表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/442

59ー護衛になった理由

「ふんふふん、ふ〜ふふん♪」

「リリ殿下、ご機嫌ですね?」

「うん! もう馬車は退屈だったんだ〜!」


 そう、俺はオクソールの馬に乗せてもらっている。しかも片手に、昼休憩の時に拾ったちょっとカッコいい小枝を持っている! 俺は超ご機嫌だ。

 オクソールが、後ろからしっかり支えてくれている。

 さっきはフィオンのフラグが立ちそうだったが、なんとか回避できたし。

 外の空気はいいね〜!


「ねえ、オク」

「はい、何でしょう?」

「ここらへんも魔物が出るの?」

「出たとしても、スライムや角兎位です。低ランクの冒険者でも楽勝でしょう。民間人でも倒せる程度ですよ。

 あー、ほら。またシェフが走って行きます」


 オクが指差す方を見ると、もうシェフが角兎を狩った後だった。

 スライムかぁ、見てみたい! 冒険者もいるのかー。


「ひょ〜! シェフ強いなー!」

「ハハハ、どれだけ狩るつもりなんでしょうね」

「シェフもマジックバッグ持ってるからね」

「らしいですね。あれも殿下が?」

「うん。欲しいと言ってきたから1個あげたの」

「あー、それは狩りをする前提ですね。まあ、でも調理道具は嵩張りますからね」

「うん。そうだね〜。シェフー! 獲物見せてー!」


 と、大声で叫びながら手に持った枝を振ると、シェフは角兎を掲げた。


「「おーー!」」

 手を上げてパチパチと拍手する。


「オク、楽しいねー!」

「それは良かったです」


 そうだ、良い機会だから聞いてみよう。


「オクはさ、なんで護衛に付いてくれる事になったの?」

「そうですね……お話しても大丈夫でしょうか?」


 なんだ? 話したら駄目なのか?


「なに? 聞きたい」

「殿下が3歳の時の事件の際に、少しだけ触れたのですが」

「ああ、ボクが小さい頃から狙われてた、て話?」

「はい。リリアス殿下が、まだ2歳になられて直ぐの頃です。陛下とお母上のエイル様と一緒に、教会へお出掛けされた時に襲撃されたのです」

「ボクを狙って?」

「はい。その時に護衛していた者の一人が手引きした襲撃でした」

「そんなのばっかだね〜」

「ええ。馬鹿な奴はどこにでもいますからね。敵味方入り乱れて交戦している時に、そいつは自分が手引きした相手にやられました。口封じですね。

 私もその時に護衛についておりました。リリアス殿下はまだ2歳です。普通は泣き叫んでもおかしくない。なのに、殿下は……」

「なに? ボク寝てたとか?」

「いえ、そこまでは」


 なんだよ、そこまでって。


「いえ、そうではなく。エイル様の前に出て、両手を広げて守ろうとされたのです」

「えー、ボク全然覚えてないよ」

「まあ、2歳ですから。勿論、直ぐにエイル様に抱き寄せられたのですが。私はそれを見て、直ぐにお二人の前に立ち塞がりました。

 襲撃してきた者達を、全て捕らえて騒ぎがおさまった時に、殿下は言われたのです。私に向かって、ニコッと笑って、ありがとう。と。

 その後すぐに、殿下の専属護衛のお話を頂きました。私は迷わずお受けしました。断る事など全く考えませんでした。私はこの小さな皇子殿下を、お守りしようと思ったのです」


 なんだよ、俺そんな事する幼児だったのかよ。全然覚えてないぞ。

 前世を思い出す前だしな。もしかしたら中身は俺じゃないのかも。

 そんな事もないか、思い出してないだけで、やっぱ俺か。


「そっか。オクありがとう」

「殿下?」

「ボクは覚えてないけど、何度もオクに命を助けてもらったんだね」

「殿下……殿下のせいではありません」

「ああ、分かってるよ。大丈夫。そんな馬鹿な事をする奴が悪いんだ、て今はちゃんと分かっているよ。ボクも少しだけ大人になったんだ」

「大人にですか?」

「そう。5歳だからね!」

「ハッハッハ、そうですね。ら行も言える様になりましたしね」

「あー、オク本当ひどいよ?」

「ハッハッハ! しかし、あれはとてもお可愛らしかったのですが」

「やめて」

「殿下は、まだまだ大きくなられませんと。元気で大きく」

「うん! クーファル兄さまに言われたしね。ボク達にはみんなの笑顔を守る責任がある、て。

 ボクはちゃんと元気に大きくなって、みんなの笑顔を守りたいと思うよ」

「殿下……あの大樹の元でのお話、覚えておられるのですね」

「うん。覚えてる。ちゃんと、覚えている。ボクも強くならなきゃ」

「殿下。お一人で全て抱えられる事はありません。ご兄弟がおられます。私達もおります。頼って下さって良いのです。その為に私達はいるのです。遠慮なく頼って下さい」

「オク、ありがとう! ボク、城から出るのは少し怖かったけど、来てよかった。みんなと一緒に食べて、笑って、楽しいよ! アラ殿とアスラ殿も大好きだ!」

「それは良かったです。アスラール殿の弟君も気持ちの良い方です。きっと直ぐに仲良くなれますよ」

「うん! 3人で討伐に出るって約束したんだ! ボクが大きくなってからだけどね」

「お3人でですか? それは私も仲間に入れて下さい」

「うん! オクも一緒に行こう! リュカも連れて行こう! あ、シェフもだ!」

「シェフもですか! ハッハッハ! では、ニル殿もお連れしないと拗ねますね」

「えー、でもニルは女の子だよ?」

「大丈夫ですよ。ニル殿もお強いですから」


 やっぱり強いんだ。ん? 拗ねると言えば……

 ルー全然出てこないな。まだ拗ねてるのか?


 そして俺は、次の休憩から馬車に戻りお昼寝タイムだ。まだ5歳児だからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ