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48ー鍛練

「せいっ! やぁッ!」


 俺は騎士団の鍛練場にいる。オクソールのシゴキの真っ最中さ! 最近は木の模造剣も使っている。子供用だけど。普通の剣より軽くて短いんだ。

 みんな忘れてるかも知れないが、俺はまだ5歳だからね。前世だとまだ保育園児だぜ。


「殿下、脇が甘いです。左が空いてます!」


 オクソールが、指摘しながら左に斬り込んでくるのを、剣で受け止める。


 ――ガコッ!


「クッ……! んーー……せいっ! とぉ!」


 思い切り振り払い、そのままオクソールに斬り込んで行く。


 ――ガンッ!


「フッ!」


 オクソールに、吹き出しながら軽く止められる。ムカつくぜ!


 今度は、足元を狙って滑り込み、もう一度思い切り斬り込む。


「せいっ!」


 ――カンッ!


 オクソールに振り払われ、木剣を落とした。


「……ハァ……クソ……ハァハァ……」


 俺は肩で息してるのに、オクソールは全然余裕だ。汗もかいていない。


「クフッ……殿下。またその変な掛け声ですか?」

「オク。吹き出しながら、止めるのやめてよね……ハァハァ」

「クハハッ……! しかし、殿下、変ですよ」

「分かってないなー!だからロマンだって言ったじゃん!」

「ロマン……りょまんでしたか? フッ!」

「うわ、オクひどい!」


 禁句だぜ? 俺の黒歴史だよ? プハハッ! オクソール、よく覚えていたな!


「アハハハ!」

「リュカも笑わないで!」


 少し離れて見ていたリュカが爆笑している。ビシッと木剣で指してやったぜ。


「殿下、おかしいです! アハハ……!」

「もう! 二人共まじめにやって!」

「「いや、それは殿下です!」」

「ボクは大まじめ!」


 そうさ! 分かんねーかな? 大真面目だよ。俺は腰に手を当てて胸を張る。


「ええー!」

「リュカなんだよ」

「笑いを取りにいってるのかと思いました!」

「なんでだよ!」

「ところで殿下、ルー様に付与魔法は教わりませんでしたか?」

「オク……教わったような気がする」

「身体に身体強化を付与する方法もあります」


 身体にか? 強化すんのか?


「オク、どうすんの?」

「ブーストで強化です。プロテクトだと防御力アップです。あとシールドも有効です。自分より、力の強い者と戦う時等に付与します。魔物相手だと、何が起こるか分かりませんので、有効です」

「そうなの?」

「はい。殿下は魔力量が多いので、味方の兵に付与したりする事も可能でしょう。魔術師団にも使える者がいます」


 そんな使い方もあるのか。魔術師団か、全然知らねーな。


「その通りです。魔物相手だと、どの属性が弱点なのかを把握しておく事も大切です」


 なんだ? 知らない声がした方を見る。


「サウエル辺境伯」

「殿下、失礼致しました。拝見しておりました」

「声をかけてくだされば良かったのに」

「いえ、お邪魔はしたくありませんでしたので」

「ご無沙汰しております」

「オクソール殿、此方こそ。お久しぶりですな」


 知り合いか? まあ、オクソールが俺の護衛になったのは俺が3歳になる前らしいから。其れ迄は騎士団だよな?


「以前、騎士団と合同で魔物討伐へ出た際お世話になりました」

「そうなの?」

「いや、しかし。殿下は5歳とは思えない身のこなしですな。拝見して驚きました。ああ、紹介致します。長男のアスラール・サウエルに御座います。此度は同行致します。お見知り置きを」

「アスラール・サウエルです。リリアス殿下、お初にお目に掛かります」


 サウエル辺境伯嫡男 アスラール・サウエル。父親譲りのブルーシルバーの髪を後ろで一つに結んでいる。涼しげな目元で瞳は瑠璃色だ。

 父親の様な屈強な感じではないが、服の上からでも鍛えているのが分かる。引き締まった身体とでも言うのか。細マッチョか。羨ましいぜ。前世の俺、腹なんてぷよぷよさ。


「初めまして、リリアスです。此度はよろしくおねがいします」

「リリアス殿下。態々領地までお越し頂く事、忝く存じます」

「いいえ、アスラール殿。此方こそ、姉さままでお世話になる事になってしまって、ご迷惑をおかけします」

「本当に殿下は聞きしに勝る」


 なんだ? 俺の噂とかあるのか?


「とても5歳には、思えないと言う事です」


 えー、どこがだ?


「ボクは普通の5歳児ですよ?」


 コテンと首を傾ける。


「「クフッ…… 」」


 あー、またオクソールとリュカが吹き出してる。この師弟コンビは。お笑いでもやってみる?


「最後の足元に滑り込むのは、身体がお小さい殿下には良い攻撃方法ですね」

「辺境伯、ありがとうございます。でも軽く振り払われました」

「まあ、まだまだ鍛練が必要ですが。5歳で此処まで出来るなら素晴らしいですよ」

「オクソールは容赦ないですから」

「ハハハ、そうですか。オクソール殿が。殿下、先程の魔法付与ですが、武器に付与するのも有効です」

「辺境伯、武器に付与するのですか?」

「ええ、アスラールは風と氷魔法が使えるのですが、剣に付与します」


 えー、スゲーじゃん! ファンタジーだな!


「はい、魔物の属性によりますが、風属性や氷属性を剣に付与したりします。火属性の魔物には有効なんです」

「アスラール殿、すごいです!」

「ハハ、有難うございます。でも剣ではオクソール殿に敵いません」

「いや、アスラール殿も充分お強い」


 オクが強いと言うアスラールか、マジで強いんだろな。見たいなー。


「見てみたいです! どうやって剣に付与するのですか?」

「やってご覧にいれましょうか?」

「本当ですか!? 是非! オク、お相手して!」

「殿下…… そんないきなり」

「えー、オク見たいよー!」

「ハハハ、そう言う所はお可愛らしい」

「殿下、剣に付与する所をお見せしましょう」

「アスラール殿、本当ですか!?」

「はい、殿下。何か剣をお貸し願えますか?」

「はい! リュカ、剣をおねがい!」

「はい、殿下。」


 リュカが剣を取りに走って行った。


「殿下、彼は?」

「ボクの従者で、リュカと言います。オクソールの弟子です」

「殿下、弟子と言う訳では……」

「え? なんで? オクが、一から鍛えて指導してるんだから、弟子でしょう?」

「オクソール殿にですか? それは羨ましい」


 えー、俺は絶対に嫌だね。オクソールは容赦ないからね。軽く死ぬよ?


「お待たせしました!」


 リュカが剣を持ってきた。


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