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47ー道具

「殿下、お待たせしました。今から来られる様にと仰ってます」


 リュカが戻ってきた。


「リュカ、ありがとう。オク、レピオスいこう」

「私もですか?」

「オク、現場の意見は大事だよ」

「分かりました」


 皆で父の執務室に向かう。城の中は広い。歩数計があったらいいのになー。


「失礼致します。リリアス殿下、オクソール様、レピオス様をお連れしました」

「入って頂きなさい」


 これは父の側近セティの声だ。


「父さま失礼します」


 俺が入ると続いてオクソールとレピオスが入り、オクソールとリュカは俺の後ろに控える。中には父とセティがいた。


「リリ、ポーションの納品は終わったのかな?」

「はい、父さま。ポーションと一緒に毒消しと、この道具を配りました」 


 俺は、レピオスに目配せして、道具を父とセティの前に出してもらう。


「陛下、私からご説明致します」


 レピオスが、騎士団に説明したのと同じ事を説明した。


「これは、リリが考えたのかい?」

「はい、父さま。被害を増やしたくないので。防げるものは防ぎたいのです」

「成る程…… 陛下これは有用ですね」

「ああ。セティもそう思うか?」

「はい」

「父さま、騎士団の装備に手袋を加えられませんか? 今は個人で用意しているそうなのです」

「オクソール、そうなのか?」

「はい、陛下」

「陛下、それは早急に用意しませんと」

「セティ、頼む」

「はい、陛下」

「陛下、他の道具も随時必要な時に、作成依頼を出来る様にして頂きたく」

「オクソール、そうか。なら、手袋とこの鼻から首まで覆うものは、騎士団の装備として用意しよう。あとは、ポーション等と同じ扱いで必要な時に発注すると言う事でどうだ?」

「はい、充分です。有難うございます」


「レピオス、この虫除けの軟膏はいいな」

「陛下、そうなのです。その軟膏と害虫を駆除する霧吹きは、騎士団だけでなく他の部署でも欲しがる者がいると思います」


 ま、畑仕事や庭師にもあると良いかもな。


「リリ、軟膏と駆除する液体は特別な物が必要なのかい?」

「いいえ。どちらもかんたんに手に入る材料です。城の薬草園にも沢山あります。それに人にも植物にも無害です」

「では殿下、詳細を公表しても構いませんか?」

「うん、セティ。いいよ。じゃあ、書き出しておくよ」

「殿下、お願いします」


 うん、そうしたら皆が自由に使えるしな。いい考えだな。


「リリ、同じ道具を辺境伯にも用意させたいんだ」

「はい、父さま。ボクが用意しますか? むこうで作り方を説明しますか?」

「余分にはあるのかな?」

「はい、あります」

「じゃあ、見本として幾つか辺境伯に渡そう。で、向こうで作り方も教えてあげてほしい」

「はい、わかりました」

「リリそれとね、フィオンなんだけど」


 あー、忘れてた。1番厄介なやつだ。いや、フィオンが嫌いな訳じゃないんだぜ。好きだよ、姉だしな。俺の事を可愛がってくれる姉だよ。ただ、少しなぁ……


「リリ、フィオンにマジックバッグを作ってあげたのかな?」

「いえ、父さま。ニルが姉さまにと、使わないボストンのマジックバッグを持っていったのだと思います。ドレスが嵩張るからとか話してました」

「そう…… それがね、フィオンが大喜びして張り切ってしまっててね」


 あー…… しまったな……


「そう言う事なんだ。リリ、頼んだよ」

「………… 」

「リリ?」

「父さま、逆です」

「逆?」

「はい。5歳のボクに19歳の姉さまを、頼まないでください」

「そうだね、逆だね。でもリリ、分かるよね? リリじゃないと制御できないだろう?」

「……努力します…… 」

「リリは良い子だ」

「父さま、無理な時は無理ですよ?」

「ああ、それでいい。後はフィオンの侍女に頑張ってもらうよ」


「では、陛下。出立はどうされますか?」

「ああ、セティ。アラの出立に合わせたいね。調整してくれるかな?」

「畏まりました。リリアス殿下、決まりましたらお知らせ致します」

「うん、セティ。おねがい」

「リリ、もしも何かあったら、直ぐにルー様にお願いするんだよ。父様に知らせてほしい」

「はい、父さま」


 その肝心のルーは、いつもいないけどな。


 さて、出立が4日後に決まった。

 其れ迄に、道具一式を余分に出来るだけ作っておきたい。

 だが俺は今、母に呼ばれて城の一室にいる。


「リリ、2パターン作っておいたのよ。でもね、迷っているの。こちらの紺色のも素敵なんだけど、お兄様達の時は白だったそうなの。だからね、リリもこっちの白が良いと母様は思うのよ。それでね…… 」


 5歳のお披露目パーティーに着る衣装なんだそうだ。なんでもいいぜ。母の好きな方にしてくれ。

 別邸にいた頃はそうでもなかったが、城にいるとやはり皇子様ルックだ。服がモロ皇子様仕様だ。フリフリだったり、ピカピカだったり。

 普段着ている物はまだ飾りは少ないが、それでも生地が上質なのは見れば分かる。着ればもっと分かる。肌触りが違うんだよ。

 結局、母が選んだ俺の衣装は白の上下だ。上着は白地に淡いグリーンの金糸で刺繍が全面にあったり、飾りが付いていたり。中に着るシャツも、襟や袖がフリフリだ。しかも前で結ぶフンワリした大きなおリボン付きだ。

 腰にはベルトに重ねてキラキラチェーンのお飾りだ。刺繍や飾りは俺の髪色を取り入れてあるらしい。

 パンツが膝丈なんだよ。お子様だからかな? まあ、普段も膝丈なんだが。まだ、太腿がバッチリ出る短パンじゃないから救われるよ。だって、中身はおっさんだからな。で、白のロングブーツだ。これまたブーツなのに革に刺繍がしてあって飾りがつけてある。

 俺は、一式全部試着して母の前に出る。 


「まあ! リリ! とっても似合っているわ! なんて可愛いんでしょう!」

「母さま、そうですか? ありがとうございます」

「殿下、本当にお似合いです」

「ニル、ありがとう」

「リリ、良いかしら。あなたを狙ってくるのはご令嬢だけではないのよ。貴方の側近に、従者に、お友達にとご子息達も狙ってくるわ。呉々も気をつけるのよ。笑って躱しなさい」

「はい。母さま」


 マジか、そんなになのか?


「お披露目パーティーには、陛下と私も出ますからね。もしも何かあれば直ぐに気が付くわ」

「はい。母さま」


 頼むぜ。マジでさ。頼りにしてるからな、父よ、母よ。


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