯の馬に乗せてもらっていた。


「殿下、今日はもう直ぐ領地に入ります。ほら、そこに防御壁が見えるでしょう。あの内側が領地です」


 アラウィンに言われて前を見る。立派な防御壁がすぐ近くに見える。

 防御壁には外側に突出した側防塔が設置されていて、監視が出来る様になっているのだろう。

 塔の上には投石機らしきものがある。こんなに攻撃魔法があるのに、投石機てなんか違和感だ。それとも、石のかわりに違うものを飛ばすのかな?

 防御壁には大きな扉があって、馬車や馬はそこから。

 人はすぐ横の小さな扉から入るようになっているんだろう。この扉も石造りか?


「アラ殿、石造りですか?」

「いえ、少し違います。白っぽいでしょう?」


 アラに言われてよく見ると……確かに少し白っぽい。まるでセメントみたいだ。


「もしかして……混ぜてますか?」

「殿下! よくお分かりに! そうです。領地で採れる粘土質の土に、石灰石や珪石等を細かく粉砕した物と、あとは魔物が嫌う樹の樹液ですね。それらを混ぜた物を使ってあります。

 中には何本も鉄製の芯が通っているので頑丈です」


 マジか……それってまるで鉄筋コンクリートじゃねーか! 発明した奴スゲーな!


「初代皇帝の考案ですよ」


 また初代だ。初代スゲーな。超頭良いじゃないか!


「凄い……とても頑丈ですね」

「はい、多少の魔物では壊せません」


 そんな話を聞いているうちに、隊列の先頭が止まった。


「領地に入ってから、領都まで少しありますので、昼前位に邸に到着ですね。殿下は馬車に戻られますか?」

「どうしてですか? ボクが、アラ殿の馬に乗っているとダメですか?」

「いえ、私は全然そんな事はありませんよ。殿下が宜しければ、このまま邸までお乗せしましょう」

「はい! じゃあおねがいします!」


 馬の方が周りが良く見えるんだよ。

 見てみたいんだ。この世界の色んな物を見てみたい。


「動き出しましたね。ここら辺はノール河に近い地域になります。領民の住居より畑が中心です。さ、入りますよ」


 馬が防御壁の大きな扉のある入り口をくぐった。

 アラウィンの言った通り畑が広がっている。


「アラ殿、所々に立っているあの柱の様な物は何ですか?」


 畑が広がる先の海の方と、ノール河寄り、そして防御壁に沿って等間隔位に5メートル程の電柱の様な柱が立っている。それも防御壁と同じ様に少し白っぽい。


「あれは先程の防御壁と同じ材料に、魔物の嫌う樹の樹皮と樹液、両方を混ぜて作った魔物避けです。防御壁よりも、かなり魔物避けの効果が高くなります。

 馬車につけておくと魔物は寄ってきません。船の底につけておくと、海の魔物が寄ってこないので安全に漁ができますし、航海も可能です」

「もしかして、それも初代皇帝ですか?」

「そうです。初代は凄いでしょう?殿下のご祖先です」


 はぁ、そう言われても全然知らないからな。他人と同じだわ。顔も知らねーし。


「農水路もあるのですね」

「ええ。ノール河の小さな支流があります。そこから引いています。

 ノール河沿いの森では、腐葉土や腐植土があります。それを利用して、色々混ぜた物を作り畑に利用してます」

「豊かな土地なんだ」


 遠くに陽が当たってキラキラ光る海が見える。

 微かに潮の匂いがする。港があり、船が並んでいる。手前の方に建物が並んでいるのは、塩でも作っているのか?


「塩……?」

「殿下! 本当に殿下は素晴らしい! そうです。手前の建物で海水から塩を作っています。それと魚を干しています」


 干物だと!? 日本じゃねーか! 異世界侮るなかれ!


「うわ! 食べてみたい!」

「殿下は、干した魚を食べた事はありませんか?」

「はい、お魚自体が少ないです」

「そうですか、ではこちらに滞在されている間にお出ししましょう。私は釣りもしますので、張り切って釣ってきましょう!」

「釣り! ボクもやってみたいです!」

「ハッハッハ! では殿下、ご一緒しましょう!」

「やった! 絶対ですよ! 約束ですよ!」

「はい、殿下」


「帝都より暖かい。風が違いますね。海の潮の匂いがします。気持ちいい!」

「そうですか? 殿下、もうすぐ領都ですよ」


 もうそんなに来たのか。アラウィンの話を聞いていると楽しい。

 前方にチラホラと住居らしき建物が見えてきた。


 白っぽい壁に赤茶色の屋根。街の中は、道も白っぽく舗装されている。

 白っぽいのは、きっとさっきの魔物避けと同じ様な材料で出来ているのだろう。

 馬車が余裕ですれ違える程の広い道が奥に続いている。

 領主邸まで続いている様だ。


「お屋根も壁もみんな同じ色なんですね」

「はい、どうしてかお分かりになりますか?」

「えっと……海ですか? 潮風が?」

「そうです。潮風が建物の劣化を早くします。それで、森の中に葉や茎から粘りのある液体が採れる大きな植物があります。その液体を塗ると防げるので、屋根には塗ってあります。

 壁はその液体と、魔物避けを混ぜた材料で作っています。その為、みな同じ色です」

「そっか……森には魔物もいるけど、利用できるものも沢山あるんだ。だから、危険だけど恩恵もある」

「そうです。覚えておられましたか」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] これ以上正義感を出すと 人間身がなくなるので 読まなくなるでしょう 読んでるのが人間なので [一言] ストーリーは楽しいです
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