表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/442

49ー人たらし?

「お待たせ致しました!」


 リュカが剣を抱えて戻ってきた。


「どうぞ!」

「有難う。君はオクソール殿に鍛えてもらっているのか?」


 アスラールがリュカに聞いた。


「はい! リリアス殿下をお守りする為に強くなりたいのです!」

「リリアス殿下を? オクソール殿に憧れてではなく?」

「はい? 私はリリアス殿下をおそばでお守りする為に、オクソール様に弟子入りしましたが? 何か?」


 アスラールが不思議そうな顔をしているな。

 そうだよな。オクソールは騎士達の憧れだしな。


「……父上、お聞きになりましたか!?」

「ああ、アスラール。殿下のお人柄が伺えると言うものだ」


 何で俺? 俺もオクソールやリュカも頭の上に『???』が浮かんでしまったよ。


「リュカと言ったか? しっかりリリアス殿下をお守りするのだぞ」

「はい! 辺境伯様! 勿論です! 殿下をお守りして、自分も無事でいられる様に鍛練致します!」

「ハハハ! 自分もか!? 」

「はい! 殿下のお側にと願い出た時に言われました。殿下は、ご自分の為に誰かが傷付くと悲しまれご自分を責められると。ですので、殿下はもちろん自分も無事でないといけないと言われました。だから、強くなります! 鍛練します!」

「リュカ、恥ずかしいからあんまり言わないでよ」

「殿下、何故ですか?」

「……ハハハ! これはまた!」

「サウエル辺境伯様、殿下はそういうお方なのです」

「オクソール殿、貴方は騎士達の憧れでもあり目標でもあります。ですので、私達はてっきり彼はオクソール殿に憧れて弟子入りしたのだと思いました。それがオクソール殿ではなく、殿下のお側にいる為とは。勿論、それは素晴らしい事ですが」

「辺境伯様、私はリリアス殿下をお守りするお役目を頂けた事は、身に余る光栄だと思っております。リリアス殿下付きの者は、皆同じ様に思っております」

「左様ですか。素晴らしい。そう思える方にお仕えできるのは幸せですな」

「はい」

「そう思われる殿下も素晴らしい」

「サウエル辺境伯。ボクはとても恵まれているのです」

「恵まれてですか?」

「はい。ボクみたいな子供に、オクやリュカだけでなく他の者達もとても心を掛けてくれますから。ありがたいです。今迄、何度も助けられました」

「リュカと言ったか」

「はい! リュカ・アネイラと申します。私もご領地までご一緒致します。宜しくお願いします!」

「此方こそ、宜しく頼む」


 この後、アスラールから剣に付与する事や、身体強化等色々教えてもらった。

 常に魔物を討伐しているだけあって、騎士団とはまた違った戦い方を知っている。魔物に対しては当然なんだろう。騎士団は対人。アスラールは対魔物なんだ。

 俺はまだ魔物と遭遇した事がない。腰引けそうだよ。ちょっと怖いかもよ。マジで。

 アスラールに一通り教わって、リュカにスポドリ擬きをもらって皆で飲んでいる時に、サウエル辺境伯が言い出した。


「大切な事を忘れるところでした。殿下にお礼を申し上げたくてお探ししていたのです」


 俺? 何かしたっけ? 覚えがないぞ?


「殿下が、考案なさった道具一式を陛下に見せて頂きました。有難うございます。どれも、特別な材料を使われている訳ではないのに、とても有用な物だと拝見致しました。是非、領地へ来られた際に、我が家の薬師に伝授頂ければと」


 そんな大したもんじゃねーよ。頼むぜ、畏まらないでくれ。


「やめてください! 辺境伯! 伝授なんて、そんな大した物じゃないです! どうか堅苦しいのはやめてください」

「なるほど、陛下の仰る通りですな」

「父さまですか?」

「ええ。殿下に是非お礼をと申しましたら陛下が、『嫌がると思うよ』と仰いまして」

「父さまの言う通りです。辺境伯には暫くお世話になりますし、どうかあまり畏まらないでください」

「ハハハ! アスラール聞いたか!? この皇族の方々は皆同じ様な事を仰る。以前、フレイ殿下とクーファル殿下もご一緒した時に同じ様な事を仰いました。人によって意見はあるでしょうが、私は好きですぞ。リリアス殿下。是非、私の事は名前でお呼び下さい。陛下とは学園時代からのお付き合いでアラとお呼びになります。殿下も是非アラとお呼び下さい」

「ありがとうございます。ボクはリリです。アラ殿」

「殿下、私はアスラと」

「はい、アスラ殿」


「ブフ……」


 リュカ、お前笑うとこじゃないだろ?


「だって殿下、俺にも『ボクはリリ』て言ってたじゃないですか」


 あーそんな事もあったか。よく覚えてるな。


「リュカ、ボクはリリなんだから普通だよ」


 まだ短い人差し指を立てて、リュカに言ってやった。


「普通ですか!? ハッハッハッハッ!」


 なんでそんなに笑う? この辺境伯も笑上戸か?


「クククク…… 」


 アスラールは笑いを堪えてるよ。なんだよ、みんなでさ。普通の事だろ?


「殿下、どうやら父は殿下の事をかなり気に入った様です」

「アスラ殿、そうなのですか? どこらへんが? よく分からないですが……よかったです?」

「クハハハハ……!」


 あぁ……アスラまで笑い出したよ。


「「………… 」」


 オクソール、リュカ、その目はやめて。

 またかよ……みたいな目でみるのはやめて。


「殿下、流石ッスね!」


 リュカ、ウィンクしながらサムズアップするのはやめようぜ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ