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6ーレピオス

「リリアス殿下、驚きました」


 ニルはまだ信じられない様な顔をしている。


「そうなの?」

「はい、この帝国が光の神に守られているとは言え、光の精霊様を見るのは初めてです」

「ふーん、そうなんだ」


 ――コンコン


「宜しいですか?」

「はい、宜しくお願いします」

「ニリュ、だぁれ?」

「殿下、覚えておられませんか? 私は殿下を診察致しました、皇宮医師のレピオスと申します」


 おっ、俺の前世の歳と近くないか?

 嬉しいね〜、こんな人物がいるんだね。


 レピオス・コローニ

 グレーの落ち着いた色味の髪に藍色の瞳。

 ストレートの長髪を後ろで一つに編んでいる。

 皇子担当の皇宮医師だ。

 いやぁー、この落ち着いた色味に年齢。落ち着くよね〜。親近感が湧くよ。


「りぇ、りえぴ……」

「殿下、レピオス様です」


 だからなんで、ら行が多いんだ?


「りぇぴおしゅ」


 ほら、噛んじゃったじゃねーか。


「はい、殿下。だいぶ顔色も良くなられましたね。良かったです」

「うん、ありがと」

「しかし、かなり高い熱が出ておりましたので、念の為もう暫く安静になさって下さい。さて、診させて頂きましょう」


 そう言ってレピオスは俺に近づき両手の平を向けた。

 お、なんだ? フワンフワンするぞ。


「はい、大丈夫ですね。もう熱もありませんね。食事は取れていますか?」


 おいおい、今ので分かるのかよ。


「うん、食べた。リェピオス今のはなに?」

「今のと申しますと?」

「殿下、魔法ですよ。レピオス様は治癒魔法を使えるのです」

「ああ、そうですね。魔法です。殿下に使うのは初めてではありませんよ。今のはスキャンですがね」


 スキャンてあれか! あのスキャンか。

 まんまだな。魔法てスゲーな。


「覚えてない」

「まだお小さいですからね。無理もありません」

「ねえ、リェピオス、ボクにも使える様になりゅ?」

「殿下は、魔法に興味をお持ちですか?」

「うん! 覚えたいの!」

「それはそれは。殿下は光属性をお持ちですから、お出来になると思いますよ」

「ほんと? 誰に教えてもりゃえばいいの?」

「そうですね……基本ならオクソール殿でもお教えできるかと」


 オクソール、凄いじゃないか! あいつ何でもできるんだな!


「元々獣人は人間より魔力量が多いのです。しかもオクソール殿は使い方にも長けておられます」

「オク、すごいね!」

「そうでございますよ、オクソール殿は凄いのですよ」

「そうなんだ」

「では薬湯をご用意致しますので、後程お持ち致します」

「リェピオス、ボクはいや」


 イヤイヤと首を横に振る。


「おや、薬湯はお嫌いですかな?」

「うん、苦いからきりゃい」

「ハハハ、そうですな。苦いですね」

「はちみつとか入りぇたらまだマシかも」

「蜂蜜ですか。では、特別に入れて差し上げましょう」

「ありがとう! リェピオス元気になったりゃ色々おしえてね」

「なんと、殿下は学びたいと思われますか」

「うん。知りたい事がたくさんありゅ」

「素晴らしい事です。私で宜しければ、喜んでお教え致しましょう」


 そう言ってレピオスは部屋を出て行った。

 いいね〜。こんな人物もいるんだね。是非、色々教わりたいもんだね。


「ニリュ、ご本は?」

「はい、お持ちしましたよ。今、ご覧になりますか?」

「うん、みりゅ」


 …………て、そうじゃねーか。

 何故気付かなかった。

 まだ3才だぜ。字が読める訳ないじゃないか。


「ニリュ、字を教えて」

「まあ、殿下!」


 なんで涙ぐむんだ? 俺ってそんなに勉強嫌いだったのか?

 そうしてニルに文字を教わっているうちに、短文はだいたい分かる様になってきた。

 英語みたいなもんだな。前世で英検とっといて良かったわ。まさか、この歳でまた勉強するなんてな。しかし、若い頭はいいね。どんどん吸収するぜ。

 55歳のカチンコチンの頭とは違うね。脳細胞がピチピチだぜ。


「殿下、お分かりですか?」

「うん、だいじょぶ」

「殿下は、覚えるのがお早いですね」

「そお? ニリュ、1番やさしいご本をちょうだい」


 ――コンコン


「リリ、元気になった?」


 お、美形兄弟来たな。


「テューにーさま、フォリュにーさま。どうぞ入ってください」

「失礼致します。薬湯をお持ちしました」

「あ、リェピオスもうお薬?」

「あれ苦いやつだ」


 テュールの顔が嫌そうに歪んでるぞ。


「おや、テュール殿下もお嫌いですか?」

「好きな子なんていないよー」


 フォルセも嫌そうな顔をしている。


「フォルセ殿下もですか。これは改良しなければなりませんな」

「リェピオス、はちみつ入りぇてくりぇた?」

「はい。お入れしましたよ」

「じゃあ、飲む」

「殿下、どうぞ」


 ニルから貰って両手で器を持って飲む。


「んー、まだにがいけど。のめりゅ」

「殿下、お利口さんですね」


 フンスッ! ニルに褒められて、ドヤってしまうな。

 前世の息子より若い子に褒められたよ。


「なんで? リリ平気?」


 フォルセがそう言いながら、ベッドの近くに来て首をかしげている。


「リリ、苦くないのか?」

「テューにーさま、フォリュにーさま。にがいですよ。でも、はちみついりぇるとまだだいじょぶ」

「リリのお薬には、蜂蜜が入ってるの!?」

「レピオス、そうなのか?」

「はい、テュール殿下。苦いから嫌だと仰るので」

「ズルイよ。僕の時は入れてくれなかった」

「ホッホッホ、では今度フォルセ殿下に薬湯をお持ちする時には、お入れしましょう」

「やだ、元気ならお薬を飲まなくても良いでしょう?」

「そうですね、健康が1番です」


 そう言ってレピオスは部屋を出て行った。2回目。同じ事言ったな俺。歳だな。


「リリは本を読んでたのか?」


 俺が持っていた本に気付き、テュールが聞いてきた。


「はい、テューにーさま。さっきニリュに字を教えてもりゃいました」

「リリは、字を教えてもらったばかりで読めるのか?」

「? はい、読めます」

「リリは凄いね。僕はお勉強は苦手なんだ」

「フォリュにーさまは、何が得意ですか?」

「僕は絵だね。あとバイオリンも好き」


 ほぅ、芸術家タイプだな。


「テューにーさまは?」

「俺は剣の鍛練をしてる方がいいな」


 ほぅ、こっちは肉体派か?


「来年、15歳になったら学園に入るから学科を選ばないといけない。俺は騎士学科を選択するつもりだ」


 そんなのあるのか?


「僕は芸術学科だね」


 そうか、前世だったらまだ義務教育の歳か。

 もう自分で選択するのか。こいつら偉いな。俺なんて大学選ぶ時でも決められなくてウダウダしていたぜ。


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